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行かないで。 🔥4

父と母の関係は、さらに悪化していた。

会話はほとんどなく、
顔を合わせれば母は怯え、
父は威嚇するだけだった。

修復は、もう不可能に思えた。

それでも母は、家を出ようとはしなかった。

父の怒声が夜中まで響き、
家中に怒鳴り声が響く。

そのたびに、それぞれの部屋で身を縮ませ、
私たちは息を潜めて耐えていた。

─────

また、自分が壊れていく。

それは、私にとって馴染み深い感覚だった。

小学校から高校、
そして一人暮らしを経て、

自分の限界がどこにあるのか、
なんとなく分かっていた。

ここに居続ければ、
確実に自分が壊れる。

それも、なんとなく分かっていた。

母も妹も、
家を出ることは考えていないようだった。

理由は分からなかった。

そんなある日、
短大時代の友達、アカリに会った。

ドライブをしながら、
たわいもない話や近況を話した。

アカリといると、
自然と胸の奥が少し軽くなる。

赤く染めた髪とネイルがよく似合う美人で、
いつも堂々としていて、
私はずっと憧れていた。

私は思い切って話した。

「最近、家が辛くてさ。
もうそろそろ出たいんだけど……お金なくて」

するとアカリは笑って言った。

「そっかぁ。
結構探すと家賃が安くて住みやすいアパートあるよ。
私、何件か知ってるから探してみようか。
いいのあったら声かけるよ」

数日後、
何件かの物件情報がLINEに届いた。

「ここ、住みやすそうだよ。
会社からも近いね」

その中には、
なんとか一人でも暮らしていけそうなアパートがあった。

初めて、
希望が少し見えた気がした。

私は母に言った。

「もう限界だから、家を出ようと思う」

母は少し黙ったあと、
声を震わせて言った。

「私たちを置いていくの?」

「見捨てるの?」

その言葉には、
私を責めるような響きが混じっているように感じた。

「そういうわけじゃないけど……
毎日ここにいるの、もう辛いんだよね。
アカリがアパート見つけてくれたから
そこで暮らそうと思う」

私は言葉を絞り出した。

母は涙目になり、続けた。

「みのりがいなくなったら、
お母さん、どうしたらいいの?」

その言葉は質問の形をしていたけれど、
答えを求めている言葉ではなかった。

母と妹の目。

その言葉に、私は何も言えなかった。

結局、私はアカリが探してくれたアパートの
下見にも行かなかった。

私は家に残った。

──────────
🫧この形の私

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