【駄文最終回】博士と死の秘宝 (下)-戦場のメリークリスマス-
サムネ画像:コニシ木の子さんの記事より抜粋
(ありがとうございます。)
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【あらすじ】
子供部屋おじさんの博士は親が金持ちのため、大した苦労もなく還暦までやってきた。
その金に蝿男が吸い寄せられて来た。
その後、博士は詐欺師旧ジャニを取り込み、洗脳。
旧ジャニの活躍により、博士は国民栄誉賞などの名誉を手にした。
だが、大谷翔平が賞を辞退したことから、彼らが信じる「金、女、名誉」の三原則が崩れてしまった。
「蝿男さん。私もいい歳です。
金も女も名誉も手に入れました。
私は、次のフェーズに向かおうと思っています。
それは…
『友情、努力、勝利』です!
なぜなら、大谷翔平君に影響されたからです!」
又も価値観が一致した。
まあ糞人間なんてモノは、成功者に影響されるモノなのだ。
でなきゃ自己啓発本なんて、あんなに売れる筈
が無い。
コンコンコン。
「旧ジャニ、入ります!
博士に報告します!
令和20年11月1日から同年同月3日までの間、北海道奥尻島、利尻礼文島及び天売焼尻島において実施された『ボッッコちゃん配り』の任務完了につき、帰部屋致しました!」
「は?もうしなくていいよ。そんなの。」
旧ジャニは相変わらず馬鹿真面目で有る。
「え?どういうことですか?」
「ですから。もう『ボッッコちゃん配り』はしなくていい、ということです。」
「なぜですか?」
俺達は、「なぜ」とか一々聞いて来る奴が一番苦手だ。基本パッションでやらせて貰って居る。
「私は博士の名誉のためにやってるんですよ、それが一番の社会貢献じゃないですか?
私はそう博士から教わりました。
それを『そんなの』だなんて…!
いくら博士だとしても、私は!それだけは!おかしいと思います!」
旧ジャニは、「非暴力」だの「ボランティア活動」だのと云った、「学校教育的な正しそうな事」と親和性が高いのがネックなのだ。
但し、「詐欺行為は違法」と云う概念だけはどうしてもピンと来ないらしい。
「…あのね。
私はもう国民栄誉賞も受賞しましたし、『名誉』なんて、もうどうでも良くなったのです。
これからの時代はね。
『友情、努力、勝利』。
これですよ。このパワーワード!
どう?イカすよね?イケメン君!」
旧ジャニは、十七年間不眠不休で働き続けて居る。
その為、異常な程痩せ細り、目は落ち窪み、髪も禿げ散らかしている。
常にストレスに晒されて居るからであろう、謎の異臭を放つ様に迄、成って仕舞った。
依って、今やイケメンでも何でも無いのだ。
時の流れとは、恐ろしいモノだ。
「私は『名誉』がいかに素晴らしいものであるか、この仕事を通して経験しました。
国民の皆さんが喜んで下さる顔を私は見たい。見続けたい!
博士が急にそんな少年ジャンプみたいなことを言うのであれば、私は私で、「社会貢献家」として独立します!」
萎れた牛蒡の様な旧ジャニ。
その目だけが高級自転車に取り付けられたLEDライトの様に、ギラギラと輝いて居る。
マトモなニンゲンで無い事だけは、誰が見ても一目瞭然で有る。
確かに其の姿は、「社会貢献家」にしか見え無かった。
「イケメン君。キミは何ひとつ分かっていないな。
我々三人の固い『友情』で、イケメン君が『努力』し、私が『勝利』する。
そういうことじゃないか。
いつまでも古い価値観に囚われず、早い所目を醒ましてくれたまえ。」
俺は戦慄を覚えた。
何故なら、俺が思い浮かべた「友情、努力、勝利」のイメージとは、可成りかけ離れたモノだったからだ。
何処まで行っても博士は糞人間で、生粋の「子供部屋おじさん」でしか無かった。忘れてた。
だが博士の手に掛かれば、自動的に「終わりよければ全て良し」に成るのであろう。強運だし。
先ずは、俺達三人の友情を取り戻さねばならない。
見ると、博士は旧ジャニをタコ殴りにし、思想改造に着手し始めて居た。
思い起こせば、旧ジャニは其の都度武力行使で信念を変えられて来た。
「戦争で負ける」とは、つまりはこう云う事なのだろう。
だが博士の拳には、かつての重さもキレも失われて居た。
殴られて居る筈の旧ジャニも、博士を憐れむ様な表情を浮かべて居る。
流石の博士も、寄る年波には敵わ無いのだ。
ボッッコボッッコと諸行無常の殴打音が、狭い六畳間に響いて居た。
俺は博士を旧ジャニから引き剥がした。
こんな痛々しい暴力は見てられ無ぇよ。
(終わり)
