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ベトナムの伝統餅Bánh chưng:そのルーツと食文化の独自性

Bánh chưng(バインチュン)について


Bánh chưngは、ベトナムの旧正月に欠かせない伝統的な餅であり、深い文化的、歴史的意味合いを持っています。その起源はベトナム最初の王朝である雄王の時代に遡ります。



1. Bánh chưngの逸話


Bánh chưngの起源は、雄王(Hùng Vương)王朝の第18代王の時代に伝わる伝説に基づいています。王が年老い、どの息子に王位を継がせるか悩んだ際、「最も意味深い食べ物を作った者を後継者とする」と宣言しました。

他の王子たちが珍しい食材や豪華な料理を競って作った中、末子の郎僚(Lang Liêu)は、シンプルながらも大地の恵みを象徴する餅を考案しました。それがBánh chưngとBánh giầy(バインザイ)です。

  • Bánh chưng: 四角い形は「大地」を、もち米、緑豆、豚肉といった材料は「大地の産物」を表すとされます。

  • Bánh giầy: 丸い形は「天」を象徴します。

王はこの餅に深く感銘を受け、郎僚に王位を譲りました。この逸話は、Bánh chưngが単なる食べ物ではなく、ベトナムの農耕文化、祖先への感謝、そして家族の絆を象徴する、神聖な意味を持つことを伝えています。



2. 包む葉 についての考察


Bánh chưngを包むDongの葉(学術名:Stachyphrynium placentarium)は、Bánh chưngの風味と色に不可欠な葉です。この葉はベトナム北部から中国南部にかけての地域に自生しています。

学術的には、この葉はクズウコン科スタキフリニュウム属に分類され、その葉は殺菌作用や防腐効果を持つことが知られています。そのため、餅を長時間保存するのに適しています。

この植物は、中医学の観点から漢方の一種と見なされ、中国語では尖苞柊叶(jiānbāo zhōngyè)と呼ばれ薬用としても利用されてきました。中医学的にこの葉は「尖苞柊叶葉(せんぽうしゅうようよう)」と称されます。ただ中医学において一般的に薬用として利用されるのは、葉よりもの方が重視されています。

この葉が持つ特性と、その自生地域を考えると、Bánh chưngのルーツが中国からの文化流入である可能性が強く示唆されます。中越国境地帯に住むチワン族(中国語: 壮族 Zhuangzu、ベトナム語: Tày-Nùng)やヤオ族(中国語: 瑶族 Yaozu、ベトナム語: Dao)といった少数民族は、古くからこの葉を使って粽(ちまき)を作る風習を持っています。彼らの文化が、Bánh chưngの原型となり、ベトナムの主要民族であるキン族に伝わった可能性は十分に考えられます。

郎僚の逸話において、彼が他の王子とは異なる素朴な餅を考案した「末子」であったという設定は、彼が既存の文化圏とは異なる外部からの移入者、あるいは異なる文化背景を持つ者であった可能性を示唆している、という考察も成り立ち得ます。



3. Bánh chưngに似た他の粽


ベトナムには、Bánh chưng以外にも様々な餅が存在し、それぞれ異なる歴史的背景や民族的ルーツを持つと考えられます。

  • Bánh khúc(バインクック): Bánh khúcはベトナムの伝統的な餅で、もち米母子草(ハハコグサ)を混ぜた皮に、緑豆、豚肉、コショウを混ぜた餡が入っており、Bánh chưngとの共通点が多いもち米の粒が残った餅です。この餅は中国の「青団」(Qīngtuán)と繋がりがあると考えられます。青団は日本の草餅のルーツでもあり、古来はハハコグサが使われていました。当初はベトナムのBánh khúcのようにもち米の粒が残る形状だったと考えられますが、時代とともに搗いて餅状に変化したり、ハハコグサの代わりにヨモギを使うようになったという変化を遂げています。このような観点から、Bánh khúcと同じくBánh chưngも外から伝わった可能性があることや、この二つの餅がベトナムでは古来からの形状を変えることなく現在まで維持してきたのではないかということが考えられます。


  • Bánh tro(バインチョー): Bánh troは「灰汁餅」を意味し、特定の植物の灰(灰汁)をもち米に混ぜて作られる餅です。この餅の製法は、中国の灰水粽(huīshuǐ zòng)や鹼水粽(jiǎnshǐ zòng)にルーツを持つことが確実視されています。灰汁を加えることで、もち米が独特の透明感のある色合いと弾力、ほのかな苦みを持つようになり、保存性も高まります。中国や日本では孟宗竹の皮が使われることが多いですが、ベトナム北部ではBánh chưngにも使われるDongの葉で包む点が特徴的です。

Bánh tro(バインチョー)


  • Bánh tét(バインテット): Bánh chưngに非常によく似た餅ですが、主にベトナム中部から南部にかけて広く食べられています。材料はBánh chưngとほぼ同じ(もち米、緑豆、豚肉など)ですが、円筒形に整形され、主にバナナの葉で包まれます。Bánh tétの円筒形は、中華系移民(特に広東省出身者)が持ち込んだ粽の文化がルーツであるという説が有力です。このことからもBánh chưngが外から伝わった可能性があることが分かります。また中国では粽を竹の皮や葦の葉を使うことが一般的ですが、ここではバナナの葉を使っています。


以上のことから、ベトナムの食文化におけるDongの葉の独自性と、そのローカル化の成功を強く示しています。この植物の植生がベトナム北部から中国南部の限定された地域に限られるため、ベトナム中部や南部では手に入りにくく、豊富に自生するバナナの葉が代替として利用される可能性が高いと考えられます。しかし、灰汁餅の例に見られるように、ベトナム北部では竹の皮が豊富に存在するにもかかわらず、あえてDongの葉で包むことが一般的となりました。これは、Dongの葉が持つ風味、色合い、防腐性といった優れた特性が、ベトナム独自の餅文化の形成に不可欠であったと評価できるでしょう。



4. Bánh chưngの保存性


Bánh chưngは長時間茹でることで作られ、これにより殺菌効果と、米のでんぷんが糊化して固まることで微生物の侵入を防ぎ、常温でも数日から1週間程度(気候や湿度による)の保存が可能とされています。この保存性の高さは、旧正月に大量に作り、親戚や友人と分かち合うベトナムの文化において非常に重要な要素です。

この特性は、先日ご紹介させていただいた伝統的な保存食である煮しめにも通じるものがあります。煮しめも、食材を醤油や砂糖で長時間煮込むことで味を染み込ませるとともに、殺菌効果と水分を減らすことで保存性を高めています。

両者に共通するのは、冷蔵技術が未発達だった時代に、食材を煮込むという調理法によって、風味を保ちつつ長期保存を可能にする先人の知恵が詰まっている点です。地域や使う食材は異なりますが、食文化の中で「作り置き」や「保存」というニーズに応える工夫が共通して見られるのは興味深い点です。



5. まとめ


Bánh chưngは、ベトナムの民族文化と深く結びついた象徴的な食べ物でありながら、そのルーツには中国南部、特に中越国境地帯の少数民族の食文化からの影響が色濃く見られます。郎僚の逸話は、この文化流入を神話的に表現している可能性があります。

また、Bánh tétが中華移民の文化を、Bánh khúcが中国の「青団」の伝統をそれぞれ継承しているように、ベトナムの多様な餅文化は、地域固有の発展と、複数の外部文化との交流によって形成されてきたと言えるでしょう。これらの餅は、単なる食べ物ではなく、各民族の歴史、信仰、そして生活様式を伝える貴重な文化財です。

このような観点から考えると、中国が古くから持っていた高度な農耕技術、食品加工に関する知恵、そして広範な文化圏における影響力が、これらの餅の伝播と発展に大きく貢献したことがわかります。特に、葉で食品を包み保存性や風味を高める技術、もち米や豆、肉などを組み合わせる知恵、さらにはそれらを祭りや儀式と結びつける文化的な権威は、当時の中国がいかに優れた文明を持っていたかを示していると言えるでしょう。


このまとめは、Googleの無料版AIアシスタント「Gemini」との対話を通じて作成しております。

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