短編小説「目に見えない大事なもの」



 今日はクリスマス。

 待ちに待った明子への告白の日だ!!

 150万の婚約指輪を持って駅へと急いでいた。

 明子は恋人が欲しいと言っていたから、、俺がその恋人になってやろうと思った。

 今、、赤のスーツでサンタに扮した俺がクリスマスプレゼントを渡しに行くぞ!!

 道の途中、、下をあまりよく見ていなかったからか、、空き缶が転がっていて、、それにつまづいて転倒した。

「うわあああ」

 腰を強く打ったが、、すぐに起き上がり、、その空き缶をできるかぎり遠くに投げた。

「死ね!!!! 空き缶!!!!」

 そして、、また走り出したが、、一旦立ち止まった。

 ほかの人が今の俺みたいにあの空き缶で転んだらどうする?? 体が弱い老人とかだったら、、骨折してしまうかもしれないな。

 俺は空き缶を拾って胸ポケットに入れた。

 そして、、また駅へと向かう。

 横断歩道で信号が点滅して赤に変わりそうになり、、100%に近い全力で走った。

「ドッーーーン!!!!」

 横断歩道を渡って2秒で横から猛スピードで突進してきた自動車に轢かれてしまった。

 5メートルほど吹っ飛んで、、冷たい雪の積もった地面に転がった。

 あまりの雪の冷たさと激痛で叫んだ。

「アアアアアアアア!!!!」

 赤のスーツが雪で濡れて、、血みたいに見えるのと、、本当にこの事故で流れた本物の血かどうか見分けがつかないなとこんな緊急事態に考えてしまった俺はバカだな。

 ちなみに空き缶はトマトジュースだから、、さらに本物の血か紛らわしいなと思ったり。

 足があらぬ方向に向いている。

 体を少しも動かせない。

 そして、、自動車は俺をさらに故意に轢いた。

 「グフ!!!!」


 



 

「起きなさい!!!!」


 急に響いてきた声に驚き、、目を覚ますと、、俺はベッドで寝ていた。

「あんたは誰だ?? ここはどこだ?? 俺は確か……」

「車に轢かれたんだよ」

「ここは病院か??」

「ここは死後の世界だよ」

 サンタの姿をしているおじいさんが訳わからぬことを言っている。

「死後の世界?? 俺は死んだのか??」

「いや、、今、君は病院のベッドで治療を受けている最中だ。意識を失っている間、、私とこうしゃべっているんだ」

「明子へと告白の日によりによってこんな大事故が起こるなんて俺はなんて不運なんだ!!」

「それは違うよ!!」

「何が違うんだよ!! 婚約指輪まで買って今日という日を楽しみにしていたのに。それがこんな大怪我で入院する羽目になったんだぞ!! 不幸でしかないじゃないか!!」

「もし、、君が事故に遭わなかったらどうなっていたのかというDVDがあるんだが。見せてやろうか??」

 そこには、、もし事故に遭わなかったら、、俺は通り魔に刺されて死んでいたという未来が映像として流れた。

「これは!!!! 事実か??」

「当たり前だ!!」

「ちなみに君が空き缶を拾ったおかげで、、君みたいに転倒しないで済んだ人がいた。怪我を免れた人がいたし、、君がその空き缶をポケットにしまっておいたおかげで事故の時にその空き缶がクッションになり、致命傷を防いでくれたのだ」

「てことは、、あの空き缶を拾ったから、、事故に遭うことができた。タイミングが重なって。だから、、通り魔に殺されなくて済んだということか」

「そうだ。でも、、それは私がこの夢に現れなかったら知ることがなかっただろう。君は本当に運がいい」

「運が悪いと思っていたことが実は運が良かったということなのか」

「人間は目に見えるものしか信じない。目に見えないことに大切なことがたくさんあるんだよ。君は空き缶を拾っただけで通り魔に殺される運命を変えることができたんだよ」

「これからは目に見えないものを大事にしたいと思います」

 サンタのおじいさんが教えてくれなかったら、永遠に事故が起きたことを恨むことしかできなかっただろう。


 目に見えてないだけで、、たくさんの大事な事実が見えないものの中に隠されていることを知った。

 空き缶を拾っただけで、、ここまで人生が変わるとは。

 さあ、、、、これから明子に事故で壊れてしまった婚約指輪を修理して告白してプレゼントするつもりだ。

 明子は修理した婚約指輪をどう思うかな。

 あの空き缶を拾ったという小さな善行からすべてがいい方向に変わっていった人生。


 目に見えないことに本当に大事なことが隠されているんだ。


 



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