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壊れたあと、残っていたもの

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青い薔薇が壊れた、そのあとの話です。

▷   薔薇が壊れた時の話
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私はしばらく、
壊れた青い薔薇を集めて部屋に置いていた。

捨てられなかった。

透明なフィルムの中に、
折れた茎と、
粉になった花びらが入っていた。

もう戻らない。

そんなことは、
見れば分かった。

それでも、
捨てられなかった。

彼氏からもらったから、
というだけではなかった。

あの日、
手をつないで歩いたこと。

笑ったこと。

帰り道の空気。

「大切にするね」と言った自分。

そういうものまで、
一緒に捨てる気がしていた。

だから、
壊れた花をそのまま持っていた。

─────

基くんのところに行った日。

何を話したかは、
あまり覚えていない。

部屋がぐちゃぐちゃだったこと。

勝手に入られたこと。

薔薇が壊れていたこと。

そんな話をした気がする。

私はたぶん、
怒っていた。

けれど、泣いていた。

でもその時、一番大きかったのは
苦しい驚きだった。

こんなことってあるんだ。

壊して、
謝らなくて、
片付けなくて、

でも、私が怒られるんだ。

世界って、そうなんだ。

そんな感じだった。

─────

しばらくして、基くんが言った。

「捨てていいよ」

私は返事をしなかった。

すると基くんは、
当たり前みたいに言った。

「ものはいつか壊れるんだから。
捨てても、大丈夫」

─────

その時、何が大丈夫なのか分からなかった。

壊れたじゃないか。

なくなったじゃないか。

元に戻らないじゃないか。

そう思った。

けれど、少し時間が経ったとき
ふと思った。

その日も薔薇は、
粉々のままタンスの上にあった。

けれど、薔薇が壊れても、
あの日のクリスマスは、壊れていなかった。

楽しかったことも、
嬉しかったことも、
「大切にするね」と思った私も、
ちゃんと残っていた。

バラが壊れても、基くんは変わらなかった。

────

ひと月後。

私は薔薇を手に取った。

少し迷って、
それから紙に包んだ。

そして、捨てた。

─────

今でも、
青い薔薇を見ると、かすかに思い出す。

薔薇が壊れたことじゃない。

壊れても、全部はなくならない。

そう思ったあの日のことを。

──────────
🫧この形の私

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