1秒でも早く
「まちみらい」の口癖
一緒に走れるまち
まちみらいでご一緒させていただいている自治体は、まちみらいが「資本金100万円」しかない「得体の知れない」会社なのに「プロポーザルや一般競争入札には出ない」ことを承知しながら、何らかの形で随意契約の理由書を作成、庁内決裁していただいている。
ということで、契約時点で(少なくとも担当者と決裁ラインは)圧倒的に柔軟性・機動力を持ち、肝も据わっている。こちらとしてもこうした貴重な方々・まちを裏切ってはいけないので、本気で関わりいただく額の最低でも10倍、基本的には100倍の成果を出していくことが求められている。


契約後、業務がスタートすると施設所管課が抱える課題を短時間でプレゼンし、それをいろんな課の職員で徹底的にディスカッションしながら形になりそうなものから順に事業化していく「案件協議」、プロジェクトごとの専用フォーマットを用いて関係者が一つずつパーツを作り上げていく「地獄の缶詰作業」を基本として、自分たちらしいプロジェクトを構築していく。
これらのプロセスでこちらからよく口にするのが「1秒でも早く」である。
研修の効果は3日

年間数十本の単発のセミナー、職員研修にも出講させていただいているが、終了後には「なんか気合い入りました」「自分たちでもやってみたいです」等の前向きな感想が寄せられることが多く、そのこと自体は素直に嬉しいが、(研修内でも時間があれば)話すのは「研修の効果は3日間しかない。3日以内に何ができるかが勝負」ということである。
3日以内に何をすれば良いのか?と問われることもあるが、何でもいい。後述するように有志によるプロジェクトチームの組成などに辿り着けばホンモノであるが、関連する本を読む、共感した職員で話をしてみる、現場をもう一回見にいく。。。何でもいい。心が動いた瞬間に動けない人が平時に動けるわけがない。
1秒でも早く
心が動いた瞬間、何かを思いついた瞬間に頭ではなく手が動くのかどうかが勝負である。瞬間的な熱は時間と共に驚くようなスピードで冷めていくし、その場で思いついたこともあっという間に忘れてしまう。まずは丁寧に考えて。。。と思った瞬間にダメだったら、理解が得られなかったら、やるの大変そうだよな。。。とネガティブな発想が渦巻いてしまう。
だからこそ「1秒でも早く」である。
一方でやらないまち
これまで実際に関わったまちでも、ほとんど成果を出せなかったまちがあることも純然たる事実である。やる気スイッチを見つけてあげられなかったり、結果に結びつけられる道筋を共有できなかったり、庁内・議会等の敵味方のパワーバランスや暗黙のしきたりを読みきれなかったりと、何らかの要素が不足したのはパートナーとしてこちらの力不足である。これらの局面のいずれにおいても「1秒でも早く」何かに舵を切ることができていたら、全然違う世界線があったはずである。
業務委託以外でもいろんな形で多くの自治体と接してきたが、「やらない」人たちには共通項がある。
行政の職員はどこにいっても本当に優秀でいろんなことをよく知っているし、圧倒的に高い事務処理能力を有している。しかし、そうした良さが悪い面に働いてしまうのか、いざ手を動くことを提案すると〇〇ガーと「やらない≠できない」理由が次々と口から出てくる。
プロなので結果が全てである。どれだけ物事を知っていても、弁が立っても3次元のリアルなまちに貢献しなければ税金泥棒でしかない。
グチグチしていないで「1秒でも早く」手を動かすこと、その大切さを事例を通じて考えてみたい。
実際にやってみると
阿南市
2023年度までご一緒させていただいた阿南市。上記のnoteで記したとおりきっかけは単発の職員研修であった。その場で話した賞味期限3日を愚直に守り「心の動いた職員有志によるプロジェクトチーム」を組成して、市役所本庁舎等におけるトライアル・サウンディングからスタートした。
その後も2件のESCO、随意契約保証型の民間提案制度(やそこから生まれた夕暮市場)など多くのプロジェクトを自分たちらしく展開している。
これらのプロジェクトを検討している段階では様々な課題にも直面していたが、給食センターのESCO事業においては「どうしてもこの夏に空調設備を更新したい」という強い想いを持った担当課の職員を中心として、民間事業者とあらゆる手段を駆使して何とか希望に沿った形で事業化に漕ぎ着けている。これも「1秒でも早く」の思いが形になった事例である。
宮崎市
現在、こちらも驚くようなスピードで多彩なプロジェクトを展開している宮崎市。
職員研修で訪れたことがきっかけとなったが、契約前の段階からいくつかのプロジェクトについて相談をいただいていたが、その検討レベルは圧倒的に高かった。
実際に業務が始まってからも、例えば管財課の「売れ残った土地の処分に困っている」案件では、青森県・浜松市・市原市等で行われている包括売却業務を紹介したら翌月には先行事例を全て調査し、ある程度の全体像を整理してきた。
この整理された資料と内容があまりにもレベルが高かったことから「翌月までに1秒でも早く公募の準備をするように」アドバイスしたら、本当に実現してしまった。初年度の公募は単年度だったこと等も影響して暫定的なスタートとなったが、本年度は債務負担行為を設定して本格的なプロジェクトに昇華している。
また単純に公募するだけでなく、(売却金額に応じて不動産業者のフィーも決定することから市場原理が自ずと働くとして)土地価格も受託者が設定できるようにするなど、リアリティと効率性を兼ね備えた工夫もされている。
市営住宅も当初は「いかに老朽化・空き住戸が点在するストックを集約・建て替えするのか」がテーマであったが、まずは市営住宅が果たすべき役割やエリアとの関係を考えつつ、ひたちなか市の民間ストック活用の事例を紹介することで移転支援業務や階段室型の市営住宅の最上階の3室を佐土原高校の寮に転用するなどのプロジェクトに結びつけている。
子どもの居場所づくりに関しても「ただハコモノとして整備しても中高生は来ないだろう」という仮説と、これからを担う中高生にとって昔とは異なり自分の居場所が見つけにくい環境にある・居場所を多く持っていた方が豊かになるといったデータも見ながら、実際に子どもたちの声を聞いていった。
こうしたプロセスを経て旧来型の公共施設ではなく「オシャレ・Wi-Fiが使える・ドリンクが飲める(・変な大人がいない)」ところが望まれていることが明らかになり、早速ATOMicaと連携して試行的にコワーキングスペースを子どもの居場所として活用することとした。利用者の評判も非常に良かったことから本年度、事業化して土日祝日に宮崎市の子どもたちが無料でコワーキングスペースを活用できるプロジェクトに昇華している。(今後、市内各地への展開や社会性をより持たせることなどの拡充も検討している。)
これら一連のプロジェクトも「やりたいこと」と与条件が明確になった瞬間に「1秒でも早く」事業化している。
玉名市
玉名市とは昨年度まで総務省の経営・財務マネジメント強化事業で関わっていたが、本年度からは本格的に一緒に取り組むこととなった。
貴重な税金を活用して業務委託をしていただくからには成果で返すしかないので、まずは業務開始にあたって宮崎市の案件協議の場を実際に視察してもらい肌感覚を掴む・直接担当者の話を聞きながらどう場の運営していくのかの共通認識を醸成した。その後、宮崎市の担当者を招聘して職員研修を実施して「自分たちにもこうしたことができる」という可能性を感じてもらうこととした。
このプロセスが功を奏し、初動から早い段階で案件協議が軌道に乗り始めた。
そして、玉名駅前の視察をした際に駅前でHOMEというコワーキングスペースを経営する方から「この駅前広場、もったいないんですよね。せっかく高校生とかいっぱい使ってるのに、動線も微妙だし。。。」といった意見が出された。確かに現場を見るとタクシープールや駐車スペースがかなりの面積を占有し、車優先の状況であったが、占用して何らかに活用できそうなスペースも十分に見つかった。
そこで「1秒でも早く、ここを活用して人がいるスペースを作ってみよう。次回(1ヶ月後)に自分が来るまでに民間と協力してこのスペースの活用ができるなら、必要な資金は少額だけど提供する」ことを約束した。
すると翌日には駅前広場活用のための図面を作成したりJRをはじめ関係機関との調整をはじめ、自分たちで資金も出しながら約束どおり1ヶ月以内にはポーチパークを開始した。





まだコンテンツのセットアップなどが十分ではないが、まずは自分たちで何かやってみる、足りないものを自分たちで考えながら補っていくための第一歩として非常に重要な取り組みである。
「こんなことぐらい」「この程度?」と思うかもしれないが、この1歩が踏み出せたことで3次元の世界でいろんなことが検討できるようになるし、多くの人の目にとまることで何かが動き始める可能性がある。
原点は
流山市時代
(昔話、自慢話、説教は老害になってしまうので避けたいが)公務員時代には拙著「PPP/PFIに取り組むときに最初に読む本」でも記したようにデザインビルド型小規模バルクESCO、包括施設管理業務、有料広告、随意契約保証型の民間提案制度などの各種ファシリティマネジメント施策を矢継ぎ早に展開していた。
目の前にやれること・やらなければいけないことが山積していたこと、自分のやりたいことを形にしていかないと仲間が増えないこと、もっと大きくて本質的なことをやるためには信頼を得る必要があったこと等から、複数同時展開でいろんなプロジェクトを検討・実施していた。
当時「1秒でも早く」という言葉自体は使っていなかったものの、先行する佐倉市・浜松市などのレベルに早く追いつかなくてはという思いを持って、ガムシャラに(細部にこだわる時間を持つことなく)進めていた。
常総市
上記の拙著やnoteでも度々取り上げている常総市。
「やってから考える」(こちらからみると「やってからも考えない」)スピード感で包括施設管理業務、全国初のトライアル・サウンディングから水海道あすなろの里の再生、随意契約保証型の民間提案制度など多様なプロジェクトを展開している。更に近年では自分たちでアグリサイエンスバレーまちなか再生のプロジェクトにも取り組んでいる。
例えば包括施設管理業務では、もっと大きな枠組みかつスマートに実施したいところであったが、既存の業務委託の発注金額・常総市として準備できる予算・関係各所からの意見等を考慮して様々なパーツを削ぎ落として発注・契約に至っている。
トライアル・サウンディングも公共R不動産のプロジェクトスタディに妄想企画として取り上げられた1ページを「これ面白そうっすね」の一言をきっかけに公共R不動産とコンタクトを取り実施に結びつけている。
やらなければいけないことは無限
お役所時間は通じない
公共施設・インフラを取り巻く環境はもとより、まち全体としての少子・高齢化、人口流出、空き家・空き店舗、公共交通、地域経済の停滞、世界規模では温暖化など課題は山積どころか無限に存在している。
これまでの基本構想・基本計画・実施計画・基本設計・実施設計・工事。その間に「丁寧な全員合意を目指した説明」、オママゴト市民WS、庁内や議会対応のための必要以上の使わない想定問答も含めた資料作成。。。こんな悠長な「お役所時間」でやっているうちに社会経済情勢は激変していく。
莫大な税金を投下してコンサルに丸投げ委託した先行事例の劣化コピーによる要求水準書の「てにをは」を評論家気取りでイジっていても何も生まれない。
新型コロナウイルス、各地で発生する自然災害、不穏な世界情勢など先の読めない・想定できないことは次々に発生する。
市場もあっという間に変わっていく。現在、国交省や内閣府が実施するプラットフォームサウンディングに合わせて各種PPP/PFI事業(≠プロジェクト)を組んでいる自治体も多いが、こんなものを待っている間に市場は変わっていく。自分たちでサウンディングぐらいやろうと思えば明日にでもできるし、フットワークも軽く自分たちらしくできるはずだ。
そして、このような「お役所時間」で国のサウンディングに参加するようでは、その後もきっと多くの時間を浪費し、そこでの意見も全く役に立たないで市場と乖離したザ・PPP/PFIのハコモノに陥り、自らまちを衰退させてしまう。
丁寧にやれるほど・考えているほど暇じゃない
数え切れないほどの課題に対応したり、そのまちにしかないポテンシャルを「今」活かしていくことを考えると、「丁寧に」やっているほど暇じゃないことも容易にわかるはずだ。
実際に公務員時代、多いときは(提案制度の協議対象案件が一気に追加されたこともあり)10ぐらいのプロジェクトを同時並行で回していた。このような状況下に置かれれば致命的なリスクはきちんと事前に整理しつつ、「何が大切か」「この部分だけは整理しなければいけない」と自然と見えてくる。逆に言えば枝葉の部分についてはやりながらエラーが出たら修正していくしかないと割り切ることができる。
「〇〇が欲しい」と言ったオママゴト市民ワークショップや事務局がシナリオを作って予定調和で進める形式的有識者委員会などで「表面上丁寧に」やっている暇はない。
また、こちらのnoteでも記したとおり考えているほど無駄な時間もない。
早く処理すれば簡単なのに
「1秒でも早く」やることはポジティブな面ではもちろんだが、行き違い・ボタンの掛け違い・与条件のエラーなどが発生した場合にも有効である。
関係者の誰かが不安・不満を抱きはじめたら、その瞬間に腹を割って話せば理解が得られることもある。しかし、時間が経過していくと当たり前だがそれぞれの主体が違う行動をしていくため折り合えるところがなくなってしまう場合もある。
与条件の設定にエラーがあった場合もサウンディング(、トライアル・サウンディング)などの早い段階で気づいておけば簡単に修正できるものの、そうしたことを曖昧にしながら時間を浪費していい加減に庁内合意・議会や市民への説明をしてしまうと「丁寧に説明してきたのに」と引き返しにくくなってしまう。
だからこそ前段の案件協議・缶詰作業のような形で、早い段階においてこうした行き違いやエラーを徹底的に排除していくことで足元の強いプロジェクトにしていくとともに、時間軸も早めていくことができる。
全員合意はあり得ない
「表面上丁寧にやること」の一つに位置付けられるかもしれないが、手が動かないまち(の首長や幹部職)は「誰一人取り残さない、議会は全会一致」を必要条件だと錯覚していることが多い。市民全員を一つのプロジェクトで満足させることはそもそもリアリティがないし、議会は(庁舎の位置条例など一部で2/3の特別議決があるものの)出席議員の過半数の賛成がルールになっている。
全員合意できるようなものは「遥か昔にケリをつけていなければいけないこと、そんな場で議論する必要もないこと、クソつまらない最大公約数」のいずれかでしかない。
全員合意にこだわっている間に時機を逸し、まちは衰退してく。
「1秒」の大切さ
「今」求められていることは今やるしかない。
やらなければいけないことは無限にあるし、一つずつの課題も困難なものでどこかにマニュアルや答えがあるわけでもない、考えているほど無駄な時間もない。
コケながらでも、暗中模索でも「走ること」が何より大切。三次元の世界で暫定的であってもやりたいことを具現化していけば、どこに可能性・課題があるのかが見えてくる。1秒でも早くやれば、リアクションすれば、その瞬間の市場に近い形で判断ができる。
余計なことを考え始めるとダークサイドに堕ちていく。「何かあったどうしようか」と憂う暇があったら「1秒でも早く」形にしていく。その繰り返し・フットワークが求められている。
まさに覚悟・決断・行動である。
そう言えば公務員時代に副市長から「これからはスピード感じゃなくてスピードだ!」と、ただでさえかなりのノルマが課されていたのに(何十倍もの成果を要求される)恐ろしい言葉をかけられたのを思い出したw
お知らせ
2024年度PPP入門講座
来年度に予定する次期入門講座までの間、アーカイブ配信をしています。お申し込みいただいた方にはYouTubeのアドレスをご案内しますので、今からでもお申し込み可能です。
実践!PPP/PFIを成功させる本
2023年11月17日に2冊目の単著「実践!PPP/PFIを成功させる本」が出版されました。「実践に特化した内容・コラム形式・読み切れるボリューム」の書籍となっています。ぜひご購入ください。
PPP/PFIに取り組むときに最初に読む本
2021年に発売した初の単著。2024年8月現在6刷となっており、多くの方に読んでいただいています。「実践!PPP/PFIを成功させる本」と合わせて読んでいただくとより理解が深まります。
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