Photo by
aide_tsumugu
アルバムと私のはじまり
棚の奥から、ひとつのアルバムを見つけた。
赤い背表紙にクマの模様が描かれた、
懐かしいアルバム。
思わず手に取り、ページをめくる。
この頃の私は、まだ知らない。
この家が、やがて地獄になることを。
私は、この世にある苦しみなんて
何も知らない顔をしてこちらを見ている。
写真の中の私は、まるで"愛されている子ども”
のように見える。
でも本当に、私は、愛されていたのだろうか。
それとも、そう見えるだけなのだろうか。

私はその家の長女として、そして母方の祖父母の
初孫として生を受けた。
アルバムにはたくさんの写真が残っている。
何枚も同じような、私のショット。
誰かに抱かれ、写っている人たちは、
皆、笑顔だ。
少し大きくなった私は手を振りあげたり、無邪気に笑っている。
少なくとも、私の誕生は疎まれたものではなかった。
それは、確かだ。
─────
母は産後3か月で、もともとの仕事だった
保育士に復帰した。
その頃から私は、昼間は祖父母の家で過ごし、
夜になると家に戻る生活をしていたという。
けれど、私の記憶の中にある「家」は、
ほとんどが祖父母の家だ。
祖父の穏やかな笑顔。
祖母のやさしい声。
一緒に食べた納豆の味。
そこには、怖さも、緊張もなかった。
ただ安心だけがあった。
一方で、自分の家で夜を過ごしていたという記憶は、ほとんど残っていない。
その事実を知ったのは、ずっとあと、私が大人になってからだ。
私の最初の居場所は、祖父母の家だった。
幼い私はそれがすべてだと思っていた。
今振り返ると、その居場所は、はじまりの一瞬に
過ぎなかった。
───────
🫧この形の私

