【市場】③SAM / SOMは「市場規模」ではない。なぜ“取れる範囲”を間違えると、戦略が崩壊するのか
前回書いた通り、
市場選定とは「大きい市場を探すこと」ではない。
勝てる条件が揃う場所を切り出すことだ。
前回の記事はこちら
市場を切り出したあとに何をするのか
答えは一つ。
どう取るかを決める
ここで初めて出てくるのが、
SAM / SOM
しかし、多くの会社はここでも間違える。
SAM / SOMを、
ただの市場規模の分類として使う。
TAMは大きい市場
SAMは少し狭い市場
SOMはもっと狭い市場
この理解だけでは足りない。
それでは、
ただ市場を小さく切っているだけだ。
本当に重要なのは、
どこまで届くのか
どこから取るのか
どの順番で広げるのか
つまり、SAM / SOMとは
市場の説明ではない。
攻め方の設計図だ。
市場を選ぶだけでは、まだ戦略ではない。
取り方に落ちた瞬間、初めて戦略になる。
1. 市場を選んでも、まだ戦略ではない
前回、市場選定の話を書いた。
どの課題を持つ顧客群を狙うか。
どこなら勝てる条件が揃うか。
どこを最初に取るか。
ここまでは重要だ。
しかし、ここで止まる会社が多い。
「この市場でいきます」
その宣言だけで、前に進んだ気になる。
しかし実際には、そこから先が本番だ。
同じ市場を選んでも、
取り方が違えば結果は全く変わる。
広く取りにいって全部薄くなる会社。
狭く深く入り、足場を作る会社。
前者は、
顧客理解も価値訴求も曖昧になる。
後者は、
刺さる顧客を起点に勝ち筋を作る。
差を生むのは、
市場の名前ではない。
取り方だ。
つまりSAM / SOMで決めるべきことは、
市場規模そのものではない。
自分たちが、現実にどこまで届き、
最初にどこを取り切るか
ここを間違えると、
営業計画も、
プロダクト要求も、
採用も、
資金計画も
全部ズレる。
--
2. SAM / SOMとは何か
まず整理する。
TAMは、理論上の最大市場規模
制約を無視した「夢の最大値」だった。
ではSAMは何か。
SAM(Serviceable Available Market)
SAMは自分たちが現実に届けられる市場
ここでいう「届けられる」とは、
単に顧客が存在することではない。
リーチできる
提案できる
導入できる
運用できる
この条件が揃って初めて、SAMになる。
そしてSOM。
SOM(Serviceable Obtainable Market)
SOMは実際に最初に取りにいく市場
ここが重要だ。
SOMは「理論上取れそうな範囲」ではない。
最初の資源で、現実に勝ち切る範囲だ。
つまり、
TAM = 理想の最大値
SAM = 届く範囲
SOM = 取り切る範囲
この順で、抽象から現実に落ちていく。
多くの会社は、
TAMで夢を見て、
SAMで安心し、
SOMで欲張る。
しかし、実務で重要なのは逆だ。
最初に見るべきは、
どこまで小さくすると勝てるか
だ。
--
3. 多くの会社がSAM / SOMで間違えること
多くの会社は、SAM / SOMを作るときにこう考える。
「この業界の中堅企業を狙います」
「この地域の企業が対象です」
「この予算帯まで含めます」
一見、それっぽい。
しかし、この切り方だけではまだ粗い。
なぜか。
“届く”と“取れる”は違うからだ。
営業対象に入る。
紹介をもらえる。
商談もできる。
それでも取れない市場はいくらでもある。
理由は単純だ。
課題が弱い
意思決定が遅い
代替が強い
導入が重い
継続しない
LTVよりCACが先に膨らむ
つまり、
SAM / SOMを地理や業種だけで切ると、
取り方が見えない。
もう一つ、よくある間違いがある。
SOMを「シェア目標」にしてしまうことだ。
市場の5%を取る
3年で10%を狙う
こういう話はよく出る。
しかし、その数字自体には意味がない。
重要なのは、その5%を
どの顧客群から
どのチャネルで
どんな提案で
どの速度で
取るのかだ。
SOMとは、数字ではない。
最初に勝つ地形だ。
--
4. SAMは「届く市場」、SOMは「最初に取る市場」
SAM / SOMを実務で使うなら、
この理解で十分だ。
SAMは、届く市場
SOMは、最初に取る市場
この2つは似ているようで、全く違う。
SAMでは、
「営業可能か」
「導入可能か」
「運用可能か」
を見る。
つまり、供給側の現実だ。
一方SOMでは、
「今の資源で勝ち切れるか」
「最初の実績を作れるか」
「学習速度が上がるか」
を見る。
つまり、攻め順の現実だ。
ここで重要なのは、
SOMは小さいほど弱い、
ではないことだ。
むしろ逆だ。
SOMが曖昧に広い会社ほど弱い。
なぜなら、
誰にでも売ろうとする
結果、誰にも刺さらない
提案が薄くなる
プロダクト要求が散る
学習が遅くなる
からだ。
逆に、SOMが鋭い会社は強い。
最初の顧客像が明確
課題が深い
提案が具体
導入が早い
リファレンスが溜まる
周辺市場へ広げやすい
つまりSOMとは、
「小さく考えること」ではない。
「勝てる順番で考えること」
だ。
--
5. SAM / SOMの実務フレーム
実務では、次の順で落とすといい。
① SAMを“届けられる条件”で切る
まず、対象顧客が存在するだけでは足りない。
現実に届けられる条件で削る。
- 自社が営業できるチャネルがあるか
- 商談化できる接点があるか
- 導入支援を回せるか
- カスタマーサクセスを成立させられるか
- 法規制やセキュリティ要件を満たせるか
この段階で、
理論上魅力があっても、
今は届かない市場が落ちる。
② SAMの中で“痛みが深い層”を探す
届くだけでは足りない。
その中でも、強く困っている層を見つける。
- 放置コストが高い
- 担当者評価に直結する
- 既存手段が限界
- 予算化しやすい
- 導入理由を説明しやすい
ここで、売れる市場ではなく、
早く刺さる市場が見えてくる。
③ SOMを“勝ち切れる単位”まで絞る
次に問う。
最初に、どの顧客群を取り切るのか
ここで欲張らない。
業界をまたがない
ユースケースを増やしすぎない
価格帯を広げすぎない
導入要件を増やしすぎない
最初のSOMは、
営業・導入・継続・紹介が回る単位まで絞るべきだ。
④ 取った後の拡張順を決める
SOMは孤立した一点ではない。
そこからどこへ広げるかまで含めて設計する。
- 同じ課題の隣接顧客へ広げる
- 同じ顧客の別部門へ広げる
- 同じ導入資産で別用途へ広げる
- 同じ実績が効く近接業界へ広げる
ここまで見えていれば、
SOMは単なる狭い市場ではなく、
拡張の起点になる。
--
6. 取り方に落ちた瞬間、戦略になる
市場を選ぶだけでは、まだ曖昧だ。
しかし、
どこまで届くか
最初にどこを取るか
どう広げるか
ここまで落ちると、
急に経営が具体になる。
必要な営業人数が見える。
必要な機能開発が見える。
オンボーディング負荷が見える。
必要資金と回収速度が見える。
つまり、SAM / SOMとは
市場規模の話ではない。
資源配分の話
だ。
どこに営業を張るか
何を先に作るか
どの顧客を断るか
どこで実績を作るか
ここまで決まって、初めて戦略になる。
逆に言えば、
SAM / SOMが曖昧な会社は、
全部が曖昧になる。
顧客も広い。
提案も広い。
開発も広い。
しかし、どこにも勝てない。
重要なのは、
大きく見せることではない。
狭く勝つことだ。
その狭さが、次の広さを作る。
--
結論
SAM / SOMは、
市場規模を整理するための言葉ではない。
取り方を決めるための言葉だ。
SAMは、届く市場。
SOMは、最初に取る市場。
ここで本当に見るべきなのは、
市場の広さではない。
勝てる順番だ。
だから問うべきはこれだ。
どれだけ市場があるか?ではない。
今の自分たちが、どこなら勝ち切れるか?
市場は、選んだだけでは意味がない。
取り方に落ちた瞬間、初めて武器になる。
次回予告
【市場シリーズ】
① TAM(幻想)
② 市場選定(どこを取るか)
③ SAM / SOM(どう取るか) ← 今回
④ プロダクト(何で取るか)
⑤ ゲームチェンジ(ルールを変える)
⑥ 総括(市場とは何か)
次回は、プロダクト。
市場が決まり、取り方も決まった。
では最後に問うべきは一つだ。
何で取るのか
プロダクトは、作りたいものを作る話ではない。
市場を取り切るための武器を決める話だ。
いいなと思ったら応援しよう!
この記事は noteマネー にピックアップされました

