「ヒゲみたい」と笑った日と、笑えなかった日
しばらくの間、
私はヒゲみたいな形のカサブタをつけて過ごしていた。
「ヒゲみたい」
友達にそう言われて、
私は「ほんとだね」と一緒に笑った。
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小学校入学に向けて、
先生たちは少し厳しくなった。
それでも、友達と遊ぶ時間は楽しかった。
当時、私は体が小さかった。
ある日、同級生におんぶをしてもらった。
「きゃあー!たかーい」
背の高い同級生の背中から見る景色。
それはいつも私が見ている世界よりずっと高かった。
「わぁー歩いて歩いてー!」
周りの子達も手を叩いて飛び跳ねた。
しかし、2、3歩前に進んだところで、
突然視界が反転した。
私は頭から落ちた。
一気に地面が視界に広がり、視界は真っ暗になった。
そして、頭ではなく、顔を地面にぶつけた。
私はわんわん声を上げて泣いた。
慌てて駆け寄ってくる先生の顔。
その後のことは、あまり覚えていない。
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傷は思ったより大したことはなかった。
顔を少し擦りむいただけで済んだ。
不思議なことに、鼻のてっぺんは無傷で、
鼻の下だけが、ずるりとすりむいていた。
しばらく私は、髭みたいな形のカサブタをつけて過ごした。
友達に「ヒゲみたい」と笑われて、
私も「ほんとだね」と一緒に大笑いした。
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「なにそれ、どうしたの」
ある日、母の妹の「まりちゃん」に言われた。
「これ?おんぶしてもらったら落ちて擦りむいたの」
私が言うと、その人は大笑いして言った。
「普通、擦りむくなら鼻の頭じゃない?
なんで鼻の下なの、鼻が低いからかな?
面白すぎる」
お腹を抱えて大笑いするまりちゃんの顔を見ながら、
なぜか少しだけ胸がチクっとした。
これ、おかしいの?
「みのりちゃんは、どっちかと言うと、
のっぺり顔だもんね」
のっぺり顔──。
まりちゃんは相変わらず、私の横で
涙を流して大笑いしていた。
その笑い声が少し遠くなった気がした。
私は「そうかぁ」と、笑ったけれど、
友達の時のように笑えなかった。
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小学校入学まで、あと3ヶ月の頃。
まわりは、ランドセルの話で
盛り上がっていたけれど、
私はちっとも楽しみではなかった。
いつまでも、保育園にいたかった。
積み木をして、お遊戯をして、
お昼寝をして
お外で遊んでいたかった。
母が言った。
「もうすぐ一年生になるんだから、
しっかり勉強して頑張ってね」
「うーん」
私は、曖昧に返事をした。
母は、お風呂掃除をしながら私に背を向けたまま言った。
「お昼寝もなくなるから、
いつまでもそんなのじゃ、あなたが困るんだよ」
そして、そのまま私の横をすり抜け、台所に歩いていった。
……お昼寝、なし?!
私はその場にしゃがみこんだ。
入学は、希望というより、試練だった。
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🫧この形の私

