その時、父が初めて怯んだ 🔥5
あの日、私は初めて父に怒鳴り返した。
「こいつ何言ってんの?」
そう思った瞬間、
腹の奥から何かが一気に込み上げてきた。
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小学生の頃、
私はよく怒られていた。
理由は、正直よくわからなかった。
ただ、家の中にいるときの私は、
いつも「間違っている側」だった。
父は毎晩怒鳴り、
母はため息をついた。
父や母が嫌い、そういう感覚は、
小学生の私の心には、全くなかった。
怒られれば泣く、涙を流しながら謝る。
そして怒られてしまった自分を責め続ける――。
それが当たり前の世界だった。
――
中学3年になっても、私はまだ怒鳴られていた。
頻度は小学校の頃より少なかったけれど、
父は相変わらず私にだけ怒鳴っていた。
怒鳴られるたびに胸がざわつき、動悸がして、
体全体が重く沈んでいくような感覚に襲われた。
”中学生にもなって、まだ親から怒鳴られる私“
それは、ほんの少し残っていた私のプライドを溶かすには、十分すぎるほどだった
怒鳴られるたびに、情けなくて惨めで、
自分が劣った生き物のように思える
あの感覚がよみがえってくる。
中学生になっても、私は泣き続けた。
――
私が中学3年生のとき。
その均衡が、崩れた。
その日、父は、いつものように怒鳴ってきた。
理由は覚えていない。
靴の揃え方とか、そんな些細なことだったかもしれない。
私が明確に悪いことをしたわけでもなく、
ただ普段の行動にいちゃもんをつけるような怒り方だった。
その瞬間、今まで感じたことのない思考が頭をかすめた。
「こいつ何言ってんの?」
初めて、父の言っていることがおかしいと感じた。
次の瞬間、私は人生で初めて、腹の中に燃えるようなマグマが煮えたぎるのを感じた。
グツグツと煮えたぎったマグマは、
気管を通過し、口から一気にほとばしり出た。
それは、自分でも信じられないほど激しいものだった。
胸が焼けるように熱くなり、体が震える。
長い間押しつぶしてきたものが、
一気に破裂した。
私は、吠えるように父へ怒鳴り返した。
「アンタ、おかしいんじゃないの!?
そんなふうに怒鳴れば、私が怯えて泣いて、
思い通りになると思ってるんだろ?
もう二度と、アンタの言葉に支配されないよ。
人にはね、言っていいことと悪いことがあるんだよ!」
怒りで頭の中が真っ白になっていたので、細かい言葉は覚えていない。
ただ、叫んだ。
恐怖より先に、怒りと反撃の衝動が勝っていた。
そして、言った瞬間――父が一瞬怯んだ。
目が泳いだ。
それを、私は見逃さなかった。
今まで決して怯むことのなかった父が。
泣き叫ぶ私をねじ伏せるように怒鳴り続けた父が。
初めて、怯んだ。
その瞬間、私の中にざわっと何かが走った。
血液が全身を駆け巡るのがわかる。
血がたぎる、とはこういうことなのか。
快感、これは快感だ。
鳥肌が立ち、胸の奥が熱く蠢くような感覚。
“勝った” と感じた。
食うか食われるか。
勝つか負けるか。
そんな感覚が
身体の奥から湧き上がっていた。
私は泣かなかった。
涙なんて一滴も出なかった。
言いたいことを言って、大きな声で怒鳴り返し、
どすどすと足音を響かせながら父の前から去った。
私はもう、泣いてばかりいた子どもじゃない。
弱いだけの存在じゃない。
お前なんかに負けない。
あの日、私の中に初めて“戦う”という感覚が生まれた。
その日から私は、
“負けない方法”を探し続けることになる。
それが、正しいことだと思っていた。
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🫧この形の私

