見出し画像

「伝えました」で仕事を終わらせる人は、報連相を理解していない

報連相の本質


報連相は、伝言ゲームではない。

メッセージを送った。
チャットに書いた。
上司に話した。

だから、自分は報連相をした。
そう考えている人は多い。

だが、本当の意味での報連相は、情報を相手に渡すことではない。
相手が状況を理解し、必要な判断を行い、次の行動を取れる状態をつくることだ。

問題がすべて終わったあとに結果だけを伝える。
背景も経過も書かず、起きた事実を一行だけ送る。
デッドラインの直前になってから「どうすればいいですか」と聞く。

本人は伝えたつもりでも、周囲には判断するための時間も情報も残っていない。

それは報連相ではない。

自分が情報を持っていた責任を、最後に相手へ移しただけである。


他人の信用で始まった仕事なのに、途中経過を返さない


私が特にありえないと思うのは、
誰かに案件や業者を紹介してもらったあと、その人に経過を返さないことだ。

たとえば、月曜日に知人から案件を紹介してもらったとする。

紹介者は先方に連絡し、
自分たちのことを説明し、
商談の機会をつくってくれた。

火曜日には先方と面談し、課題を聞き、見積もりを提出することになった。
ところが、その後、紹介者には何も伝えない。

金曜日になって紹介者から、
「先方とは話せましたか」

と聞かれ、ようやく、
「火曜日に話しました。いま検討中です」

と返す。
これは連絡したことにはならない。

火曜日に面談したのであれば、
その日か、遅くとも翌日には現在地を返すべきだった。

「本日、先方と面談しました。先方は〇〇に課題を感じており、こちらからは△△を提案する予定です。今週中に見積もりを提出し、来週前半には方向性が決まる見込みです」

この程度の情報があれば、紹介者は状況を把握できる。

最終的に受注したのか、失注したのかを伝えるのは当然である。
だが、結果だけを報告すればいいわけではない。

紹介者は、単に連絡先を渡したのではない。
自分の信用を使って、二者をつないでいる。

紹介を受けた側の対応が悪ければ、傷つくのはその会社の信用だけではない。
紹介者の判断や見る目まで疑われる。

先方から、
「紹介してもらった会社とは、その後どうなっていますか」

と聞かれることもある。
そのとき、紹介者が何も答えられない状態をつくるべきではない。

業者を紹介してもらった場合も同じだ。

業者をつないでもらい、価格交渉までしてもらう。
その後、自分たちでアポイントを取り、直接話を進める。

それにもかかわらず、
アポイントを取ったことも、
何を話したのかも、
今後どうするつもりなのかも返さない。

紹介者は、電話番号を転送しただけではない。
自分が築いてきた関係を使い、相手に話を通し、場合によっては通常より良い条件まで引き出している。

その経過を返さないのは、単なる連絡漏れではない。
他人の時間と信用を使った自覚がない。


誰かの信用で始まった仕事には、途中経過を返す責任がある

報連相は、上司にだけ行うものではない。

自分の仕事に関与した人を、途中で情報の外に置かないことも報連相である。

--

報告は、相手が介入できるうちに行う


報告を、完了した結果を伝える行為だと思っている人がいる。

だが、仕事において価値があるのは、終わったあとの説明より、進行中の異変を早く上げることだ。

たとえば、金曜日の17時が納期の案件がある。

水曜日の正午時点で進捗は60%。
当初の予定より4時間遅れており、追加の修正も発生している。

この段階で報告すれば、まだ選択肢は残っている。

応援を一人追加する。
優先順位を変える。
提出範囲を絞る。
顧客に事情を説明し、一部だけ納期を調整する。

報告するなら、次のようになる。

「現在の進捗は60%で、当初予定より4時間遅れています。このままでは金曜日17時の提出に間に合わない可能性があります。応援を一人入れるか、提出範囲を絞る必要があります。現状では、提出範囲を絞る案が最も実行可能だと考えています」

これなら上司は判断できる。

ところが、自分で何とかしようとして情報を止める人がいる。

説明がまとまってから報告しようとする。
遅延が確定するまで待つ。
悪い報告をしたくないという感情を優先する。

そして、金曜日の16時になってから、
「今日中には終わりません」

と伝える。

その時点では、人を追加しても間に合わない。
提出範囲を変えるにも遅い。
顧客に説明する時間もほとんど残っていない。

これは報告というより、手遅れになった結果の共有である。

もちろん、突発的なトラブルなど、発生後にしか伝えられないこともある。
その場合も、原因の特定を待つ必要はない。

「詳細は確認中ですが、影響が大きいため先に共有します。現時点で確認できている事実はここまでです」

と、まず伝えればいい。

報告に必要なのは、完成された説明ではない。
相手が介入できる時間を残すことである。

--

連絡は、事実ではなく文脈を渡す


連絡を、チャットやメールを送ることだと思っている人もいる。

「先方と話しました」
「修正依頼が来ました」
「業者と調整中です」

確かに、事実は送られている。
しかし、この情報だけでは受け取った側は何も判断できない。

何を話したのか。
なぜ修正が発生したのか。
こちらに原因があるのか。
納期や費用への影響はあるのか。
次に誰が何をするのか。

受け取った側が、これらを一つずつ質問しなければならないのであれば、必要な連絡は終わっていない。

すべての会話を長文で説明する必要はない。
必要なのは、相手が状況を理解するための文脈である。

たとえば、業者と話したのであれば、こう伝える。

「本日、業者と打ち合わせをしました。紹介時に調整いただいた価格で対応可能とのことです。ただし、納期を一週間早める場合は追加費用が発生します。現在のスケジュールなら追加費用は不要なので、その条件で発注する方向です。社内確認後、明日までに最終回答します」

ここまで伝われば、紹介者も上司も現在地を理解できる。
必要なら、その場で助言や修正もできる。

連絡とは、起きた事実を知らせることではない。
背景、経過、現在地、今後の動きを渡し、関係者の認識を揃えることだ。

--

相談は、選択肢が残っているうちに行う


相談にも、適切なタイミングがある。

納期は明日。
予算はすでに使い切った。
顧客との関係も悪化している。
やり直す時間もない。

その段階で上司に、
「どうすればいいですか」

と聞いても、残されている選択肢は少ない。

謝罪する。
延期を依頼する。
損失を受け入れる。
責任者が火消しに入る。

もはや問題を解決する相談ではなく、発生した損害をどう処理するかという話になっている。


相談は、複数の打ち手が残っている段階で行うから意味がある

自分では判断基準がわからない。
二つの案で迷っている。
リスクを一人では評価できない。
どの情報を集めればいいかわからない。

その時点で、他者の判断を借りる。

正解を持っていく必要はない。
だが、何も考えずに問題を丸投げするのは違う。

現在の状況はどうなっているのか。
いつまでに判断が必要なのか。
自分は何に迷っているのか。
どのような選択肢を考えたのか。
現時点ではどの案が良いと思っているのか。
相手に何を判断してほしいのか。

ここまで整理すれば、相談を受ける側も考えられる。
選択肢そのものが思いつかないのであれば、

「判断するために何を確認すればいいのかわかりません」
「結論ではなく、考え方の順番から相談したいです」

と伝えればいい。

相談とは、答えをもらう行為ではない。
自分の思考がどこで止まり、何を借りたいのかを明らかにする行為である。

--

報連相ができない人は、自分の作業しか見ていない


報連相ができない原因を、話し方や文章力だけの問題にしてはいけない。

多くの場合、仕事の見方そのものに問題がある。

自分がメッセージを送ったか。
自分の作業が終わったか。
自分が怒られずに済むか。

そこしか見ていない。
だが、仕事は自分一人では完結しない。

上司は、上がってきた情報をもとに判断する。
別の部署は次の準備を進める。
取引先は社内で日程や予算を調整し、業者は人員や作業時間を確保する。
紹介者は、自分の信用を背負って関係をつないでいる。


一つの情報が止まると、複数の人の判断と行動が止まる

「伝えました」という言葉は、自分を守るには便利かもしれない。

しかし、相手が理解できていなければ意味がない。
判断する時間が残っていなければ遅い。
次の行動につながっていなければ、仕事は前に進んでいない。

--

報連相の基準は、送信したかどうかではない


必要な人が、必要なタイミングで、必要な判断をできたか。
ここにある。


上司が情報を止めていることもある

一方で、報連相を部下だけの責任にするのも間違っている。

悪い報告を受けた瞬間に怒る。
途中経過を伝えると「結論だけ言え」と切る。
相談すると「それくらい自分で考えろ」と突き返す。

このような上司の下では、情報は早く上がらなくなる。

部下は問題が確定するまで黙り、怒られない説明を作ってから報告する。
自分だけで解決しようとして時間を使い、完全に行き詰まってから相談するようになる。

早い報告を求めるのであれば、上司は未確定の情報も受け取らなければならない。


異変を早く上げた人を責めず、相談されたときには答えだけでなく判断基準を返す

どの状態になったら報告するのか。
誰に何を連絡するのか。
どのデッドラインより前に相談するのか。

こうした基準を決めることも、マネジメントの仕事である。

報連相を、個人の気遣いやコミュニケーション能力だけに依存させてはいけない。

--

明日から置く四つの問い


報告する前に、こう考える。
いま伝えれば、相手はまだ介入できるか。

連絡する前には、
この情報だけで、相手は状況を理解し、次に動けるか。

相談する前には、
まだ複数の選択肢が残っているか。

そして、誰かの紹介によって始まった仕事では、
誰の時間と信用を使って、この話が始まったのか。

介入できない段階なら、報告が遅い。
追加質問をしなければ状況がわからないなら、連絡が足りない。
選択肢が消えたあとなら、相談とは言えない。
紹介者が経過を説明できない状態なら、他人の信用の扱い方を間違えている。


この記事で残したいことは、ひとつ

報連相とは、言葉を送ることではない。
関係者の判断、行動、信用を止めないことである。

「伝えました」で仕事を終わらせるのではなく、
相手が理解できたか、
判断できたか、
次に動けたかまで考える。

そこまでできて、初めて報連相になる。

報連相が止まる背景には、本人の意識だけではなく、上司が情報を受け取る仕組みの問題もあります。

部下の動き方を見ずに管理することで起きるマネジメントの崩れについて、こちらにまとめました。

「部下の動き方を見ていないから、マネジメントは壊れる─DMFCフレームワーク」

あなたの周囲では、「伝えた」という事実だけを残し、関係者を置き去りにする仕事が起きていないでしょうか。

本当はどの段階で、誰に、何を伝えるべきだったのか。

具体的な経験があれば、コメントで教えてください。

この記事が、仕事における情報の流れを見直すきっかけになったら、スキとフォローをお願いします。

いいなと思ったら応援しよう!