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親孝行しないとね 🔥3

「おばあちゃんは、みのりの育ての親みたいなものなんだから、親孝行しないとね」

母は、その言葉を何度も言った。

祖母の前でも、親戚の前でも、
家でふたりきりの時でも。

思い出したように、
確かめるように、
言い聞かせるように。

一度ではなかった。

何度も。
本当に、何度も何度も聞いた。

─────

私は小学二年生だった。


親孝行って、何だろうと思った。

肩をたたけばいいのかな。
お手伝いをすればいいのかな。
言うことをちゃんと聞けばいいのかな。

でも、どれも違う気がした。

お母さんがそう言うなら、
それはきっととても大切なことなんだろうな。

なんとなく、そう思った。

─────

祖母は、いつも優しかった。

一緒にいてくれた。
ごはんを作ってくれた。
具合が悪い時は、そばにいてくれた。

私は祖母が好きだった。


「恩返ししないとね」

母の言葉が頭の中で響く。

好きなだけじゃ、ダメなのかもしれない。
好き、では足りない。

感謝しないとね。
恩返ししないとね。

そう言う母の顔が浮かぶ。

できてないのかな。
ちゃんとできてない私は、
悪い子なのかもしれない。

悪い子には、なりたくなかった。

─────

祖母の前でその話になるたび、
私は少し息がしづらかった。

母の言葉に、祖母は言った。

「そうね、子供たちはみんな私が
面倒見たんだからね」

「そうよ、孫たちみんなの育ての親だよね」

母のテンションは高かった。

私は祖母の顔と、母の顔を交互に見比べた。

何か言わなきゃいけない気がする。
でも、何を言えばいいのか分からない。
ありがとう、で合っているのかな。

うん、だけでいいんだろうか。

黙っていたら、
ひどい子なのかもしれない。
私は幼い頭で考え続けた。

結局何も言えなかった。

─────

返さなきゃ。

その気持ちだけが、
まだ小さい胸の中に、
重たく置かれていた。

──────────
🫧この形の私

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この出来事を、別の視点で読む

▷  母が「親孝行」をして欲しかった理由(考察)
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