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失敗|センスは外した判断を見直したときに磨かれる

失敗


前回は、顧客について書いた。

前回の記事はこちら

数字の奥には、必ず顧客がいる。

売上が伸びたとしても、それが誰の、どんな不満から生まれた売上なのかを見なければいけない。

解約が増えたとしても、それがどこで価値を感じなくなった結果なのかを見なければいけない。

顧客の財布と不満を見ないまま事業を進めると、売上は伸びているように見えても、会社は静かにズレていく。

では、そのズレにいつ気づくのか。

理想を言えば、手遅れになる前に気づきたい。
でも、現実には外すことがある。

見誤る。
読み違える。
遅れる。
決めきれない。

取りに行くべきではない売上を取りに行く。
任せるべきではない人に任せる。
切るべきタイミングで切れない。
止めるべき施策を続けてしまう。

経営も事業も、外さずに進めることはできない。
大事なのは、外したあとだ。

センスは、当てた経験だけでは磨かれない。
外した判断を見直したときに磨かれる。


失敗を反省で終わらせると、何も残らない


失敗したあとに、多くの人は反省する。

もっと早く動けばよかった。
もっと確認すればよかった。
もっと現場を見ればよかった。
もっと顧客の声を聞けばよかった。
もっと数字を見ればよかった。
もっと強く言えばよかった。

もちろん、反省は必要だ。
でも、反省だけでは次に使えない。

「あのとき甘かった」
「あのとき見えていなかった」
「あのとき判断が遅かった」

ここで終わると、ただの後悔になる。

後悔は重い。
でも、判断基準にはならない。

大事なのは、何を見落としたのかを特定することだ。

どの数字を見ていなかったのか。
どの顧客の反応を軽く見たのか。
どの会議の違和感を流したのか。
どの責任の曖昧さを放置したのか。
どの前提を信じすぎたのか。
どのタイミングで、すでにズレは出ていたのか。

ここまで見直して、初めて失敗は次の判断に使える。

失敗は、勝手に経験になるわけではない。
分解したときにだけ、経験になる。


外した判断には、必ず見えていたはずの前兆がある

失敗したあとに振り返ると、だいたい前兆がある。

当時は小さく見えた。
忙しくて流した。
大きな問題ではないと思った。
まだ大丈夫だと判断した。
誰かが拾ってくれると思った。
次の会議で確認すればいいと思った。

でも、後から見ると、そこにサインが出ていたことに気づく。

顧客の反応が薄くなっていた。
営業が無理な条件で受注していた。
会議で反対意見が出なくなっていた。
チャットの返信が遅くなっていた。
マネージャーが判断を避けていた。
現場が「大丈夫です」と言う回数が増えていた。
数字は達成していたが、粗利が落ちていた。
売上は伸びていたが、キャッシュが残っていなかった。

失敗は突然起きたように見える。
でも、多くの場合、事前にズレは出ている。

問題は、そのズレを当時の自分がどう解釈したかだ。

一時的なものだと思ったのか。
現場の頑張りで吸収できると思ったのか。
数字が良いから問題ないと思ったのか。
顧客の言葉をそのまま信じたのか。
優秀な人を入れれば解決すると思ったのか。
会議を増やせば管理できると思ったのか。

失敗を見直すとは、起きた結果を見ることではない。
結果が出る前に、何を見落としていたのかを見ることだ。

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成功体験の方が、失敗より危ないことがある


失敗は痛い。
でも、実は成功体験の方が危ないことがある。

なぜなら、成功体験は自分を正しく見せるからだ。

売上が伸びた。
顧客が増えた。
採用できた。
資金調達できた。
新規事業が立ち上がった。
大きな顧客を取れた。
会議で方針が通った。

うまくいくと、人は理由を自分たちに寄せて考えやすい。

戦略が良かった。
営業力が強かった。
プロダクトが刺さった。
組織が強くなった。
市場を読めていた。
自分の判断が正しかった。

もちろん、本当にそういう場合もある。
でも、成功の中には偶然も混ざる。

市場が伸びていただけかもしれない。
競合が弱かっただけかもしれない。
顧客側の予算が余っていただけかもしれない。
タイミングが良かっただけかもしれない。
現場が無理をして吸収していただけかもしれない。
安く売ったから取れただけかもしれない。
一部の優秀な人に依存していただけかもしれない。

ここを見ないと、次に同じ判断を外す。

成功体験をそのまま再現しようとして、会社を壊すことがある。

前回うまくいったから、今回も同じようにやる。
前回採れたから、今回も採用を増やす。
前回売れたから、今回も同じ顧客層に売る。
前回伸びたから、今回も同じKPIを追う。
前回乗り切れたから、今回も現場が吸収できると思う。
でも、文脈は変わっている。

成功体験を疑えない人は、成功したあとに判断を外す。


センスがある人は、失敗だけでなく成功も分解する

なぜうまくいったのか。
何が再現できるのか。
何は偶然だったのか。
どの前提が変わると通用しなくなるのか。

そこまで見ている。

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失敗を人の問題にすると、構造が見えなくなる


失敗したとき、原因を人に置きたくなる。

担当者が弱かった。
マネージャーが見ていなかった。
営業が甘かった。
現場が動かなかった。
管理部門が止めなかった。
経営が決めなかった。

もちろん、人の問題があることもある。
でも、すぐに人で片づけると、構造が見えなくなる。

担当者が弱かったのではなく、判断基準を渡していなかったのかもしれない。

マネージャーが見ていなかったのではなく、見るべき数字が設計されていなかったのかもしれない。

営業が甘かったのではなく、受注基準が曖昧だったのかもしれない。

現場が動かなかったのではなく、決定と実行がつながっていなかったのかもしれない。

管理部門が止めなかったのではなく、止める権限がなかったのかもしれない。

経営が決めなかったのではなく、判断材料が上がる構造になっていなかったのかもしれない。

人を責めると、話は早く終わる。
でも、再発防止にはならない。

同じ構造を放置すれば、別の人でも同じ失敗が起きる。


失敗を見直すときは、まず人を責めるのではなく、構造を見る

誰が悪かったのかではない。
なぜ、その人がそう動く構造になっていたのか。

そこまで見なければ、次の判断は変わらない。

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外した判断は、当時の前提まで戻って見直す


失敗を見直すときに重要なのは、当時の前提まで戻ることだ。
結果だけ見れば、何とでも言える。

あの市場に入るべきではなかった。
あの顧客を取るべきではなかった。
あの人に任せるべきではなかった。
あの施策は止めるべきだった。
あのタイミングで値上げすべきだった。
あの会議体は変えるべきだった。

後から言うのは簡単だ。
でも、判断基準を作るには、
当時何を見て、何を信じて、何を見落としていたのかを見なければいけない。

当時、どの数字を見ていたのか。
どの顧客の声を信じていたのか。
どの市場前提を置いていたのか。
どの組織体制なら実行できると思っていたのか。
どのリスクを小さいと判断したのか。
どの違和感を流したのか。
どの選択肢を捨てなかったのか。

ここまで戻る。


失敗は、結果から見ると明らかに見える

でも、当時は明らかではなかった。

だからこそ、当時の判断材料を見直す必要がある。

外した判断を見直すとは、自分を責めることではない。

当時の自分が、どの情報で、どの前提を置き、どこで間違えたのかを確認することだ。

それをやらないと、次も同じ場所で外す。

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顧客を見誤った失敗は、かなり多い


事業の失敗には、顧客を見誤ったものが多い。

顧客が欲しいと言った。
だから作った。

顧客が検討すると言った。
だから見込みだと思った。

顧客が価格に反応した。
だから値下げすれば売れると思った。

顧客から要望が出た。
だから機能追加すれば継続すると考えた。

でも、実際には違うことがある。

欲しいと言っただけで、払う理由はなかった。
検討すると言っただけで、優先順位は低かった。
価格が高いと言ったが、本当は価値が伝わっていなかった。
機能要望はあったが、解約理由は別のところにあった。

顧客の言葉を聞くことは大事だ。
でも、言葉をそのまま信じると外す。

顧客が何を言ったか。
ではなく、なぜそう言ったのか。

顧客は何に困っていたのか。
何にお金を払う理由があったのか。
誰が決裁するのか。
社内でどう説明するのか。
導入後に何が面倒なのか。
なぜ今買わないのか。
なぜ継続しないのか。

そこまで見なければいけない。

顧客を見誤った失敗は痛い。
でも、その失敗を分解できれば、次に顧客を見る精度は上がる。

そこを残せば、判断基準になる。

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数字を見誤った失敗も、判断基準になる


数字を見誤る失敗も多い。

売上が伸びているから大丈夫だと思った。
でも、粗利が落ちていた。

利益が出ているから問題ないと思った。
でも、キャッシュが減っていた。

解約率が低いから安心していた。
でも、顧客の利用頻度は落ちていた。

商談数が増えているから営業は順調だと思った。
でも、受注率と単価は下がっていた。

採用数が増えているから組織は強くなっていると思った。
でも、マネジメント体制は追いついていなかった。

数字は見ていた。
でも、見る数字を間違えていた。

数字同士を並べて見ていなかった。
現場の空気と照らしていなかった。
平均に隠れた歪みを見ていなかった。
PLとキャッシュのズレを見ていなかった。

こういう失敗は、非常に価値がある。
なぜなら、次に見るべき数字が変わるからだ。

売上だけではなく、粗利を見る。
利益だけではなく、キャッシュを見る。
商談数だけではなく、受注率と単価を見る。
採用数だけではなく、定着と責任設計を見る。
会議数だけではなく、決定数と実行率を見る。

数字を見誤った失敗は、次の数字の見方を変えてくれる。
そこまで見直せば、失敗は無駄にならない。


組織を見誤った失敗は、遅れて効いてくる

組織の失敗は、すぐには表に出ない。
だから怖い。

優秀な人を採った。
役職をつけた。
会議にも出した。
数字も持たせた。
任せているつもりだった。

でも、
しばらくして崩れる。
責任が曖昧になる。
既存メンバーとの間にズレが出る。
会議が増える。
決定が遅くなる。
現場が依存する。
マネージャーが判断を避ける。
期待値が合わず、退職者が出る。

このとき、人の問題に見える。
でも、実際には設計の問題であることが多い。

ここが曖昧なまま人を入れると、優秀な人でも機能しない。

組織を見誤った失敗は、後から効いてくる。
そして、かなり痛い。
でも、それを分解すれば、次に人や組織を見る目が変わる。

組織の失敗は、構造化できれば強い判断基準になる。

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失敗を隠す会社は、センスが磨かれない


失敗を見直すには、失敗を見える場所に出す必要がある。
でも、多くの会社では失敗が隠れる。

失敗を出すと責められる。
報告すると面倒になる。
問題を出すと評価が下がる。
責任を問われる。
次から任せてもらえなくなる。

そういう空気があると、失敗は表に出なくなる。

現場は報告を整える。
悪い情報を遅らせる。
本当の理由をぼかす。
原因を外部要因にする。
会議では無難な説明だけをする。

そうなると、会社は学べない。

失敗から学ぶには、失敗を責める前に、失敗を見える化しなければいけない。

何が起きたのか。
どの前提が外れたのか。
どの判断が遅れたのか。
どの違和感を流したのか。
次に何を変えるのか。

これを話せる状態が必要だ。

もちろん、責任を曖昧にしていいわけではない。
ただ、責任追及だけが強い会社では、失敗が隠れる。

失敗が隠れる会社では、判断基準が蓄積されない。
判断基準が蓄積されない会社では、同じ失敗が繰り返される。

センスは、個人の中だけで磨かれるものではない。

会社として失敗をどう扱うかでも磨かれる。

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失敗は、次の打ち手に変えて初めて意味がある


失敗を振り返るだけでは足りない。
次の打ち手に変えなければ意味がない。

顧客を見誤ったなら、商談で確認する項目を変える。

買わない理由を拾う。
決裁者を早めに確認する。
導入負荷を見積もる。
継続理由を追う。

数字を見誤ったなら、見る指標を変える。

売上だけでなく粗利を見る。
PLだけでなくキャッシュを見る。
平均だけでなく顧客別に見る。
KPIだけでなく行動の質を見る。

組織を見誤ったなら、任せ方を変える。

役割を明確にする。
責任範囲を決める。
権限を渡す。
フィードバックの仕組みを作る。
会議体を変える。

会議が空転したなら、会議の設計を変える。

何を決める会議かを決める。
決める人を明確にする。
持ち帰りを減らす。
次回までの変化を決める。

失敗は、次の動きに変えて初めて意味を持つ。

反省して終わりではない。
謝って終わりでもない。
振り返って終わりでもない。

何を変えるのか。
そこまで決める。

ビジネスセンスは、失敗した量では磨かれない。
失敗を次の判断に変えた量で磨かれる。

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明日使える基準


失敗を見直すときは、感情で終わらせない方がいい。

見るべきは、次の5つ。


1つ目は、当時の前提

何を信じていたのか。
どの市場前提を置いていたのか。
どの顧客像を想定していたのか。
どの数字を見ていたのか。
どの組織体制なら実行できると思っていたのか。

当時の前提まで戻る。


2つ目は、見落とした違和感

どの数字がズレていたのか。
どの顧客反応が変わっていたのか。
どの会議が空転していたのか。
どの現場の声を流したのか。
どの沈黙を安定だと勘違いしたのか。

結果が出る前のサインを見る。


3つ目は、原因を人で終わらせていないか

担当者の問題にしていないか。
マネージャーの問題にしていないか。
営業の問題にしていないか。
現場の問題にしていないか。

その人がそう動く構造になっていなかったかを見る。


4つ目は、次に見るもの

次からどの数字を見るのか。
どの顧客の反応を見るのか。
どの会議の変化を見るのか。
どの責任設計を見るのか。
どの前提を疑うのか。

失敗から次の観察項目を作る。


5つ目は、次に変えること

KPIを変えるのか。
受注基準を変えるのか。
顧客確認を変えるのか。
会議体を変えるのか。
責任範囲を変えるのか。
やめるものを決めるのか。

振り返りを、次の打ち手に変える。

失敗は、起きたことそのものより、見直し方で価値が変わる。

感情で終わらせれば、後悔になる。
人のせいで終わらせれば、再発する。
構造まで見れば、判断基準になる。
次の打ち手に変えれば、経験になる。

センスは、外さない人に宿るのではない。
外した判断を見直し、次に使える形に変えた人の中に残る。


失敗したあと、もう一度動くために何を見るか。
その考え方は、過去にこちらの記事でも書きました。

「TRIP|失敗したあと、もう一度動くための実践法」

ビジネスセンスは、成功体験だけでは磨かれません。

外した判断を見直し、何を見落とし、次に何を変えるかを決めたときに、判断基準として残ります。

次回は、最終回として「判断」について書きます。

最後に残るのは、選ぶ力ではなく捨てる覚悟である。

このテーマに少しでも引っかかった方は、スキやフォローをしてもらえると嬉しいです。

次回は、ビジネスセンスをどう意思決定に変えるのかを、最後にまとめます。

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