私はそこにいないみたいだった 🔥3
私は、そこにいたのだろうか。
存在していたのだろうか。
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ある夏の日、私は土曜の午前授業の帰り、
妹とバスを待っていた。
お腹はすいていたけれど、妹と話していると
待ち時間もそんなに苦ではなかった。
バスが来るまであと15分くらい。
そんな時、妹が急に嬉しそうに私の後ろ側を見た。
「あっ!」と声をあげて走っていった。
振り返ると、黒い車が5メートルくらい手前に
停まっているのが見えた。
父の車だ。
妹はニコニコしながら、
迷いなくその車に乗り込んだ。
私はその様子をぼんやり見ていた。
──ああ、やっぱり。
迎えに来たのは、私じゃなくて妹なんだ。
そんな予感は、車を見た瞬間からあった。
だって私は、妹がいないときに迎えに来てもらったことなんて一度もなかった。
“私なんか迎えに来てくれるわけがない”と、自然に思ってしまった。
父の方から目をそらして、地面の砂利を見た。
きっとこのまま、私の前を通り過ぎて行く。
その瞬間を見るのが、とても怖かった。
車はゆっくり進み、私の横を通り過ぎた。
少し先で止まった気配がしたけれど、私は足元から顔を上げなかった。
何も聞こえなかった。
声も、名前を呼ばれる気配も。
そして車はそのまま走り去った。
私には声をかけないんだ。
だって私のこと、好きじゃないもんね。
胸の奥が冷たくなった。
お腹がすいていたことも、
何もかもどうでもよくなった。
私はただ、黙ってバスで帰った。
悲しいとか、寂しいとか、そういうものが
心の底の方でドライアイスみたいに沈んでいた。
でも、私の表面は何も感じなかった。
悲しみも寂しさもどこか遠いことのように感じた。
父とも、このことを話すことはなかった。
後になって妹たちに聞く機会があった。
そして、こう言われた。
「止まって待ってたんだよ?
お姉ちゃん来ないなって、みんなで言ってたよ。
でも来ないから帰ったんだよ。」
──5メートルくらい先?
──声は一言もかけずに?
どういう気持ちで“待っていた”と言ったのか、
私には分からなかった。
“自分だけが、あの家の中で浮いている”
ずっとそんな感覚があった。
私だけが可愛がられていないような、
そんな確信にも似た感覚。
そんな状態の私が、自分から車に駆け寄って
「乗せて」
なんて言えるはずがなかった。
どちらが悪かったんだろう。
私は、どうすれば良かったの。
考えても、答えは出なかった。
ただひとつ覚えているのは、
あの日の私は、声をかけられるのをずっと待っていたということ。
誰もいない、陽の差すバス停で
私は黙って立っていた。
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🫧この形の私

