その「散らかった部屋」は、美術館かもしれない。
「地」を育む5つの要素その4 ~文化伝統~
ぷはーーっ!
いやあ、鍋がおいしい季節になりましたね。
今日は、大根と厚揚げをコトコト煮込んだおでんをアテに、熱燗(あつかん)をちびり。
出汁の染みた大根をハフハフしながら、冷たい酒でキュッと締めるのも粋ですが、やっぱり冬は温かいお酒が五臓六腑に……(ゴクリ)。
はい、はい、呆録酔語です!
前回は、「働かざる者食うべからず」という「倫理的気風(地)」が、支援を拒否するおじいちゃんの正体かもしれない、という話をしました。
「善悪」の基準は、その土地の空気にも染み込んでいるんでしたよね。
さて、今日は予告通り、「地」を育む5つの要素、その第4弾。
「文化伝統」について、おでんの湯気の向こう側から語りたいと思います。
これ、要するに「何をもって『豊か』と感じ、『美しい』と感じるか」という、センス(感性)の土台の話です。
🎨 「汚い部屋」に見えますか?
現場で、こんな利用者さんに出会ったことはありませんか?
【事例:Dさん(85歳・女性)】
築100年近い古民家で一人暮らし。
家の中は、古い着物、木箱、ひび割れた壺、なんだかよくわからない農具……とにかく「モノ」で溢れかえっています。
足の踏み場も狭く、薄暗い。
【図(客観的事実)】
○ モノが散乱している
○ 照度が低い
○ 転倒リスクがある
これを、現代的なマンション暮らしに慣れたヘルパーさんやケアマネジャーが見ると、どう思うか。
「片付けましょう」
「危ないから捨てましょう」
「不潔です(衛生管理)」
これ、「図」へのアプローチとしては正解(安全確保)なんです。
でも、Dさんは頑として拒否する。
「あんたたちには、ゴミに見えるんか!」と怒り出しちゃう。
ここで、「文化伝統(地)」というメガネをかけて、Dさんの「美意識」を覗いてみましょう。
「共同性」の要素④:文化伝統
「文化伝統」とは、その土地に根付く生活様式や芸術、美意識のことです。
もしDさんの生きてきた文化が、
「モノに囲まれていることこそが、豊かさの象徴」
「古びて味が出たもの(寂び)こそが、美しい」
という価値観(美学)を持っていたらどうでしょう?
現代の私たちは、「シンプル・イズ・ベスト」「断捨離」「整理整頓された空間」こそが「快適(善)」だと教え込まれています。
でも、Dさんの「地」では、何もないガランとした空間は「スッキリ」ではなく、「貧しい」「寂しい」「寒々しい」と意味づけ(□)されるのかもしれません。
そう、あの部屋は散らかっているのではなく、Dさんにとっては「思い出と豊かさに満ちた城(美術館)」なんですね。
美意識に敬意を払う
この「文化伝統(地)」が見えていれば、僕たちの「片付け」の提案は変わります。
「ゴミだから捨てましょう(機能的視点)」というのは、Dさんの「美意識(文化)」への冒涜です。
名探偵(専門職)なら、こう切り出すかもしれません。
「Dさん、この壺、すごい味が出てますね。昔から大切に使われてきたんですね(美意識への共感)」
まず、その空間を「豊か」だと認める。
その上で、
「この素敵な『コレクション』が、万が一転んで壊れたら大変です。Dさんがここを安全に通れるように、少しだけ『配置換え(レイアウト変更)』をして、特等席に飾りませんか?」
……どうでしょう?
「捨てる(排除)」ではなく、「美しく飾る(保存)」ための提案にする。
目的は同じ「動線の確保」でも、文脈を「文化伝統」に合わせることで、Dさんのプライドと美意識を守ることができます。
📝 次回予告:要素その5「言葉」
人は、理屈(図)ではなく、こうした「美意識(地)」で快・不快を判断していることが案外多いものです。
「なんとなく嫌」の正体は、この文化的なズレだったりするんですねぇ。
さて、おでんの大根もなくなってしまいました。
次回は、いよいよ最後! 共同性の要素その5、「共同性の中で使われてきた言葉のあり方」について語りたいと思います。
方言や、独特の言い回し。
「ありがとう」を何と言うか。「すみません」をどう使うか。
言葉は思考そのものですから、これもまた深いですよ……。
「呆けてるけど、ちゃんと美意識を感じる。酔っ払ってるけど、センスは磨く。」
そんな専門職の粋(いき)を目指して、今夜ももう一杯……。
おっと、飲み過ぎ注意ですね(笑)。
というわけで、今回も最後までありがとうございました!
皆さんの周りの「こだわりの強い」利用者さんのエピソード、ぜひコメントで教えてください!
それでは、今日も乾杯!🍻
【ハッシュタグ】
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