自分が生まれる前から ず~っとあった
「お返し」のミカンは、ただのミカンじゃないんです。
~「地」を育む5つの要素その1~
「ぷはーっ!」
いやぁ、急に冷え込んできましたね。
こういう夜は、熱燗(あつかん)の徳利(とっくり)を掌で転がしながら、ちびりちびりとやるのが最高です。五臓六腑に染み渡るとは、まさにこのこと…(ゴクリ)。
うぃ、呆録酔語です!
前回は、コップの茶渋のような「暮らしの痕跡」から、その人の背景にある巨大な「地」を読み解く名探偵になろう、という話をしました 。
「地」が見えれば、ただの汚れも「大切な思い出」に見えてくる。
でも、ここでまた一つ、酔っ払いの疑問が湧いてくるわけです。
「そもそも、その『大切な価値観』ってやつは、どこから湧いてくるの?」
人は一人で勝手に価値観を作り上げるわけじゃありません。
植物が土壌の成分を吸って育つように、人の価値観も、その人が生きてきた「共同性」という土壌から生まれてくるんです。
僕が執筆中の本では、この土壌を構成する要素を「5つの要素」として整理しています 。
今日からは、この5つの要素を一つずつ、お酒の肴(さかな)にしながら紐解いていきましょう。
今回はその第1弾。「古くからの習俗」についてです!
🍊 そのミカン、受け取りますか?
現場でよくある「あるある」な悩み。
利用者さんからの「お心付け」や「物」のやり取りです。
例えば、訪問介護のヘルパーさんが帰ろうとした時。
利用者のおばあちゃん(タキさん・85歳)が、仏壇にお供えしてあったミカンを手に、必死に呼び止めます。
「これ、持っていきなさい。わざわざ来てもらって、なんにも構い(おもてなし)ができなくて申し訳ないから」
ヘルパーさんは困ります。「規則ですので」と断ると、タキさんはシュンとして、「あんたは冷たいねぇ…」と呟く。
ここを「図(客観的事実)」だけで見ると、「規則違反のお礼(図)」対「コンプライアンス(図)」の戦いです。
でも、ここで「古くからの習俗(地)」というメガネをかけてみましょう。
「共同性」の要素①:古くからの習俗
「古くからの習俗」とは、その地域やコミュニティで長い間繰り返されてきた習慣やしきたりのことです 。
タキさんが育った村社会では、「何かをしてもらったら、必ず形にして返す」ことこそが、人間関係を維持する絶対的なルールだったのかもしれません。
冠婚葬祭の形式や、季節の行事への関わり方などを通じて、「何をするのが礼儀か」「人との繋がりをどう表現するか」という行動規範が、骨の髄まで染み込んでいるのです 。
つまり、タキさんにとってのミカンは、ただのビタミンC補給物質(笑)ではありません。
「私はあなたと対等な人間関係を結びたい」
「私は施しを受けるだけの惨めな存在ではない」
という、人間としての尊厳の表明なのです。
それを「規則ですから」とバッサリ切ることは、タキさんが何十年も大切にしてきた「生きる作法(習俗)」を否定することになってしまう。だから、「冷たい」と言われてしまうんですね。
「地」を知れば、断り方も変わる
この「地(古くからの習俗)」が見えていれば、僕たち専門職の対応は変わります。
ミカンそのもの(図)は受け取れなくても、その背後にある「習俗に基づいた思い(地)」は受け取ることができるからです。
「タキさん、ありがとうございます。お気持ち、本当に嬉しいです。昔から、そうやって人を大事にされてきたんですね」
まず、その価値観(習俗)に敬意を払う。その上で、
「でもね、会社からきつく言われていて、これをもらうと私が叱られちゃうんです。タキさんのそのお気持ちだけで、もう十分にお腹いっぱいですよ」
そう伝えれば、タキさんのプライド(地)は守られます。
「ああ、この人は私の作法を分かってくれた上で、立場上もらえないんだな」と納得してもらえる確率がグンと上がるはずです。
これが、「見えないもの(地)」を見る力です。
📝 次回予告:要素その2「歴史」
さて、今日は「古くからの習俗」という名の土壌について語りました。
ミカン一つにも、その地域で脈々と受け継がれてきた「礼儀」というドラマが隠されているんですねぇ。
次回は、共同性の要素その2、「歴史」について語りたいと思います 。
その地域がどんな苦難を乗り越えてきたかが、人の「強さ」や「諦め」にどう影響しているのか。
これまた、深い話になりそうですよ…。
「呆けてるけど、ちゃんと背景を見る。酔っ払ってるけど、礼儀は忘れない。」
そんな専門職の誇りを胸に、今夜ももう一杯だけ…。
というわけで、今回も最後までありがとうございました!
コメント欄で、皆さんの地域の「変わった習俗」や「お返しエピソード」、ぜひ教えてください!
それでは、今日も乾杯!🍻
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