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8年越しの答え ーどっぷり浸かったあの恋の後ー

母の病気がわかったのは、
あの人との関係が終わる頃。

未来のない恋に溺れている場合じゃない。
早く孫に会わせたい。その思いが強くなった。


あの人と終わり、
金沢の同期にも謝ったあと、
かなり長く1人の時間が続いた。

忘れよう、
気を紛らわそうと、
今思えば、色々と動いていた。


新しい男友達と少し近くなって、
デートしたり、映画を観たり、家に呼ばれたりもした。
照明が凝っていて、
とてもセンスのいい部屋で、居心地がよかった。
でも、惹かれたのは、その部屋だった。



会社の先輩に誘われて、
花火大会に出掛けてみたりもした。
好意を持ってくれていることは、
なんとなく気付いていた。
なかなか手を繋げない先輩に、
少しもどかしさを感じた。

会社の仲間と4人で富士山に登った時には、
濃い霧の中、手を引いてくれたり、
寒さを気遣ってくれたりもした。
優しさはたくさん感じた。
ただ、その先はなかった。


友達も私を心配して、合コンに誘ってくれた。
もしかしたら…、と思って行ってみた。
でも、やっぱり違った。
合コンはそれっきりだった。


そんな間も、数ヶ月に一度
連絡していたサッカー部の同級生がいた。

大学を卒業してからも、
なんとなく連絡が続いていた。


あの人のことを相談していたかどうかは
よく覚えていない。
浮気という後ろめたさと、
いずれ終わるという変な確信から、
話していなかったかもしれない。


金沢の同期のことは、少し相談していた。
同じ大学、同じ学部で、顔見知り同士だった。
大学の時は軽いイメージだったようで、
交わる関係ではなかった。


遠距離の元彼とは、もちろん顔見知り。
というか、チームメイト。

【 ーーー 大学時代 ーーー 】

試合に向かうために
彼氏と数人で車に乗せてもらったことがあった。
みんなで試合に向かう時間も、楽しかった。

満員の車内。
ふと、かかっている曲が気になった。
「え、この曲誰の?」
「これ?Zebrahead。知ってる?」
「えー、知らん…。けど、めっちゃいい!」
「貸そっか?」
「うん、貸してほしい!」
そんな会話に、彼氏は嫉妬していたらしい。

帰ってから彼氏の部屋でCDをかけた。
「やっぱ好きやわ、これ」
「そうか?」
「え、いいやん!」

彼氏とは趣味が全く合わないわけではなかった。
洋楽には興味がなかっただけ。
同じものを好きになって欲しいわけではないし、
好みの違いは仕方のないことだと思っていた。

彼氏の事はちゃんと好きだった。
長く付き合っていた。

卒業して、遠距離になる。
しばらくは、それも楽しんだし、
久しぶりに会った後は
淋しくて泣きながら帰ることもあった。

でも、あの人との出会いを経て
彼氏には謝ることしかできなくなる。

彼氏と別れたことも、自然と話したはず。
たまに来る連絡では、
そういう近況報告がほとんどだった。

母の病気の話も聞いてもらったことがあった。
特別なことを言うわけではない。
ただ、いつも最後まで聞いてくれた。


お互いの友達を誘って
数人でフェスに行ったこともあった。
オープンな付き合いが、自然で楽だった。


この時の私はまだ知らない。
その後の人生を、その同級生と共にすることを。


焦りもあるのか、
色々試すも
好きな人は現れていなかった。

「なかなか良い人見つからん」
そんな話をしたのかもしれない。

ある夜、電話で告白された。
「ずっと好きやった」

「…え??ずっと…?」
「うん…大学の時から、ずっと」

思わず言葉を失った。

本当に1ミリも気付いていなかった。

彼女に会ったこともあったし、
相談にも乗っていた。

「でも、彼女…」
「…うん。ずっと俺は無理やと思ってて」

びっくりして声が出なかった。

「でもやっぱり好きやし、今しかないと思って」
彼女との関係は、終わらせていた。

すぐには気持ちの整理が出来なかった。
ずっと友達として仲良かった人。

そういう関係になれるのか
想像ができなかった。

ただ、思っていてくれたことが嬉しかったのは、
嘘ではなかった。

連絡が続いていたことも、腑に落ちた。

そして
『あ、私、この人と結婚するかも』
と思ったこと。
それだけは確かだった。


大学時代の写真を見返した。

サッカー部の同級生だけで行ったキャンプ。
みんなで満天の星を見上げたのを思い出した。
ーーこの時も?

大学サッカーリーグでアシスト王に選ばれて
長居スタジアムのモニターに名前が載った時の
写真も出てきた。
自分のことのように嬉しかった。

たくさんの時間を共有していた。
ただ、色んな思い出を振り返るも
やっぱり何も気付いていなかった。

少しでもそういう空気になっていたら、どうだったのか…
考えてもわからなかった。

そして、
初めて2人で会うことにした。


なんばで会う。

たまたま入った店で通された席は
ソファで横並びに座るカップルシートだった。
少し戸惑いつつも、奥に座った。

ひと通り食事を済ませた。
今までと違う関係で、お互い少しぎこちない。

「手つないでいい?」
ふと聞かれた。

「うん」
近い方の手を出すと、そっと重なった。

大きくて、とても線が細い。

こんなにきれいな手をしてたなんて
今まで知らなかった。

「手きれいやな」
その手を両手で触った。

「そうなんかな?」
優しく笑っていた。


その店を出て、
手をつないで歩いた。

まだ、すこし恥ずかしい。

でも、どこか安心していた。

別の店に入った。
通されたのは、向かい同士で座る席だった。
さっきより距離があるのが、
少し物足りなかった。

一杯だけ飲んで、すぐに出た。


その日の帰り。

「付き合おう」
「うん」

関係が変わった。

私はこの時、
『この人と結婚するな』
と、もう一度思った。

知り合ってから8年。

友達だった時間は、
思っていたより長かった。

あの人と距離が縮まったZebraheadも
それよりも前の大学時代に
未来の夫に教えてもらっていたことが
きっかけだった。

そういうことかと、やけに1人で納得した。


私たちは1年も経たずに結婚した。

数ヶ月後には子供にも恵まれた。

母はその子を抱っこしてくれた。

あの時、
急ぐことを理解してくれた夫には
今も感謝している。

2人目の子は、
おばあちゃんには会えていない。
「いつも空から見守ってくれてるよ」
そう伝えている。


8年という時間は、
遠回りではなかった。

あの人との別れも、不安も
焦りながら過ごした日々も。

すべてが、
私たちが家族になるための時間だった。




🎵What’s Goin’ On? / Zebrahead


あの人との恋の話は
こちら⤵︎

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