婚活無双女
婚活するなら結婚相談所だ、と山内夏美は心に決めていた。
マッチングアプリや婚活パーティの男性たちは信用できない。身元のしっかりした男性と出会い、数ヶ月交際してサクッと結婚する。それが一番コスパが良いはずだ。
登録面談の時点で、夏美は勝利を確信した。担当者のアドバイスは全て納得の行くものばかりだった。
「減点方式ではなく加点方式で」
「恋愛と結婚は別、ドキドキより安心」
「華美すぎない、清潔感のある身だしなみ」
「丁寧な言葉遣い、聞き上手を心がける」
夏美は朗らかに答える。
「これ全部、仕事やプライベートで普段から心がけてることです!」
担当者も嬉しそうに頷く。
「夏美さん、素晴らしいですね!ご成婚最速記録も夢じゃなさそう!」
夏美と担当者はすっかり意気投合し、入会手続きは無事に完了。さっそく初お見合いのセッティングは進んだ。
♡♡♡♡♡
お見合い当日。
夏美がホテルのラウンジに着くと、入り口で待っていた男性に声をかけられる。
「あのぅ、山内さんですか?」
「はい!西田さんですか?今日はよろしくお願いします!」
西田は中肉中背、癖毛にメガネの優しい雰囲気の男だ。結婚したら大事にしてくれるタイプに違いないと、夏美は胸を弾ませた。
簡単な自己紹介の後、自然と休日の過ごし方の話題に移る。
「西田さんは、お休みの日は何をされてるんですか?」
「あ、僕は映画が好きで…」
「ほんとですか!わたしも映画大好きなんです!最近何見ました?」
「あ、最近はちょっと忙しくて…」
「そうですか。あ!わたしこないだ『プラダを着た悪魔2』見に行きました。西田さん、見ました?」
「あ、それ、女性に人気の…」
「あら、男性が見ても面白いですよ!メリル・ストリープが怖くて!…あ、すみません、わたしばっかり話してた。西田さんはどういう映画がお好きなんですか?」
「僕は、ミニシアター系が…」
「わかる!いいですよね!小さい映画館って雰囲気あって!あ、西田さん、お水ないですね。すみませーん!」
ウェイトレスが水をグラスに入れて立ち去る。
「えっと、西田さん、なんの話でしたっけ?」
「映画の話を…」
「そうだ!ミニシアター!わたし、銀座のに一度行ったことあります!シネなんとか」
「シネスイッチ銀座…」
「そう、そこ!今度行きません?わたしたち、めちゃめちゃ気が合いそう!」
「あ、はい。あ、でも、新宿…」
「銀座といえば、お店たくさんありますよね。ランチもしましょ!何が好きですか?」
「えと…パスタ、とか…」
「わかる!わたしもパスタ大好きです!お店いっぱい知ってるんで、任せてください!」
「あ、はい……あ、ぜひ……」
その後も1時間程度の会話を重ね、二人はラウンジの前で別れた。
夏美は確かな手応えを感じながら家路に着く。
「あー、楽しかった。西田さん大人しいかと思ったけど、たくさん話してくれたな。好きかも!」
夏美は早速担当者に報告メッセージを送るのだった。
『とても良い方で、お話もたくさんしていただけました。ぜひ次のステップに進みたいです』
♡♡♡♡♡
数日後、夏美は婚活面談のために相談所を訪れていた。
「先日の西田様、今回はご縁がなかったみたいで…」
「え?あんなに意気投合して、映画とランチも誘ってくれたのに。ちなみに、理由って?」
「自分にはもったいない女性でした、っておっしゃってるみたいで」
「ああ…」
「夏美さんが素敵過ぎるから、少し気後れされたのかもですね」
担当者はにっこり笑うと、広げられた資料を机の上でトントンと整えた。
「次の方いきましょ。夏美さんなら、すぐご成婚されますよ!この方どうですか?キャンプが趣味ですって」
「わあ、わたし、アウトドア大好きなんです!たくさんお話聞けそう!」
「それなら間違いないですね!」
♡♡♡♡♡
二度目のお見合いから数日後。夏美は再び相談所を訪れていた。
「先方様、自分にはもったいない女性だっておっしゃってるみたいで」
「そうですか。すごく盛り上がって、日帰りキャンプに誘われたんです。アウトドア料理も一緒に作りたいって、たくさん話してくれたのに」
「なるほど…。わかりました。ではやはり、今回の方も気後れされたんでしょうね。」
担当者はにっこり笑うと、ノートPCをパタンと閉じた。
「次の方行きましょ。夏美さんなら、すぐご成婚されますよ!この方どうですか?アニメがお好きみたいなんですけど」
夏美は顔を輝かせる。
「わあ、わたし、アニメ大好きです!たくさんお話聞けそう!」
「それなら間違いないですね」
♡♡♡♡♡
三度目のお見合いから数日後。夏美はまた相談所を訪れていた。
「先方様、自分にはもったいない女性だっておっしゃってるみたいで」
「そうですか…。お互いアニメ好きですごく盛り上がったんですよ。惣流と式波とか、海岸とか、アダムとリリスと槍とか、13号機とか、LCLと赤い海とか、インフィニティとか、イスカリオテのマリアとか、新劇旧劇貞本とか、仕事の流儀とか、たっぷりお話してくれたのに。宇部新川駅に行く約束もしたのに…」
「……?なるほど、では、やはり今回も…」
「気後れ、ですかね」
「間違いないですね。夏美さん、次、行きましょうか!」
二人は顔を見合わせて朗らかに笑った。
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【完結済み】長編小説も書いてます。
