【創作大賞作品を歩く(2)】書籍化を目指す人が、タイマーを押したくなる「物語」
創作大賞、応募期間もうすぐ終わりですね!
この賞のいいところは、応募者の作品を自由に読むことができる、という点にあります。
受賞を目指して本気で書かれた作品ばかりなので、どれも唸るほど面白いものです。そういった作品を「読む」のもこの期間の醍醐味の一つ。
とはいえ、応募数が非常に多いため、どの作品から読めばいいのか迷ってしまう人もいるかもしれないですね。
そんな読者の方が、少しでも素敵な作品と出会えるよう、お手伝いができたら…そう思って、私が実際に読んで心を動かされた作品を、これから紹介していこうと思います。
たとえ作者の方と交流があって、それがきっかけで知った作品であっても、今この文章を読んでくださっている方の視点を大事にした紹介を心がけたいと思っています。
📝今回紹介する作品
早速、気になった作品を紹介していきます!
『すくい』作:三條凛花さん
あらすじ
作者、三條凛花さんのあらすじをお借りします。
”リラ”というペンネームで生活実用書いわゆる”暮らし系”の本を書いている工藤莉羅。
大学卒業を機に少し年上の幼なじみと結婚した莉羅は、家事が大好き。料理もハンドメイドも片づけも掃除も。好きなことを楽しみながらブログに載せていたら、書籍化が決まった。
執筆に撮影、テレビ取材やサイン会と、リラの日々は目まぐるしく過ぎていく。ところが6冊目の本を出したとき、ある転機が訪れる。
これまでとまったく違う状況に置かれる中で、リラはもがいていた──。そうして選んだことは。
この物語、一言で言うと…
書籍化を目指す人すべてが、キッチンタイマーを押したくなる「物語」
📕これが好きな人、きっと好き!
女性主人公もので、しっかり厚みのある小説が好きな人は、きっと『すくい』が向いています。
柚木麻子作品
女性主人公を軸に、日常の中で起こるトラブルを描きながら、個人的な悩みにとどまらず、仕事や恋愛を通して社会や世間の問題にも目を向ける―
そんな柚木麻子さんの作品が好きな方には、『すくい』もきっとお気に入りの作品になると思います。
ちなみに私が好きな柚木麻子作品は、下記。
原田マハ作品
原田マハさんは、美術館の学芸員としての経験を活かし、さまざまなジャンルの小説を手がけています。中でも、専門的な仕事に携わる女性主人公を描いた作品が好きな方には特におすすめです。また、美しい表現と読みやすさを兼ね備えた文体に惹かれる方にも、『すくい』はきっと響くはずです。
ちなみに私が好きな原田マハ作品はこちら。
こんな人におすすめ!
書籍化を目指す人、全て
つまり、今創作大賞に本気で挑んで、結果をドキドキしながら待っている人すべてです。特に実用書(フード部門やオールジャンル部門)で挑む人は、いざ書籍化されたら、どうなるのか?どんな喜びがあって、困ったこと、悩みやトラブルがあるのか、あらかじめ知ることができます。
家事してる人、全て
家事に性別は関係ない。生活してる人なら誰でも必要なんですよ、というのが私の持論です。すなわち全ての、家事が得意な人、苦手な人に読んでほしいです。物語を読みながら、家事がいつの間にか、もっと好きになってますから。
キャラ推ししたい人、全て
あとでネタバレのところに書くんですけど…私、これを読んでとあるキャラに恋してしまいました…。それぐらい、魅力的なキャラがいたんですよ!
語りたい!私と語りたい人、読んでください!!
読んだらこんな気持ちになる
読んだら、こんな気持ちになります!
「夢」はゴールではないことを知る
象徴的なのが、最初の章が「終点の街」であることです。
最初から終点なの?
そうなんです、書籍化の「夢」を叶えたところから、話が始まるんです。これがこの話の独自性で、家事本作家で小説家の凛花さんしか書けない点だと思います。
ここ、痺れるなあ……
普通だったら、「ブログが書籍化されるまで」の話で一本になるじゃないですか。でもこの作品は、「叶えたその後」を描いている。
例えるなら――
白雪姫やシンデレラなら「王子と結婚してから始まる物語」
ヒーローものなら「街を平和にしてから始まる物語」
そう、夢が叶ったそのあとからでも、物語は始められるんです。
今すぐ立ち上がりたくなる(物理)
覚悟してください。
読んだら立ち上がりたくなりますから。
物理的にですよ?
だから、移動中に読むと、めちゃくちゃもどかしくなります。
例えば、この部分、引用させていただきます。
ボウルを二つ出して、熱々のごはんを入れる。
ひとつには、サイコロ状に切ったチーズ、塩昆布、揚げ玉を入れた。味つけにめんつゆ。白く透き通るようだったお米のつぶが、少しずつ茶色に染まっていく。
ああ〜…!!
今すぐおにぎり作りたい!!
それ、食べたい!!
うちに塩昆布もチーズも揚げ玉もあったし、幸いご飯も炊いてあったはず。
今これ書いてる時も、おにぎり作りたくなっちゃいました。
あと、好きな部分、ここです。
試してみようとしたけれど、たったの15分でも腰が重くなってしまう自分がいた。
じゃあ「1分」ならどうだろう?
キッチンタイマーを試しに1分セットして、スタートボタンを押してみた。
ダイニングテーブルの上の食器をキッチンに運ぶ。まだ時間がある。
クロスを濡らして絞る。まだ大丈夫。
花瓶の水を替える。そこでようやくアラームが鳴った。
すごい。1分あれば、これだけのことができるんだ。
これ読んだ時、立ち上がりたくなりました。
1分、セットしたくなりましたね…。
こんな風に、家事に限らず、行動のヒントがたくさん散りばめてあります。
実用書を実際に出版されている三條凛花さんの小説だからできることです。
物語の中にも入り込みたいし、今すぐ立ち上がりたいし…!
もどかしい気持ちになりました。
美しい文字列に体がじんわりする
美しい文字列を見ると、体がじんわりしてくることありませんか?
この作品を読むと、それが何度も何度もあって、じんじんが止まりません。
冒頭部分を、引用させていただいてます。
終点の街を走っていた。
スニーカーの底が、まだ冷たいアスファルトをとん、とんと蹴る。
通り沿いの街路樹はまだ裸のまま。
でも枝先にぷっくりと春を孕んでいた。
ここ、音読してください。
ああ…ものすごく気持ちがいいです。
リズム感があって、情景が浮かんできて…
川端康成の『雪国』を読んでいる気分になりました。
すでに本を出版されていて、小説執筆経験も長いとのこと、安心して読むことができます。
あのトラブルは、忘れられない
実は私、『すくい』を読んだの1ヶ月前なんです。
でも、いまだに忘れられていません。
『すくい』で起こった、「ともちゃん」のことは…
詳しくは、読んで確かめてほしいんですけど。
今私のnoteを読んでいる人はきっと、読者であると同時に書き手、発信者でもあると思うんですね。
発信する以上、反応がある。
嬉しい反応だと、嬉しいじゃないですか。
感想書いてくれた人、大好きになるじゃないですか。
──そういう人に、読んでほしいです。
これ以上言えません。読んだ人、DMで、語りましょう!
以下、ネタバレありなので…語りたい人と語るコーナー
誰推しですか〜?
やっと書けた〜〜!
語りたい人と語る醍醐味は、やはり「推し」です。
私はね…やっぱり…あの人でしょう!
そう、担当編集、夏目さん!
最初は、強引な食えない印象の担当編集だなあ…と思って印象は良くなかったんですよね。顔出ししろって言ってきたり…
でも、主人公リラが辛い局面で…
「リラさん」
喫茶店の扉を開けて飛び込んできた夏目は、息を切らしていた。スマホ以外なにも持っていないように見える。
いつも真ん中できっちりと分けている髪の毛が乱れて、汗で額に貼りついている。
そ…それだけで、惚れてまうやろ〜〜〜!!
ってなりました(笑)
あと、「ずるいのは僕に任せてください」痺れました。
カッコ良すぎる…。
メリーゴーランドに乗るところも好きでしたね…
観覧車に乗って欲しかったな(笑)
夏目さん、リラさんに気がありそうな気がします。
「莉羅さん、俺……」
夏目が手を伸ばしてきた。
彼の後ろから差し込んでくる西日で、表情がよくわからない。夏目の髪の毛の端まで、綺麗な橙色に染まっていた。
ここを読んで、呼吸が浅く、胸が苦しくなりました。
でもねー、リラさん、人妻なんですよね…。それも、初恋の素敵な男性と結ばれてるんですよ。それがちょっと、切ないというか…切ないからこそ、彼の魅力が光ってくるなあと思いました。
「んーと、……担当編集?」
ここ!ここ!やばいっす!私、完全に落ちてしまいました。
リィさん…見てますか??←
夏目さん…私にしとけって。(#私も人妻です)
三條凛花作品の花のような言葉
三條凛花さんの作品の中で、好きな表現はたくさんありますが、
引用過多にならないように、特に好きな表現を一つ。
世界の輪郭がくっきりと見えた。ふいに、足元がたしかになる。
ここの文もそうなんですけど、全体読んで、私は美しさに触れた時の、「じんじん」が止まりませんでした。
主人公、リラの夢が叶った。それを実感した瞬間です。
もう一度、引用のために読んでいたら、涙がこぼれました。
私も、自分で小説を書いていて、いつか書籍化、実写化など形になったらいいな、という思いで取り組んでいます。
誰に表紙イラストを書いてもらって、できれば平積みにしてほしい。
もし、実現したら、こんな気持ちになるんだろうな。
凛花さんは、実用書作家として、すでにこの体験をしている。
この気持ちを丁寧に、描いているな。と思いました。
もし、私が書籍化したら、こんな風に特別感を持って、過ごしたいな…と思いました。
凛花さんって、エッセイを読んでいる時も思うんですが、
美しい「書き方」じゃないんですよ!
生活の仕方、体験の仕方から違う。だから、こんな書き方になる。
文章は、生きるところから決まっている。
それを強く感じました。
赤い小さな粒が固まって葡萄みたいに寄り添っている。
子どものころ、この実を見つけると”当たり”だという気がした。色彩を失った秋の野原で、宝石みたいに綺麗なこの実はとくべつに見えた。
↑ここも大好きです。挙げていけばキリがありません。何度でも読みたい小説です。
そして、この本が書籍化したらきっと紙で読んで、いろんなところに線を引くと思います。
終わりに 私の正直な所感
私、創作大賞感想書くのにあんまり気が進まなかったんです。
なんか、私のケチ心っていうか、すごいものを見ると自信無くしちゃうんじゃないかとか、そういう、お猪口のような器の小ささでやっていたんですよ。
でも、素敵な作品を読んで、感想書いてみると、いい文章って何が大事なのか、そういう気づきがたくさんありました。
こんなにも、利己的な私に、素敵な作品を読ませてくださって、三條凛花さんに何度も何度も、お礼が言いたい。ありがとうございました。
読ませていただいて、感想を書かせていただいて、本当に良かったです。
創作期間、応募はもう少しですが、走り切りましょう。
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