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Nutubeでオーディオアンプを作ろう~①構想編

【はじめに】

 本プロジェクト発動の動機
 
これまで、Fender USA Telecasteerをリフィニッシュする「なんちゃってMalcolmを作ろう」、フルチューブアンプをキャビネットから全自作する「真空管ギターアンプを作ろう」という2つの記事を垂れ流してお送りしてきた。

 そんなことをしていたら、「真空管ギターアンプを作ろう」を読んでくれた30年来の悪友から、「お前さんの活動は実に羨ましいな!」との感想メールをいただいた。
 要するに、「いい歳して、お前はどんだけ暇なんだ。子どもの教育への影響とか、年齢相応の社会的責任とか考えたことはないのか?こんな大量の駄文書いてる暇があったら…」といった罵詈雑言を、中身が見えないくらい分厚いオブラートで包んで投げつけてくれたわけである。
 常識人ならば我が身を恥じ入るべきところなのだろうが、常識的な人生を歩んでいたらこんなことはしていないわけで…
 幸か不幸か、この悪友はオーディオが趣味だったりする。そんなに羨ましいなら今度はオーディオアンプ自作を見せつけてやろうじゃないか、という極めて悪辣な動機から、このプロジェクト発動が決定した。
 もちろん、完成の暁には、金額欄の右側に0をいくつか追加した請求書とともに送り付けてやる所存である。

 タイトルの通り、このプロジェクトでは、「Nutube」を使ってオーディオアンプを作ってみるわけであるが、まずはこの「Nutube」について、少しご説明したい。

1 Nutube(ニューチューブ)って?


 「Nutube(ニューチューブ)」というものをご存じだろうか?
 Nutubeは、2015年ころ、音響メーカーであるKORGと、世界ではじめて蛍光表示管(VFD)を開発したノリタケ伊勢電子がコラボして生まれた、次世代の真空管である。
 感覚的にはつい最近出たばかりという認識だったのだが、デビューから既に10年以上経過している…「次世代」という表現は適切なのだろうか…歳は取りたくないものだ…

 ガラス製の小さな筐体(45mm×16mm,厚さ5.6mm)の中でエメラルドグリーンに光り輝くアノードが美しく、部品単体でも非常にお洒落である。
 5Vという非常に低い電圧から動作可能である。
 こんなに小さくて低電圧で動くのに、その増幅特性は三極管のそれであり、倍音を含んだ「真空管の音」が得られるという素晴らしい逸品なのである。

KORGのサイトから拝借

 Nutubeを用いたギターのエフェクターやアンプなどがいくつか販売されており、自作の世界でも、ギターのエフェクター、ヘッドフォンポータブルアンプへの活用などで盛り上がっていた時期がある。本気のピュアオーディオ自作の分野でも、プリ部分にNutubeを使ったハイブリッドアンプなどが見受けられる。
 
 KORGでは、過去にこのNutubeを使ったエフェクターコンテストを何度か実施している。第2回のコンテストに応募して入賞したお話は、「真空管ギターアンプを作ろう」の中でちょっと触れさせていただいた。このときの副賞としていただいた新品のNutubeが発掘されたので、せっかくだから、これを使ったアンプを作ってみよう、というわけである。
 最近はあまりNutubeの話題も聞かないので、プロジェクトとしてはかなりニッチな内容となってしまうことはわかっているのだが、こうでもしないと我が家のNutubeが消費できないし…

2 Nutubeアンプのコンセプト

 中年紳士が求めるホームオーディオとはどのようなものだろうか。
 夜も更けて家族が寝付いたころ、間接照明の明かりがうっすらと光る薄暗いリビング。発注から1年待ってようやく届いたCassinaのSOMEWHERE EL-Sに腰を据え、ソファーの横のサイドテーブルに置かれたGlenfiddichをグラスに注ぐ。ミネラルウォーターを少し足して香りと口当たりのバランスを取る。「今日の一杯は最上の出来だな」などとつぶやきながら、自作のピュアオーディオ機材から流れるジャズに身を委ね、窓の下に輝く街の灯りを眺めながら日中のオーバーワークの疲れを癒す、などといった生活を一度くらいはしてみたかったような気がしないでもない…

 まあ、実際には、小学校低学年の子どもたちと一緒に寝てしまうような生活リズムだし、お酒は飲めない。音楽の趣味だって未だにハードロックやメタルである。第一、ウサギ小屋みたいな我が家にそんなくつろぎスペースは全くない…

 というわけで、現実的な自作オーディオの設置個所を想定するに、作業用机の隅っこということになるし、ニアスペースでの小音量再生が基本となるだろう。
 そうすると、筐体はなるべく小さい方がよい。プリアンプはNutubeで決まりとして、パワーアンプICやトランジスタで、いわゆるハイブリッドアンプにするのが良いだろう。

 したがって、本機のコンセプトは「小音量再生に特化した高品位で小さなNutubeハイブリッドアンプ」にしよう!

 だんだんコンセプト、イメージが浮かび上がってきたので、より具体的な検討を進めていくことにする。


3 より具体的に検討してみよう

【入力】

 一般的なプリメインアンプでは、複数の入力端子があり、入力セレクタを付いている。しかし、本機はシンプルなデスクトップアンプがコンセプトなので、入力は潔く一系統でよいだろう。作業も少なくて済むし。

 いや、本当にそれでいいのか??←また始まったよ…余計なことは考えず、とにかく無難にやっていけばいいのに…
 
 ちょっと最近の一般的なレベルのホームオーディオやカーオーディオを見回してみると、音源はPCやスマホで、接続はBluetoothが当たり前になっている。
 そんな現代にアンプを作るならば、Bluetooth対応くらいはしておいたほうがよいのではないだろうか?高品位なアンプを目指してはいるが、到底「本気のピュアオーディオ」というレベルまでは達しないだろうし…

 そこで、ちょっとAmaz〇nさんを徘徊してみると、Bluetoothレシーバーの基板自体はかなりお手軽に手に入るようだ。数百円でお試しできるなら問題はない。もし上手く機能しなかったとしても、「本機は高品位な本機のピュアオーディオなので」と言い張ればいいだけである(数行前と言っていることが真逆じゃないか…お前はトラ〇プか…)

 というわけで、入力部分の検討を進めた結果、本機のコンセプトは「市場には極めて少ないNutubeを使用し、Bluetoothにも対応した高品位なデスクトップアンプ」という実に市場競争力の高そうなものに昇華した。まあ、そもそも市場にデビューすることなど考えられないのだが、常にライバルは世界市場、くらいの気持ちが大事なはず…

 入力直後にはボリュームを設置する。ここは10kΩくらいでよさそうである。小出力アンプの場合、AカーブよりBカーブの方が使いやすいという話もあるようなので、どちらが良いかはテストして決めることにしたい。

【ポイント】
 〇 Bluetooth入力とRCA入力の切替式
 〇 10kΩのボリューム設置


【プリアンプ部分】 

 KORGのホームページには、Nutubeの使用ガイドが掲載されている。その中に1段増幅回路の回路例などが紹介されている。

KORGホームページ・Nutube使用ガイドよりお借りした


 この使用ガイドによると、負荷抵抗(R8)の推奨値は100k~330kΩ、グリッドバイアス電圧はVCC12V時に2~3V、グリッドバイアス抵抗(R5)値は10k~33kΩ、フィラメント定格は0.7V厳守となっている。
 そして、入力信号のインピーダンスが高い場合には、前段にバッファを入れることが推奨されている。さらに、Nutubeは出力インピーダンスが高いため、Nutubeの後ろのバッファは必須のようである。
 
 上記の回路例は、KORGが「参考にしてね」と公開してくれているのだから、これをそのまま使うことには法的にも倫理的にもなんら問題はない。
 ならば、プリアンプ部分はこのまま作ればいいだけである。今回は無難に進められる気配である…

 いや、それではいけない!!(おい、またか…)

 まず、この回路例のバッファに使用されている素子がFETである、というところが問題である。
 別に、FETに親を殺されたとか、FETのせいで持っている株が暴落したとか、そんなことではない。両親は存命だし、株式なんか持ってないので相場が暴騰しようが暴落しようがどうでもよいことである。では、なぜ?

 自作エフェクターの世界では、FETは「真空管っぽい」効果が得られる素子として知られている。その嚆矢となった(と思われる)論考が下記サイトである。

 実際に、真空管ギターアンプのプリアンプ部分の真空管をFETに置き換えてエフェクター化したものも結構あり、WamplerやCatalinbread などの製品にもいくつかそのような回路が見受けられる。
 自分自身も、そのような回路のエフェクターを自作しては、「なるほど、FETってやつはチューブっぽい音が出るもんなんだなぁ」というプラシーボ印象を抱いていたものである。

 FETを通した音が本当に真空管っぽい音になるのだとしたら、バッファにFETを使ってしまうと、「真空管アンプっぽさ」がNutube本来の音なのか、それともFETに由来するものなのかわからなくなるんじゃないか?というのが問題なのである。

 まあ、FETで真空管っぽく音になるのかどうか正直よくわからないし、仮にそういう傾向があったとしても、電圧増幅するわけでもないバッファとしての使用で音色に影響が及ぶことは考えにくいかもしれないが…
 
 とにかく、本機ではNutubeのサウンドを探究し、FETは使わない方向でいってみる。

 ついでに、入力部分のバッファは省略する。部品点数を減らせば製作が楽になるからではなく(たしかにそうなんだが...)、可能な限りNutubeそのものの音を聞くためである。もし入力部分にバッファがないことによる問題が生じた場合には、別途基板を作成してバッファを追加することにしよう。
 多方で、Nutubeの特性から、後段のバッファは省略することができない。そこで、ここはオペアンプを使うことにする(オペアンプだって内部にFETがあったりするんじゃないの、という気もするが…)。

【ポイント】 
 〇 入力部分のバッファを省略
 〇 Nutube出力のバッファはオペアンプを使う
 〇 それ以外はKORGの使用ガイドにしたがう


【パワーアンプ】

 パワーアンプについては、自作系ギタリストならばスモーキーアンプなどでおなじみ、LM386あたりがよいだろうか。ちょっと工夫すればある程度の音質は得られるだろうし、なによりお手頃な価格がいいよね、と金額をチェックしようと秋月電子通商のホームページを覗いてみたら…

さ、300円??(秋月さんのHPからお借りしました)


 2WのD級アンプが300円?!PAM8012というICを利用した、約1センチ四方の小さなD級アンプモジュールを発見してしまった…
 基板のサイズが通常の8pinのICサイズ。そこに植え込まれた極小のチップ部品が老眼に厳しい感じではあるが、LM386を使ったアンプは過去に作ったこともあるので、どうせなら新しい素材に挑戦してみることにしよう。なにより300円というお値段は魅力的…
 
 
【ポイント】
 〇 PAM8012モジュールの高音質化改良


【電源】

 パワー部のPAM8012モジュールは5Vで動作する。そして、入手可能なBluetoothの多くも5V駆動である。
  Nutubeは最低5Vでも動いてくれるが、電圧が高い方が出力・ゲインが得られる…
 そこで、12VのACDCアダプタを使い、Nutubeの電源電圧は12V、それ以外は5Vに降圧するという方式にしてみる。

【ポイント】
 〇 ACアダプタ駆動
 〇 Nutubeの電源電圧は12V

 これで、回路設計(というほど大げさなことはできないが…)の大まかな方針が固まった。

4 今後のプラン(次回予告)

 以上の脳内会議(一部妄想含む)により、Nutubeオーディオアンプの骨子はおおむね決定した。
 前回の「真空管ギターアンプを作ろう」では、作業が3カ月の長期に渡り、駄文の量もえらいことになってしまったことを顧み、今回はなるべく短期決戦で臨む所存である、がお約束はできない…というのも、前回のプロジェクトの遂行過程で別プロジェクトの発動も余儀なくされてしまったので…そちらについても近日中にプロジェクト発動の記事を作成する予定である…

 本プロジェクトの次回は、具体的な回路設計や基板レイアウト作成、シャーシの検討などを行っていきたい。

 次回

 をお楽しみに~
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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