Next PPP/PFIの可能性
世の中のPPP/PFI
PPP/PFIはこの10年間でかなり自治体経営・まちづくりの方法論として定着してきた。その一方で拙著やnoteで指摘してきているように、包括施設管理業務・サウンディング・随意契約保証型の民間提案制度などの個別の手法も含めて物事が一気に広がるときには必然的に亜流や質の低いものも大量発生してしまう。
1.「常に絶対的にそうであるものは、存在しない」("Nothing is always absolutely so.")
スタージョンはまた、これより有名な格言も残している。それは正確な名称としては「スタージョンの黙示(すっぱ抜き)」として知られているものであるが、現在では「スタージョンの法則」といった場合、実際にはこちらを指すことがほとんどである。例えば、オックスフォード英語辞典でもそのようになっている。
2.「どんなものも、その90%はカス(crud)である」
ChatGPTによるとスタージョンの法則というらしいが、PPP/PFIの世界においては「90%はカス」は言い過ぎだとしても、「コンサルによる劣化コピー案件、こうあったらいいなの経済合理性ゼロの市民WSの意見寄せ集め+補助金・交付金・起債依存型のハコモノ」などは間違いなくこちらに位置付けられるだろう。
国(内閣府等)のPPP/PFIの定義
「PFI(Private Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)」とは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法です。
民間の資金、経営能力、技術的能力を活用することにより、国や地方公共団体等が直接実施するよりも効率的かつ効果的に公共サービスを提供できる事業について、PFI手法で実施します。
PFIの導入により、国や地方公共団体の事業コストの削減、より質の高い公共サービスの提供を目指します。
我が国では、「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(PFI法)が平成11年7月に制定され、平成12年3月にPFIの理念とその実現のための方法を示す「基本方針」が、民間資金等活用事業推進委員会(PFI推進委員会)の議を経て、内閣総理大臣によって策定され、PFI事業の枠組みが設けられました。英国など海外では、既にPFI方式による公共サービスの提供が実施されており、有料橋、鉄道、病院、学校などの公共施設等の整備等、再開発などの分野で成果を収めています。

内閣府は(立場もあるのだろうが、)PFI≒PFI法に基づくPFIという位置付けになっており、「必ずしもイメージ図に合致する訳ではない」と注釈をつけていながらも、リース・公募設置管理許可等の一義的に民間が資金調達するプロジェクトはPPPではあるがPFIではないという形になっている。
(別のnoteでまとめたいと思うが、個人的にはこの図を使って説明する学識経験者・コンサルはリアリティがないので好きではないし、それによってミスリードされてしまうピュアな自治体担当者が不憫でならない。)
日本PFI・PPP協会の定義
「PFI」とは
PFIとは、公共施設等の設計、建設、維持管理及び運営に、民間の資金とノウハウを活用し、公共サービスの提供を民間主導で行うことで、効率的かつ効果的な公共サービスの提供を図るという考え方です。
サッチャー政権以降の英国で「小さな政府」への取り組みの中から、公共サービスの提供に民間の資金やノウハウを活用しようとする考え方として、PFIは1992年に導入されました。PFIの考え方は英国で生まれた構想でありますが、これに類似した公共事業分野への民間参画の取組は世界各国においても行われており、PFIは「小さな政府」や「民営化」等行政財政改革の流れの一つとして捉えられるものです。VFM はPFIの基本原則です。
PFIは過去に日本国内では、ほとんど例のなかった本格的なプロジェクトファイナンス導入へもつながるものと期待されています。ただし、PFI事業は幅広い分野で検討されるべきものであり、PFIの手法の適用しやすい分野から導入を進めて行くのがのぞましいでしょう。
「PPP」とは
公民が連携して公共サービスの提供を行うスキームをPPPと呼ぶ。PFIは、PPPの代表的な手法の一つ。
PPPの中には、PFI、指定管理者制度、市場化テスト、公設民営(DBO)方式、さらに包括的民間委託、自治体業務のアウトソーシング等も含まれる。
自分が5年間在籍したところだからというのを差し引いても、こちらの方がわかりやすく本質的である。
「本格的なプロジェクトファイナンス導入へもつながるもの」、これがPFIの本質的な部分である。しかし、日本における現在のPFI法に基づくPFIはゼネコン等によるコーポレートファイナンスで、(付帯事業など事業のごく一部に独立採算や混合型が含まれるものもあるが、)BTO方式のサービス購入型が大半である。
サービス購入型のBTO方式のPFIは、言葉を選ばずに言えば割賦払いに近く、SPCとしても金融機関からしても与信の圧倒的に高い行政が相手の非常にリスクの低いもの(同時に民間の創意工夫の余地が働きにくいもの)である。更に行政が従来の思考回路・行動原理のまま100ページを超える仕様発注の要求水準書を悪い意味でWin-Winの関係になっているコンサルにアドバイザリー業務として丸投げ委託してしまうから、PFIと言いながらローリスク・ローリターンのハコモノ整備事業に成り下がってしまう。
こうしたことが一部のPFI反対論者にとっての論拠になっているのだろうが、プロジェクトファイナンス・性能発注になっていけば、そのプロジェクトそのものの価値が資金調達の源泉となり、民間事業者も自社のノウハウを活用した魅力ある提案をすることが求められ、行政・民間ともにリスク・リターンを享受し合うものになりうるはずだ。
「PFI事業は幅広い分野で検討されるべきものであり、PFIの手法の適用しやすい分野から導入を進めて行くのがのぞましい」、こちらもそのとおりで、何の経験知もないままいきなりドラスティックかつ巨大なプロジェクトを実施するのはあまりに無謀すぎる。目の前にあること、自分たちの手の届くところにある課題・ポテンシャルから手をつけていくことが大切である。
この点から考えても、後述する内閣府の優先的検討規程のモデルで記された「総事業費10億円以上または単年の維持管理運営費1億円以上」を優先的検討の対象とすること自体にリアリティが欠如している。
そもそも公共施設・サービスが前提なの?
これまで多くの自治体・民間事業者に関わってきて、よく言われたりアンケートで書かれるのが「うちの課は施設を持っていないから関係ない」「大切なことだと思うけど、今の自分の仕事だと民間と一緒にやることがない」「我が社は建築・土木を持っていないから、PPPは導入できない」等々。
PPP/PFIのメインターゲットはハコモノ・インフラで、そこに付随する保守管理運営がサブでの対象になってくると思われている。
しかし、例えば福祉有償運送は(対象がNPO法人・社会福祉法人等に限られるが)まさに行政だけでは十分なサービスが提供できない分野・ニーズに対して、NPO法人等が自らの資金・ノウハウ・車両等のリソースを使うことで先行して実施し、それを行政(国)が道路運送法を改正(行政が出せるリソース)することで実現した。これもお互いが出せるリソースをクリエイティブに出し合い、社会課題の解決や新たなビジネスを創出したという面ではPPP/PFIの一環であると考えられる。
教育・福祉などあらゆる分野でPPP/PFIは現実的に用いられているし、行政だけであらゆる公共サービスを提供できるわけがない。PPP/PFIの用語や定義など実務上はそれほど意味のあるものではない。
目の前にある課題を解決しようとしたり、ポテンシャルを顕在化させようと思えば、自ずといろんな立場の人・組織が連携していく必要がある。必死になって生きていれば、あらゆる分野でPPP/PFIは(後から論理的に整理してみれば)「手法」として自ずと用いられているはずだ。
優先的検討規程の呪縛
このような点から考えても、2016年に内閣府から発出(2023年度に改正)された「PPP/PFI手法導入優先的検討規程運用の手引」はそろそろ現実に応じて見直す必要がある。

二 対象事業
イ 対象事業の基準
公共施設等の管理者等は、次に掲げる公共施設整備事業であって、民間事
業者の資金、経営能力及び技術的能力を活用する効果が認められる公共施設
整備事業を、優先的検討規程において、優先的検討の対象とするものとす
る。ただし、民間事業者の資金、経営能力及び技術的能力を活用する効果が認
められるかどうかの判断は、資金調達コストの差異のみで行うべきでなく、
業務効率化による効果等を総合的に勘案して行うべきである。
(1) 事業費の総額が10億円以上の公共施設整備事業(建設、製造又は
改修を含むものに限る。)
(2) 単年度の事業費が1億円以上の公共施設整備事業(運営等のみを行
うものに限る。)
ロ 事業費基準の例外
イの基準にかかわらず、公共施設整備事業の特殊性により、イの基準によ
りがたい特別の事情がある場合は、公共施設等の管理者等は、優先的検討規
程において、対象事業を限って、異なる事業費の額を基準とすることができ
るものとする。
優先的検討規程については上記noteにも記しているが、策定したほぼ全ての自治体が(対象事業の金額・床面積を少し変えている場合はあるにしろ)内閣府のモデルをそのまま劣化コピーしている。更に悪い自治体の場合は、ただの劣化コピーにも関わらずコンサルに何百万円もかけて策定業務委託をしている。
要は、本気で「まち」と向き合うなら自然とPPP/PFIはあらゆる分野で日常的に使われているので、そもそも優先的検討規程を策定する必要はない。策定するとしても、内閣府のモデルとは全く異なったものになっているはずだ。
ふと考える
ここからは世の中で行われているいくつかの事例をPPP/PFIという視点で改めて確認しながら考えてみたい。
エスコンフィールド

北海道日本ハムファイターズが本拠地として活用しているエスコンフィールドは、北広島市が都市公園条例を改正してきたひろしま総合運動公園内の建ぺい率を40%(+立体駐車場10%)とすること、使用料・貸付料の免除、税制優遇、インフラ整備などの制度・基盤整備等を行い、北海道日本ハムファイターズは札幌市からの移転・自ら球場建設という決断と施設整備等を実施している。
それぞれが持てるリソースを出し合っているのでPPPであるし、民間が球場建設のための資金を調達している点ではPFIである。
大丸有エリアマネジメント

エリアマネジメントで有名な東京丸の内。
こちらは道路空間を媒介として周辺でビジネスを展開する多くの民間事業者が有機的にネットワークしながら多様なプロジェクトを次々と実施している。

そして、この源泉になっているのは、エリアマネジメントなので当たり前だが「民間の主体的な経済活動」であり、そこで得られた利益の一部をまちに再投資していくことで更なる自らの利益に繋げていく。行政は道路空間の利活用の許可などの制度的なサポートが役割であり、裏方としての意味合いが強いがこれも同様にPPP/PFIの一種である。
草加市のリノベーションまちづくり

草加市ではリノベーションまちづくりを積極的に推進している。何よりも特徴的なのは、市職員がまちにドップリと浸かり地域プレーヤーや地権者と密接な人間関係を構築していることである。
特に象徴的な草加駅の東口商店街では、空き店舗が全くないほどの状況にあるが、これは空き店舗が発生した瞬間に職員が地主等にコンタクトをとり、出店を考えている地域プレーヤーとマッチングを次々にしていくアナログかつマンパワーを要する愚直な活動を続けているからである。
これも民間資金がまちに投下され、行政は行政ならではの与信と熱意を提供しているという点でPPP/PFIの一環である。
カターレ富山
「Be supporters!」は、高齢者・認知症の方など普段は周囲に「支えられる人」が「支える人」となるプロジェクト。2020年12月よりカターレ富山×県内福祉施設×サントリーウエルネスが一体で推進している。コロナ禍であらゆるものが分断される中、誰かを“推す” “応援する”ことで施設にワクワクとトキメキが溢れ、誰も予想しなかった数々の「つながり」と「幸せな物語」が生まれた。2021年はJ2復帰に向け県内一丸での応援機運が高まる中、県内福祉施設に延べ1000人、最高齢98歳のサポーターが新たに誕生!高齢者に起きた変化には医学の専門家も注目している。
プロサッカークラブのカターレ富山が、県内の福祉施設とサントリーウェルネスと連携して、高齢者福祉施設の方々にカターレを応援してもらい、それぞれが元気とビジネスを享受する仕組みである。2024年には特別企画としてチームのラッピングバスでアウェイ金沢戦のバスツアーを実施し、看護学校の学生がサポートするなど非常に社会性の高いプロジェクトに昇華している。
現時点では富山県・富山市といった行政が関与していないようだが、この取組によって介護医療費の削減等にもつながる可能性があるため、行政もフリーライドするのではなく、携わっている民間事業者の立場に立って自分たちができること・やるべきことを成せば、プロジェクトの質はさらに向上していく。
シテン
射水市では、県内唯一のスプラウト農家をシテンが事業継承して地域農業を守るだけでなく、1パックにつき1円を地域の若者のチャレンジや社会課題の解決、地域貢献等を応援していく「みらいのめスプラウト」として販売している。
これだけではなく氷見高校と連携して「駆除したウニを養殖する餌として規格外で廃棄される野菜を活用することで地球にやさしいウニをつくるプロジェクト」も展開している。更には射水市と連携して移住と空き家のトータルサポートのプロジェクトも担っている。
完全な民間プロジェクトとして始まった取り組みであるが、社会性が非常に高く行政だけでは対応が難しい・手を伸ばしにくい分野をビジネスとして民間が先行実施するとともに、行政もそこに単純なフリーライドをするのではなく、移住定住といった行政課題についてビジネスベースでの連携を図っている。
長崎スタジアムシティ

プロサッカークラブのV・ファーレン長崎のホームスタジアム、同プロバスケットボールの長崎ヴェルカの本拠地アリーナを中心に商業施設・ホテル・オフィスを地元企業であるジャパネットグループが約1,000億円かけて整備した。
スタジアムシティは開業からわずか2ヶ月で約950千人が訪れ、V・ファーレンも残念ながらプレーオフで敗退し2025シーズンのJ1昇格はならなかったものの、チームとして観客動員数・客単価ともに増加している。
スタジアムシティそのものはエスコンフィールドと異なり、造船所跡地を完全に民間プロジェクトで開発したものであるが、上記noteにも記したように公園っぽさ、まちの観光名所でもあり、雇用の創出、固定資産税・都市計画税・法人税等の増加にも寄与していること等を考えれば「単なる民間プロジェクト」ではなく、まちの大切なコンテンツとしてどう育てていけるかがポイントになるだろう。
幸いにも長崎市役所にはスタジアムシティ連携推進室が設置されているようなので、民間の1,000億円の投資を2,000億、3,000億の価値へブラッシュアップしていくことが期待される。
現代的課題とこれからやること
まちの衰退
少子・高齢化、人口減少(流出)、物価・人件費等の高騰、人がいない、地球温暖化・・・複雑で多様な課題が広がっているが、行政を取り巻く課題を一つに収斂すれば「まちが衰退すること」であろう。
そのスピードは異常に早く、手を拱いている間に打てる手が次々となくなっていく。旧来型行政の思考回路・行動原理で丁寧に・関係者全員の合意形成を図っている(年に4回の議会のタイミングで報告や議決をとっている)うちに、前提条件・市場があっという間に変わってしまい、やろうとしていたことが時機を逸した「過去のもの」になってしまう。
まちに出て「今」と向き合わず庁舎に籠り、国からくる文書、思いつきやごく一部の支援者からの要望を鵜呑みにした議員からの声、行くところがなく毎日窓口にやってくるクレーマー市民の声だけの世界でしか生きていないから、「何が本当の課題なのか・今やるべきことは何か・自分たちの役割は何か」といった根本的なことが肌感覚としてわからないから、手が動かない。
「どうせ自分のまちには」とイジけていたり、「それは国のやることだから」「首長や上司が指示してくれないから」「事務分掌に定められていないから」「うちの課の範疇ではないから、忙しいから」と誰かのせいにしてできること・やるべきことを放棄して不作為状態になるから、具体的なプロジェクトを企画・提案・実施できない。
こうしたことも含めて、「まちの衰退」の全部とは言わないが、かなりの部分の原因者が行政そのものなのではないか。そしてまちの衰退のスピードは異常に早いので、手を拱いている間に打てる手は加速度的に喪失していく。
点としての公共施設を・・・の時代ではない
未だに「公共施設マネジメント≒施設総量の縮減」だと誤認している自治体・担当者が非常に多い。
前述のPPP/PFIの優先的検討規程における内閣府と同様にミスリードしてきた総務省、お抱え学識経験者、そこに群がりリアリティのない計画策定で荒稼ぎするコンサルも悪いが、何よりもそれぞれの自治体・担当者が「点としてのザ・公共施設マネジメント」しかやろうとしない(それすら計画づくりと何もしていない評価で誤魔化し続ける)ことが問題である。
もはや「点としての公共施設をどうするか」の時代ではない。もちろん、社会的な役割を終えたり重複してほとんど使わない公共施設を廃止していくこと(≒総量縮減)は避けられないし、すごいスピードでやっていかなければならない。
ただ、そういうことをしたいのであれば余計に「まち全体として考え」、「地域プレーヤー・地域コンテンツとリンク」したプロジェクトを同時並行で複数同時に多数展開していかなければならない。ハコモノを減らしていることが目立つようなまちではいけないし、そこに依存していた人たちに新しい生活の可能性を見出してもらう必要がある。それこそが「負債の資産化・まちの再編・まちの新陳代謝」につながっていく。
持続可能性は経済合理性
言葉としては好きではないが(SDGsバッジをつけてゴッコをしている人たちはもっと・・・)、SDGsが社会的なキーワードになっている。行政の各種計画でも持続可能性やSDGsは必ずといっていいぐらい何度も用いられている。ただし、こうしたところに書かれた持続可能性を担保していく仕組み・理論が同時にセットアップされている計画はほとんど見ることがない。
持続可能性を担保していくための必要条件は経済合理性である。特に教育・文化・福祉関係の人たちは「教育はどんな金がかかってもやるべきだ」「文化芸術の振興は金の問題ではない」「教育・学校給食・医療費はすべて無料でやるべきだ」といったことを主張するが、皆さんのやりたいことは誰がどうやって提供するのか。
「人が動く」ためには何らかの形で資金を中心としたリソースが継続的に必要になる。無償ボランティアは災害発生時などの緊急事態では必要だが、平時においての無償ボランティアは「誰かの経済的な損失」によって成立しており、その人・組織における経済合理性が破綻した瞬間になくなってしまう。
個々のプロジェクトでそれぞれ独立採算・経済合理性をすべて成立させるのは現実的ではない。だからこそ、多くのプロジェクトをまち全体で構築・創出して、そこから得られる利益をキャッシュアウトしてでも支えなければいけない・支える価値のあるプロジェクトに充当していく。それが「まちとしての経済合理性」である。現在の厳しい社会経済情勢のなかでも、「まちとしての経済合理性」は確保していかなくてはならない。
数年前にある小規模な自治体の首長が「民間がすべて正しくて行政が間違っていることはあり得ない。民間的な発想でやるのは弱いものを切り捨てることだ」と議会で発言されていたが、このような行政が全ての公共サービスを抱え、税金で何でもコントロールすることが財政力指数が0.3程度の自治体でできるわけがない。
まち全体としての経済合理性を確保していくためには、様々なプロジェクトを民間事業者と回していくしかない。そこにもPPP/PFIは自ずと手法として用いられているはずだ。
社会性も必須
経済合理性は必要条件となるが、行政が関わるプロジェクトの場合は同時に社会性も持たなければいけない。社会性がゼロの経済合理性だけを優先するようなプロジェクトは民間ビジネスの世界なので、そこに行政が手を出してはいけない。
しかし、近年のPark-PFIで行政が補助金も活用しながら膨大なイニシャルコストをかけて基盤整備し、年間の賃料が1,000千円程度の超安価でナショナルチェーンのカフェを誘致し、「点としては流行る」が周辺の飲食店をあっという間に駆逐するような事業は、民間需要を官製ビジネスに「右から左へ流すだけの民業圧迫」でしかない。このようなことをやっても周辺の民間ビジネスが成立しなくなることで、エリアの価値を下げ法人税・固定資産税・都市計画税等の歳入が減少するようでは元も子もない。
道の駅も同様で、本来は「道路の休憩施設」でありターゲットは遠方から来る人やそのまちを車で通過する人たちなので、地元の人が野菜を買いにくるところでも、周辺住民が子どもの遊び場として連れてくるところでもない。ましてや既得権益の外郭団体の事務所が入るところでもない。
「民間だけではビジネスとして対応ができない・難しいことでかつニーズのあること」が社会性であり、そうした部分を支えるために市民等からいただいた貴重な税金を活用することが求められている。
近日中に公表されると思うが、ある自治体の廃校を活用した随意契約保証型の民間提案制度では、民間事業者からオルタナティブスクールに関する提案が寄せられた。価値観が多様化し、子どもたちも昔のように「公立学校に通い、勉強で良い点を取る」ことだけではなくなった時代に、いろんな感性・特徴・可能性を持つ子どもたちに対応できる柔軟な場が求められている。本来はそれぞれの教育委員会が多様な選択肢を準備して子どもたちのポテンシャルを引き出していくことが求められているが、簡単に「ザ・教育委員会のシステム」は動かない。
この自治体では、こうした社会情勢や民間事業者の提案の価値を十分に理解して、「事業が軌道に乗るまでの間、無償貸付にする等の事業者の負担を可能な限り低減する」ことを行政のリソースとして提供することになるようだ。
民間でもクリエイティブな「社会性のあるプロジェクト」が創出される時代である。それぞれの自治体は、自分のまちにどのようなプレーヤーがいて、どんなビジネスを展開しているのか、これからやろうと考えているのか見えているだろうか。
何も行政発意である必要はないし、そんなことができるわけがない。
地域プレーヤーや市民が儲かること
「まちとしての総力戦」が求められている時代、これまで述べてきたように「行政だけでまちを支える」ことは全く現実的ではないし、冷静に考えてみれば多くの人々が様々な営みを行っている「まち」全体から見れば行政もその一つの構成要素でしかない。当たり前だが決して万能ではないし、あらゆる分野を全て担っているわけでもない。
まちで営みを行っているのは、商工会議所・農協・建設業組合といった業界団体に加盟している人・企業だけではない。まちには多様なプレーヤーがいて、それぞれ必死になって日々、自分たちなりに試行錯誤しながら生きている。こうした人々が必死になってビジネスを展開し、利益を得ていくことでその一部が反射的・直接的・間接的に税金になってくる。
そのまちの民間事業者がビジネスをして利益を上げていくことではじめて行政が成立する。本来は行政がやらなければいけなかったのにも関わらず手が届かなかった・十分なサービスを提供することができなかった分野を民間が独自のノウハウでビジネスとして提供している事例も数多く存在している。
そうしたことを考えたときに、PPP/PFIで「民間事業者が公共資産を活用して利益を得るのはいかがなものか」といった古臭い人たちの指摘がいかに的外れかがわかってくるだろう。
民間事業者が利益をあげることは決して悪いことではない。むしろ利益が上がるから会社の「持続可能性」が発現するのであり、行政にとっての持続可能性の源泉である「税金」が出てくる。
旧来型行政では、「見込みのない人・事業者を延命化」するために「みんな仲良くの補助金(補填)」を出すことが商業・観光・農業振興だとされてきたが、それではうまくいかないことは時代が証明している。
これからの時代は「見込みのある人・事業者に投資」することで「その人・事業者のビジネスを育てる」ことがまちの持続可能性に繋がっていく。「みんな仲良く」ではなく「誰か」を集中的にサポートすることである。これまでの「結果の平等」ではなく「機会の平等」こそが求められていることである。
Next PPP/PFI
「あの人だけずるい」と批判する人たちが出てくることは間違いないが、「あの人以上のビジネスモデルを一緒に考えて作り上げましょう、そうすればあの人以上のサポートしますよ」がこれからの考え方であるし、そうした人たちを自分たちでまちに出て探し、自分たちのリソースを注ぎ込んでいく。
民間の先行するビジネスモデル・アイディアに対して、行政が「行政ならではの出せるリソースを惜しみなく提供」して、その民間事業者のビジネスを拡大してサービスの範囲を拡張していくこと、質を向上して民間にとっては利益を、行政にとっては社会性と持続可能性を確保していく。
それがこれからのNext PPP/PFIの世界になっていくだろう。
(もちろんフリーライドではいけないし、ご都合主義で行政施策に組み込むことはもってのほかである。従来型の公共資産・サービスを前提としたPPP/PFIも質を高めつつ拡大していくことが必要なのはいうまでもない)
お知らせ
2024年度PPP入門講座
来年度に予定する次期入門講座までの間、アーカイブ配信をしています。お申し込みいただいた方にはYouTubeのアドレスをご案内しますので、今からでもお申し込み可能です。
実践!PPP/PFIを成功させる本
2023年11月17日に2冊目の単著「実践!PPP/PFIを成功させる本」が出版されました。「実践に特化した内容・コラム形式・読み切れるボリューム」の書籍となっています。ぜひご購入ください。
PPP/PFIに取り組むときに最初に読む本
2021年に発売した初の単著。2024年12月現在6刷となっており、多くの方に読んでいただいています。「実践!PPP/PFIを成功させる本」と合わせて読んでいただくとより理解が深まります。
まちみらい案内
まちみらいでは現場重視・実践至上主義を掲げ自治体の公共施設マネジメント、PPP/PFI、自治体経営、まちづくりのサポートや民間事業者のプロジェクト構築支援などを行っています。
現在、2025年度の業務の見積依頼受付中です。
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まちみらい公式note、世の中の流れに乗ってサブスク型や単発の有料化も選択肢となりますが、せっかく多くの方にご覧いただき、様々な反応もいただいてますので、無料をできる限り継続していきたいと思います。
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