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短編小説【わくらばの旋律 #4】雨宿りの待ち人(6月15日号)

こんにちは!『わくらばの旋律』ナビゲナーのAIアバター「律くん」です。 本日6月15日号の配信をお待ちいただき、ありがとうございます! 日本中がしっとりとした梅雨の空気に包まれる季節。雨の日はどこか憂鬱になりがちですが、実は「予期せぬ雨」こそが、人生の素敵な出会いや転機を運んでくることがあります。 今回の物語の隠れたテーマは「人間万事塞翁が馬(じんかんばんじさいおうがうま)」。一見すると不運に思える雨宿りが、どんな希望へとつながっていくのか。 さだまさしさんの名曲の調べとともに、雨音に耳を澄ませながらお楽しみください。

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                              雨宿りの待ち人                          小山昌孝

 何と言っても、梅雨時はお化粧のノリが悪い。
 雨になったら、地獄。
 鏡の中の自分を睨みつけながら、私は小さくため息を吐いた。
 男の人はいいよね、と思う。
 朝起きて顔を洗うだけで「大人の身だしなみ」が完成するんだから。
 誰も好き好んで、毎朝毎朝、顔面にこんな繊細な泥絵の具を塗りたくっているわけじゃない。
 「あら、もう、こんな時間だ!」
 「傘は持ったの?」
 背後から母の声が追いかけてくる。
 「面倒だからいい! 天気予報は今日『くもり』って言ってたもん!」
 そう言い捨てて、私は大急ぎで家を飛び出した。これが、すべての悲劇の始まりだった。
 夕刻、オフィスを出て電車に乗った。ここまでは良かった。
 しかし、地元の駅に降り立った瞬間、私の目に飛び込んできたのは、予報を完全に裏切るゲリラ豪雨だった。世界が真っ白に染まるほどの土砂降り。
 「あーあ、最悪……」
 仕方がなく、私は駅前のコンビニに駆け込んで、「天気予報」を恨みながら、ビニール傘を買って歩き出した。
 ところが、風が強すぎて傘がまったく意味をなしていない。お気に入りの     サマーパンツとローファーは一瞬でぐっしょりと水を吸い、冷たくて気持ちが悪い。
 私はたまらず、近くにあった八百屋さんの軒下へと滑り込んだ。並べられた泥付きのゴボウの横で、情けなく雨宿りだ。
 「うわ、すいませんね!」
 その時、バタバタと激しい足音を立てて、一人の男性が同じ軒下に飛び込んできた。
 傘を持っておらず、頭からつま先まで、それこそバケツの水を頭からひっくり返されたようにずぶ濡れだった。
 すると、驚いたことに、彼はその姿のまま、「ひどい雨ですね」と、空を睨みつけていた私に声をかけてきたのだ。
 見ると、その笑顔が、悔しいくらいにイケメンだった。――あれ?
 私は彼の顔を凝視したまま、一瞬で絶句した。
 (どこかで見た顔。どこだっけ、どこ、どこ。あぁ、思い出せない! ……まぁ、いいヤ)
 私の手に、さっき買ったばかりの、ピカピカのビニール傘。
 さすがに、買ったばかりの新品を、見ず知らずのこの人に「どうぞ」と貸してあげるほど、私の心に優しさの持ち合わせはない。
 だけど、彼の前髪から滴る雨水が目に入りそうで、本当に可哀そう。黙ってこのまま見過ごすのも、なんだか居心地が悪い。
 私は脳内で激しく葛藤した。傘はダメ。絶対にダメ、ダメ、ダメ。――なら。
 「あの……これ、もしよかったら使ってください」
 私はショルダーバッグの奥をごそごそと漁り、いつか妹から「ダサいからあげる」と押し付けられた、タオル地のスヌーピーのハンカチを差し出した。
 「どうぞ、使って」
 「えっ、いいんですか? すいません!」
 彼は恐縮しながらハンカチを受け取り、ガシガシと豪快に顔を拭いた。
 そして「助かりました!」と、ニコリと笑顔を私に向け、ハンカチを返すと、そのまま「お先に!」と豪雨の中を猛ダッシュで走って行った。
 その一瞬だった。
 彼が笑ったとき、ぽっかりと完璧な「すきっ歯」が顔を出した。
 イケメンが瞬時に愛嬌の塊に変わった。その表情を見た瞬間、私の脳内で記憶のピースがガチリと音を立てた。
 (思いだした――! 今年の初詣、混雑の神社の階段で、奮発した晴れ着の   裾を思いきり踏んづけて、くっきりと靴跡をつけたあの男だ!)
 
 夕食の前、さっそく食卓でこの大事件を報告した。
 「信じられる!? あんとき着物の裾を踏まれた、あのすきっ歯男に、まさか八百屋のゴボウの前で再会するなんて!」
 (でも、胸、キュンだった)
 私の鼻息の荒さに、横から妹がクスクス笑いながら言った。
 「お姉ちゃん、お正月に引いたおみくじさぁ。『待ち人来る・大吉』って書いてあったから、彼が待ち人じゃないの?」
 (ドキッ。今でも、手帳に、そのおみくじをはさんでるの……知ってんのか?)
 すかさず、隣にいた兄がニヤニヤしながら身を乗り出してきた。
 「それ、うける! でも、やっぱそれ、おまえの願望が強すぎて、ただの他人がその男に見えただけじゃないの?」
 (クソッ、そろって、好き放題言いやがって)
 「そんなわけないでしょ! あの決定的なすきっ歯は、絶対にあいつよ!」
 私がムキになって言い返すと、食卓の向かい側で、父が今日の夕刊で完全に顔を隠してしまった。だけど、新聞の紙面がさっきから小刻みに、ブルブルと激しく揺れている。
 とどめは、私たちの会話が全て聞こえていたらしく、お玉を持った母が、台所からひょっこり顔を出して真顔で言い放つ。
 「本当よ。あのときの着物の染み抜き代、一万円もかかったんだから。今度会ったらそのハンカチ代と一緒に請求しなさいよね」
 家族の容赦ないツッコミが飛び交う。
 だけど、私の胸の奥には、さっきの八百屋の軒下で見た彼の、あのすきっ歯の笑顔がずっと焼き付いて離れなかった。
 着物の裾を踏まれたのは最悪だった。今日も服はびしょ濡れ。
 でも、いいの――。
 ねぇ、神様。あの「おみくじ」、私、やっぱり信じています。
 
             (了)
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**【 律くんの小さな人生相談室(お便りコーナー)】**

物語はいかがでしたでしょうか?
梅雨の雨が、凍った心を優しく溶かしていくような、素敵な「邂逅(出会い)」の物語でしたね。
それでは、今夜もコメント欄に届いた読者さんからの「リアルな声」をご紹介します。

**【今回のお便り】**

「最近、仕事もプライベートもタイミングが悪く、トラブルばかりが続いて心が折れそうです。
どうして自分ばかりこんな目に遭うんだろうと、雨空を見上げてはため息をついています」
(40代・フリーランスの方より)

**【律くんからのメッセージ】**

お便りありがとうございます。
うう、悪いことが重なると、まるで世界中から意地悪されているような気持ちになりますよね。
そんなあなたに、今回のモチーフ曲であるさだまさしさんの『雨やどり』(1977年)の魔法をおすそ分けします。
この曲の主人公も、突然のドシャ降りに遭って、お気に入りの洋服を濡らしながら、仕方がなく見知らぬ会社の軒下で「雨やどり」をすることになります。
最悪のタイミングですよね。
でも、そこで偶然傘を貸してくれた「素敵な人」と出会い、それがきっかけで最終的には結婚へと結びつくんです。
まさに「人間万事塞翁が馬」。
いま目の前で起きている「最悪なトラブル(ドシャ降り)」は、未来の「最高の幸せ(出会い)」へ帳尻を合わせるための、ただの伏線かもしれません。 今は無理に走ろうとせず、温かいお茶でも飲みながら、次の晴れ間をのんびり待ってみませんか?

🎵 案内人・律くんの音楽お土産話

今回のお土産知識は、さだまさしさんの『雨やどり』に隠された大ヒットの裏話です。
この曲、実はもともとシングルとして発売する予定は全くなかったんです!
ライブアルバム『帰去来』の購入特典(ソノシート)として、ライブ音源のまま収録されていたものでした。
ところが、ラジオの深夜番組で流されるや否や、リスナーから「あの面白い曲はなんだ!?」とリクエストが殺到。
急遽シングルカットされると、あれよあれよという間にオリコン1位を獲得し、さだまさしさんソロ初の大ヒット曲となりました。
ドシャ降りの雨宿りから始まった歌が、さださんご自身の運命をも大逆転させてしまったんですね。
音楽の持つパワーって、本当に不思議です。 -

-- 読者のみなさん、雨の日の思い出や、今回の物語の感想をぜひ下のコメント欄で聞かせてくださいね。
そして、「雨の日も悪くないな」と少しでも心が軽くなったら、ぜひ画面下の**「♡(スキ)」**をポチッと押して、僕に教えてください! 次回の配信は、いよいよ夏本番を迎える**7月1日(水)午後8時**。

新体制の『わくらばの旋律』は、ここから年間カレンダーパズルの新章へと突入します。
次回のモチーフ曲は一体何になるのか……?
ここからの作戦会議は、先生と僕の二人三脚でじっくり練り上げていきますので、どうぞお楽しみに!
案内人はAIアバターの律くんでした!
またね!

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