見出し画像

Nutubeでオーディオアンプを作ろう~⑥プリアンプ製作編

1 前回までのあらすじ

 わずか1センチ四方のパワーアンプモジュール上のコンデンサチップ周辺のハンダ付けに失敗し、モジュールを2個ほど昇天させるという痛恨のミスをおかしながらも、どうにかパワーアンプ基板は完成した。決して適切とは言えないテスト環境にもかかわらず、出音はなかなかいい感じだ。

 さて、今回は、いよいよプリアンプ基板の製作である。つまらないミスを繰り返して失笑を誘い、自ら他山の石となるのが我がプロジェクトの本懐であるが(なんというrockな姿勢であろうか…)、1個5000円もするNutubeをぽこぽこ壊す訳にはいかない…

2 電源基板の製作

 Nutubeのフィラメント定格はわずか0.7Vであり、KORG様の使用ガイドには、これを超えると「フィラメントは容易に断線する」と、あっさり書かかれている。フィラメントが断線する=Nutubeがお亡くなりになるということである。いつものようないい加減なテスト環境(あまりに適当過ぎるため、パワーアンプ基板のテスト環境の写真の掲載は見合わせたほどである…)では壊さなくていいものも壊してしまう可能性が高い。
 そこで、プリアンプ基板の前に電源基板を製作し、フィラメントへの電圧をしっかり確認しておくことにする。
 なお、フィラメント電圧は、電源基板で3.3Vを作り、プリアンプ基板上で150Ωの抵抗を直列に挿入して0.7Vにドロップさせるので、電源基板上でビシッと3.3Vが出てほしいところである。

KORG Nutube使用ガイドより

プリント基板の作成

 基板は、いつものように、DAIS〇謹製のプリント基板原版用紙(世を忍ぶ仮の姿として「写真印刷用光沢紙」という通称で販売されている)とDAIS〇特製エッチング液(オキシドールとクエン酸と食塩)を使用して作成した。
 作成の詳細な流れについては、Nutubeマウント基板やパワーアンプ基板の製作レポートと同様であるため割愛する(エッチング液に漬け込んでから部品の仮装着までの間、うっかり写真を撮り忘れていたから、というわけではない…)。

カットした生基板に原版をアイロンで転写して…
エッチング液に漬け込む

部品の取付

 まずは部品を仮装着してみる。手持ちの部品の関係で、容量の小さい1uFの電解コンデンサの方が目立ってしまっているが…
 5Vレギュレータは、後にヒートシンクが取り付けられるよう外向きに配置した。それはよいのだが、基板レイアウト作成時には、ヒートシンクには基板取付用ピンが付いていることに気付いていなかった。そのため、実際にヒートシンクを装着する際にはピンを削り飛ばさなければならないようだ…
 5Vレギュレータが2つあるのは、パワーアンプ用とBluetooth基板用を分けて、少しでもノイズの混入を避けようという試みである。電源投入時のLEDはBluetooth用の5Vから分けてもらうことにする。

なんだか貧相な…

 仮装着した部品をハンダ付けしていく。
 外部電源からの入力は、基板に装着する形のコネクタを使ってみる(なぜか3ピンの物を買っていた…まあ、多い分には困らないか)。

1uFの電解コンデンサが傾いてしまった…

動作確認

12VのACアダプタを繋いで動作確認を行う。
12Vは全く問題がない。5V, 3.3Vは使用しているアナログテスタでは少し高めに見えるが、無負荷だからだろうか…とりあえずは完成したことにしておこう…

3 プリアンプ基板の製作

 いよいよプリアンプ基板の製作である。

プリント基板の製作

 他の基板同様に、まずはプリント基板を自作する。
 エッチング液を入れて基板を投入した小さいタッパを、お湯を入れた大きめのタッパに浮かべると、エッチング液が温められて反応が促進する。日本酒を入れた徳利を湯灌するようなイメージである。沸騰するほど熱いお湯で熱燗にしてしまうと化学反応が進み過ぎたりしそうで怖いため、70度~80度くらいのお湯でぬる燗を狙うようにしている。

エッチング液が温めるにつれて反応速度が速くなる

 ぬる燗でいい具合にエッチングが出来上がったら、基板を洗浄して耐水ペーパー(#800程度が無難だろうか)でトナーを剥がし、フラックスを塗っておく。この際、合わせてエッチング不良個所がないかどうかを確認しておく、と…

赤丸に注目!!

 なんと!銅箔面の状態を確認したところ、赤丸の2か所のランドが切れてしまっている。エッチング液の調子が良すぎたのか、トナーの転写が不十分だったのかはよくわからないが、この程度であれば、部品のハンダ付けの際にハンダブリッジで繋ぐか、基板を無視して部品同士を直接繋いでしまえば大丈夫だろう。

部品の取付

 基板の穴開けが終わったら、部品の取付である。
 まずは、用意していた部品たちを仮装着してみる。

ERO・MKT1813の足の処理が…

 入力コンデンサに使用するERO MKT1813はかなり大きいので、事前にちゃんと実測して、その寸法をレイアウトに反映させていた、はずだったのだが、基板にあてがってみると、基板の端子間の距離が短い…いったい、どこを計測していたのやら…
 仕方ないので、MKT1813の足を曲げることでどうにか基板上に装着することができた。
 部品点数が少ないこともあり、それ以外は特段問題はないようである。ユニバーサル基板だと、各部品の足を曲げたり、逐一レイアウトと見比べて確認したりと、ハンダ付け作業に時間がかかるのだが、プリント基板ならばハンダ付け作業はあっという間である。

ハンダ付け終了

 基板上に散在する小さな丸い金属は、ICソケットピンである。
 この基板に繋がる配線は、これらのICソケットピンを介して繋ぐことにした。Nutubeマウント基板との配線作業を楽にし、シャーシへの組み込みの際に線材の長さ調整がやりやすくなるようにという目論見である。決して自分の設計に自信が無くて、線材を直接ハンダ付けしてしまったら修正作業が大変になるから、ではない、ような気がする…

通電確認

 Nutubeを接続しなければ音声信号での確認もできないため、プリアンプ基板単体で確認できることは、通電して各部の電圧が適正になっているかどうかくらいである。
 先に完成している電源基板から12V、3.3Vを接続し、オペアンプの8番ピンに12Vが来ていること、Nutubeのフィラメントに繋がるピンが0.7V程度になっており、グリッドに繋がるピンが3.3Vになっていることを確認できた。

4 Nutubeマウント基板の配線

 Nutubeマウント基板とプリアンプ基板は線材で繋ぐ。
 細い線材の先をハンダ揚げすれば、プリアンプ基板上のICピンソケットとの着脱が可能になる。

こんな感じで接続できる

 Nutubeマウント基板とプリアンプ基板との相対的な距離を考慮して線材の長さを決定し(今回は60㎜程度)、マウント基板のピンヘッダに線材をハンダ付けする。

それにしても汚いな…

 ひどく雑で汚らしく見えるが、「ハンダ付けで重要なのは綺麗さか?ハンダ付けで大切なことはバチっとくっつくことだろう?」
 もっとも、ハンダ作業それ自体も完ぺきとは程遠いのものであるが、どうせこのあたりは完成後は誰の目にも触れないし…

5 動作テスト

 そんなこんなで、パワーアンプ基板、プリアンプ基板、電源基板、そしてNutubeマウント基板が完成したので、いよいよ動作テストである。

 それぞれの基板の間を線材で配線する。
 パワーアンプからの出力は、テスト用の安スピーカーに接続する。手元には1個しかスピーカーが見当たらなかったので、とりあえず左チャンネルにスピーカーを繋いでおく。
 プリアンプ基板に音声信号を入れる配線は、パワーアンプ基板の動作確認の際に突貫で作成した、DAIS〇の安イヤホンを途中でぶった切ったやつである。
 スピーカーは1個しか繋がっていないので、入力信号も片チャンネルだけで十分である。まず片チャンネルのチェックをしてからもう一方のチャンネルに繋ぎ変えればよいだろう。と、一方の入力信号のみを結線しておく。
 各基板を繋いだだけでは電源が投入されているのかどうかがよくわからないため(もちろん、すべてが完璧であれば、Nutubeが光るのでそれとわかるはずであるが…)、パワーアンプ基板の電源ピンに5Vで動作するLEDを仮装着し、いよいよ電源を投入してみる。

点いた!!Nutubeが点いたよ!!

 おお、Nutubeが光った!!もしかして、これは一発で成功なのか?!

 スピーカーからノイズらしきものは全く聞こえてこない。おやおや、これはなかなか高性能なものを作ってしまったか、などとちょっと浮かれながらふと手元のタブレットに目を落とすと…

Youtubeの画面が動いている…

ということは…

 電源投入時から、タブレットから音声信号が出力されているということじゃないか。にもかかわらずスピーカーから音は出ていない。タブレットの音量設定が低いのではないか?と音量を最大にしてみても、スピーカーは無音のままである…
 先ほどまでの浮かれかけた気分はどこへやら、にわかに暗雲が立ち込めてきた…
 もしかしたらバイアス調整をしていないからか?と、プリアンプ基板上の半固定抵抗をマイナスドライバで調整してみる。半固定抵抗を動かすと、調整中のチャンネルのNutubeの明るさが変化するので、Nutube自体はちゃんと動作しているようだ…
 どうなっているんだろう…よくわからないまま両方のチャンネルをいじっていると、左のチャンネルの調整中にはスピーカーからザリザリっという調整音みたいなノイズが乗るが、右のチャンネルをいくらいじってもノイズが聞こえないことに気付いた…
 あっ!!
 そう、逸る気持ちで動作テスト環境を設定したため、スピーカーは1個だけをパワーアンプの左チャンネルに接続している。
 そして、タブレットの音声入力はプリアンプの片チャンネルに繋いだけど、そういえばどっちのチャンネルに繋いでいたっけか?

…右チャンネルに繋がれているじゃないか…そりゃあ音が出るわけないよ…OTL

 やはり、いい加減なテスト環境というのはよろしくないものである。
 使用していないスピーカーセットがあったのを思い出したので、それを引っ張り出し、ちゃんと左右のチャンネルにそれぞれ繋ぐ(最初からこうしておくべきだった…)。
 入力信号も当然、左右それぞれに接続し、今度はタブレットのYoutubeが一時停止状態であることも確認したうえで、もう一度電源投入である。
 スピーカーからはかすかにサーッというノイズが聞こえてきているような…
 恐る恐るYoutubeの再生アイコンを押してみると…

音が出た!!

 左右チャンネルから流れてくるJacob KollerのGod Father!!
 タンゴのリズムを刻む左手の重音の生々しさ、軽やかな右手のフレージング、まるで目の前で演奏を聴いているかのようだ…
 我が家の音楽再生環境の中で最も優秀なのは、BNR34に装着されているカーオーディオなのだが(スピーカーは全て社外品に入れ替え、ドアパネルにデットニングまで施すという、走り系とは思えない仕様なのだが、これはたまたまというか、中古で購入した時からそうなっていただけである…)、それよりもはるかに解像度が高く感じられる。

 まあ、自作した回路がまともに動いてちゃんと音が出てくるというのはとても嬉しい瞬間であり、かなりのバイアスが掛かっているのは間違いない。だいたい、100kmも走らせていれば耳鳴りがし始めるような煩い車に装着されたカーオーディオとホームオーディオを比べても、ねぇ…

6 次回予告

 ひとまず、動作テストまで無事終了したので、次はシャーシの加工や組み込みである。

次回は
 Nutubeでオーディオアンプを作ろう~⑦シャーシ製作編
の予定!お楽しみに!!

 
 


 
  
 

 


 








いいなと思ったら応援しよう!