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「彼方に光る星屑たちよ」|創作大賞感想

予鈴がなった。もうすぐ昼休みが終わる。

「彼方に光る星屑たちよ」I-1 より

創作大賞の恋愛小説部門に投稿されていたこの小説は、お仕事小説のような雰囲気ではじまった。こんなことを書くのも変かもしれない。だって、お仕事小説か、恋愛小説かなんて、本来は分けられないものだから。

医療機器メーカーの検査部門で、係長の省吾は、派遣社員である祐里に派遣の雇い止めを伝えなければならない、という場面からはじまる。本来の契約期間よりも早い終了を告げるという気が重い役割を、中間管理職であるが故にしなくてはならない。

けれども、当の祐里がそれに抵抗する。

中間管理職の板挟み。仕事をしている人なら誰もが味わう、板挟みという感情を追体験してしまうほど、作者の描写が優れていて、私の心の中をチクりと刺して、波紋となっていく。そして、「財産」と言われるほどの優れた耳の持ち主である祐里は、検査部に欠かせない存在であることが判明していく。

こういう、専門職の描き方が抜きん出ているがゆえに、制度からはみ出す人間的な感情が自然と滲んでしまう。

雇い止めを決めたのは、きっと誰か一人の責任ではなく、「本部」なのだろう。そう私は想像する。目先の人件費とシステムと、エクセルで作った表ばかりを眺めていると、そこで働いている一人一人の顔なんて、ないように思ってしまう。私もかつて本部で働いていた経験があるので、その無機質さを苦々しく思い出した。

省吾は普段現場のことを把握しない、どちらかというと「本部」側の人間だったように思う。だから、雇い止めを告げる時も、自分が悪者になりたくない、面倒くさい、その気持ちだった。

それが、祐里という存在を知って、初めて「顔」を見る。「派遣の人」ではなく「川嶋祐里」という人物そのものを。そしてその顔が魅力的であることにも気づく。顔が魅力的であることに気づくのは、恋愛のはじまりであるとともに、肩書きが解かれて一人の「人」が浮き上がった瞬間なのであろう。

「彼方に光る星屑たちよ」という作品は、この詩的な題名とは裏腹に、第一話からJTCの地味な現実の中を生きる人たちが描かれている。

華やかなこと、激しいことはこの話には起こらない。言葉を選ばずに言えば、面倒くさいことばかり起こっていく。けれどもこの面倒さこそが、日々の、人間生活の本質であることに気づいて、納得し、共感しながら読み進めてしまう。

そして、予鈴が鳴るだけで面倒くささを引き出されてしまっていた省吾は、自らをその面倒くささに差し出していくことになる。

傘を差し出せば、少し自分の端は濡れる。けれどもずぶ濡れになっている君は、放っておけない。これがね、最大のテーマで、このテーマに向き合い続けて20万字以上も書いた作者さんを、私は放っておけない。

全員を救うことはできない。人は、ヒーローじゃないもの。省吾だって聖人ではない。けれども手に傘は持っている。ハンカチも持っている。それを差し出すことはできるんじゃないか。

私が差し出せるものはなんだろう、と思う。近くで、泣いている人に。遠くで、困っている人に。自分が今持っているものだって大事で、自分の事情だってあるし、捨てたくないものもあるし、築いてきたものだってある。けれども目の前の人に、生きてほしいと思うのに、それはそんなに大事なことなのだろうか。

大きなものに流されれば目を背けたくなってしまうような端っこに向き合い続けた作者さんに最大限の敬意を示したい。そして、この作品が多くの人に読まれることを願っている。

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