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「どっちが正しいと思う」と聞かれた夜 🔥3

「どっちが正しいと思う」

その言葉を、はっきり覚えている。

小学校に入る前の、
父の記憶はほとんどない。

写真の中には父がいる。
でも、私の中には、ほとんどいない。

この夜初めて父をはっきり認識した。
そして、“怖い”と思った。

────

それは、私が6歳ごろ。

私は居間に布団を敷いて、
義祖母と共に眠っていた。

仏壇のある和室。

私たちの隣では、父がテレビを見ていた。

その日、私はまどろみの中、
うっすらと目を覚ました。

声がする。

「なんでそんなことになるんだ!」
「そんなこと、言われても……」

誰か喧嘩してる?
……お父さんと、お母さん?

だんだんと、頭がはっきりしてきて、
それが、父と母の声だとわかった。

薄暗い部屋の中、酔った父の声が低く響く。

「もういや…」

お母さんが泣いてる。

私は一気に目を覚ました。
背中に一気に力が入る。

どうして?
なんでお母さん、泣いてるの?

しばらくすると、母が小さく泣きながら玄関から出ていく音がした。

脳がぐにゃぐにゃと変形する感じがした。

息が詰まる。
動けない。

お母さん、どこ行くの?
なんで?

私は布団にくるまって、縮こまった。
体が脈打つほど心臓がバクバクして、
耳まで揺れるようだった。

置いていかれたの?

寒くもないのに、口がカチカチと震える。
涙が両目からざあっと溢れた。

グスッ

分からないように声を殺していたのに、
鼻をすする音が漏れてしまった。

「おい、みのり」

後ろから父の声がする。
思わず、身を固くする。

「みのり」
背後から、また父の低い声が聞こえた。

私は諦めて、起き上がり、父の方を見た。
その瞬間、涙と鼻水が一気に溢れた。

泣いている私に、父は言った。

「お前はお父さんとお母さん、

どっちが正しいと思う」


指が冷たい。

なんていえばいいの。
分からなかったけれど、必死に考えた。

「……お父さん……」

掠れた声で、なんとか、声を出した。

父は「そうだろう? 早く寝ろ」とだけ言った。
そして、また晩酌を続けた。

私は布団に潜り込んだ。
膝を抱えて体を小さくする。

義理の祖母は私の横にいるはずなのに、
何も反応しなかった。

翌朝には、母は帰ってきた。

しかし、私の中の不安は消えなかった。

──────────
🫧この形の私

あなたの心に、なにか残ると嬉しいです。
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