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【市場】②市場は「大きい場所」ではない。なぜ市場選定を間違えると、全部ズレるのか 〜“ある市場”ではなく“勝てる市場”を切り出せ〜

前回書いた通り、
TAMは市場ではない。仮説だ。

前回の記事はこちら


TAMを削ったあとに何をするのか。

答えは一つ。

どこを取るかを決める

多くの会社はここで間違える。

市場を「大きさ」で選ぶ。

市場規模が大きい
成長率が高い
注目されている
投資もついている

だから行く。
しかし、そこで勝てるとは限らない。

むしろ、
その選び方から負けが始まることが多い。

市場選定とは、
“需要がある場所”
を探すことではない。

“勝てる条件が揃う場所”を切り出すこと

だ。

そして厄介なのは、
市場選定のミスは、
後から修正しづらいことだ。

顧客がズレる。
提案がズレる。
プロダクトがズレる。
組織の学習までズレる。

最初にどこを取るか。

ここで、経営の方向はほぼ決まる。


1. 市場が大きいのに、なぜ勝てないのか


よくある。

「この市場、伸びています」
「プレイヤーもまだ多くないです」
「将来性があります」

会議は盛り上がる。

しかし、
その場で本当に問うべきことは別だ。

自分たちは、そこで勝てるのか?

市場が大きいことと、
自分たちが取れることは別物だ。

市場が大きい
課題がある
顧客もいる

ここまでは、
参入理由にならない。

重要なのは、
誰の、
どの課題を、
どの条件で取りに行くかだ。

ここが曖昧なまま入ると、

顧客理解も、
プロダクトも、
営業も、
価格も、
全部ズレる。

市場選定を間違えると、
後工程はすべて崩れる。

--

2. 市場選定とは何を決めることか


市場選定というと、
多くの会社はこう考える。

どの業界を狙うか
どのくらい大きい市場か
成長産業かどうか

違う。

市場選定とは、

“どの条件の顧客群から取りに行くか”

を決めることだ。

決めるべきは、
業界名ではない。

どんな課題を持っているか

その課題はどれだけ痛いか
既存の代替手段にどれだけ不満があるか
誰が意思決定するか
どれくらいの速度で導入できるか
自分たちが勝てる要素を持っているか

この条件を揃えていくと、
初めて「取るべき市場」が見えてくる。

市場とはラベルではない。条件の束だ。

「製造業向け」では粗い。
「中小企業向け」でも粗い。
「DX市場」など、ほぼ何も言っていないのと同じだ。

市場は、業界名で選ぶものではない
勝てる条件で切るものだ

--

3. 本当に見るべきは「勝てる構造」


市場選定で本当に見るべきものは、
市場規模ではない。

勝てる構造があるかどうかだ。

大きく5つある。

① 課題が強いか

その課題は、

「あったら便利」なのか
「今すぐ解決したい」なのか。

ここで全てが変わる。

課題が弱い市場では、
営業コストが高くなり、
導入も遅く、継続も弱い。

最初に見るべきはニーズの広さではない。
痛みの深さだ。


② 代替が弱いか

その顧客は今、何で解決しているのか。

Excel
人力
外注
既存SaaS
何もしない

この代替が強い市場は、
思った以上に崩せない。

顧客は「不満」だけでは動かない。
乗り換える理由が必要になる。

見るべきは競合だけではない。
現状維持の強さだ。


③ 意思決定が早いか

誰が決めるのか。
何人が関わるのか。
導入に何ヶ月かかるのか。

この速度は極めて重要だ。

どれだけ魅力的な市場でも、
導入まで1年かかるなら、
初期フェーズでは資金が尽きる。

市場とは顧客数ではない。
キャッシュ化までの距離でもある。


④ 継続利用されるか

導入されても、
使われなければ意味がない。

日常業務に埋め込まれるか
頻度が高いか
やめると困るか
効果が可視化されるか

ここが弱い市場は、
LTVが伸びない。

市場選定は受注までではなく、
継続まで含めて見る必要がある。


⑤ 自社との適合があるか

最後に最重要なのがこれだ。

自社に顧客接点があるか
その業界理解があるか
営業できる人材がいるか
技術的に優位を作れるか
信用を取りやすいか

同じ市場でも、
A社には勝てるが、B社には勝てない。

市場に絶対的な良し悪しはない。

あるのは、自社との相性だけだ。


4. 市場選定の実務フレーム

実務では、次の順で見るといい。

① 課題で切る
まず業界で切らない。課題で切る。

人手不足で回らない
属人化で品質がぶれる
法規制対応が重い
営業管理ができていない
継続率が落ちている

最初に見るべきは顧客属性ではない。
課題の性質だ。

② 課題が強い顧客群を探す

同じ課題でも、
強く困っている顧客と、
そうでない顧客がいる。

すでに予算がある
失敗コストが高い
担当者が評価される
放置できない
代替手段に限界がある

ここで初めて、
「誰から取るか」が見えてくる。


③ 導入障壁で削る

次に削る。

規制
セキュリティ
商習慣
稟議の長さ
既存システム連携
オンボーディングの重さ

この段階で、
魅力はあるが今は取れない市場が落ちる。


④ 勝ち筋で絞る

最後に問う。

自分たちは、
なぜそこを取れるのか

安く作れるからか
速く提供できるからか
顧客理解が深いからか
特定チャネルを持っているからか
既存資産を転用できるからか

この理由が言えないなら、
その市場はまだ選べていない。


⑤ 最初の一点を決める

そして最後に決める。

最初にどの市場断面から入るか
いきなり広く取りに行かない。

まずは、

課題が強い
導入が早い
継続しやすい
自社が勝ちやすい

この条件が最も揃う一点を取る。

市場とは面で見るものではない。
最初は点で刺すものだ。

ここで欲張ると、ほぼ負ける。

広く取りに行くほど、
提案は薄くなり、
学習は遅くなり、
勝ち筋はぼやける。

最初に必要なのは、網ではない。
鋭い一本針だ。

--

5. どこを取るかで、経営はほぼ決まる


市場選定は、
単なる初期設定ではない。
経営そのものだ。

どこを取るかで、

顧客が決まる
価格が決まる
プロダクトが決まる
営業方法が決まる
必要な人材が決まる
資金の持ち方が決まる

つまり、
どこを取るかで、ほぼ全部決まる。

にもかかわらず、
多くの会社はここを雑に決める。

市場規模、
成長率、
流行、
投資家受け。

その結果、
「誰にも強く刺さらない事業」になる。

逆に、

最初の市場選定が鋭い会社は強い。

市場全体では小さく見えてもいい。

最初の断面で圧倒的に勝てれば、
そこから周辺市場へ広げられる。

重要なのは、
広い市場を知ることではない。

狭く勝てる場所を見つけることだ。

--

結論


市場選定とは、
「大きい市場を探すこと」ではない。

勝てる条件が揃う場所を切り出すことだ。

市場があるから参入するのではない。
取れる構造があるから参入する。

だから最初に問うべきはこれだ。

この市場は大きいか?ではない。
この市場で、自分たちは勝てるか?

市場とは、眺めるものではない。
切るものだ。

そして、
最初に切る場所で勝負はほぼ決まる。




次回予告


【市場シリーズ】


① TAM(幻想) ← 前回

② 市場選定(どこを取るか) ← 今回

③ SAM / SOM(どう取るか)

④ プロダクト(何で取るか)

⑤ ゲームチェンジ(ルールを変える)

⑥ 総括(市場とは何か)


次回は、SAM / SOM。

どこまで届くのか。
どれだけ取れるのか。
どうやって取りに行くのか。

市場は、見積もるだけでは意味がない。
取り方に落ちた瞬間、初めて戦略になる。

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