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倉庫のコーヒー缶 🔥4

正社員は、私ひとりになった。


パートさんが2人ほど。
必死に仕事を回した。

そこに、新しく二人が入ってきた。

1人は19歳の若い子。
もう1人は私の二つ上の人だった。

新たな気持ちで頑張ろう。

私は、笑顔で迎えた。

─────

けれど、2ヶ月が経つ頃、
違和感が生まれた。

毎日、同じ場所に置かれている缶コーヒー。
一口だけ飲まれ、倉庫に放置されている。

倉庫は、在庫を置く場所。

飲みかけの物を置く場所はなかった。


お客様のかな。
片付け忘れかな。

けれど、それは毎日続いた。
そして、置かれている空いた缶コーヒーは、
いつも倉庫にある在庫の種類ばかりだった。

私は、部署の人たちには、なにも言わなかった。
誰かを責めても、何も変わらないと思ったからだ。

そう思った私は、上司に伝えた。
「これは、まずいと思います」
感情ではなく、事実としての話。

できるだけ、冷静に。
それを意識して話したつもりだった。

返ってきたのは、

「まあまあ、落ち着いて」
「少し冷静に考えよう」

「そんな、犯人探しみたいなことをしても」

そんな言葉だった。

いや、これは犯罪でしょ。

そう思ったけれど、口には出さなかった。

困り果てた私は、総務の人に相談した。

「冷静でいられる自信がないので、
一緒に話して欲しいです」

私は、人に伝えるのが下手だ。

冷静なタイプのその人に頼んで
一緒に話をしてもらった。

「気持ちはわかるけど」
「ここは一旦、様子を見よう」

上司からは、変わらず、そう言われた。

でも、様子を見る間も、
状況は何も変わらなかった。

─────

ある日、新しく入った若い子が私に言ってきた。

「ロッカーの鍵がないんです」

どこを探しても見つからない。

しかし何故か夕方、
ロッカーの机の上に放置されていた。

「え、どういうこと……?」

そこは、何度も探した場所だ。

ふたりで顔を見合せた。
意味がわからなかった。

─────

在庫が合わない。
試食のお菓子がなくなる。
コーヒー缶も毎日置いてある。

不可解なことが続いた。

問題は、もう個人の違和感ではなかった。

それでも、上司は動かなかった。

私は、間違ったことは言っていないと
そう思った。

騒ぎたかったわけでも、
誰かを責めたかったわけでもない。

「これは放置してはいけないと思います」

そう伝え続けただけだった。

諦めず、伝え続けた。
諦めるわけには、いかなかった。

毎日、同じ光景を見る。
同じ違和感を抱える。
同じ言葉で流される。

その繰り返しの中で、
私の中で何かが静かに壊れていった。

ある日、体が動かなくなった。

理由ははっきりしていた。
恐怖でも、怒りでもない。

正しさが、どこにも届かない場所に
立たされ続けたこと。


いじめを受けても、
孤立してもなんとか立てていた。


それが、こうも簡単に音もなく崩れるなんて。

私は、病んだ。

──────────
🫧この形の私

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