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苦しいと思うのは、おかしい 🔥3

結婚してから、戸惑ったことがある。
それは、“距離感”。


夫の家族の距離感は、
私とは明らかに違っていた。

でも、結婚した以上、うまくやらないと。

”郷に入りては郷に従え“
そう唱えながら日々を過ごした。

義理の家族を大切にしなさい。
それが、結婚する時に
親に言われたセリフだった。

─────

「基くんと二人の時間も好きなんだけどな」
「たまには基くんと二人がいい」

夫は首を傾げた。

「俺の家族が、嫌いなの?」

「そんなことで、ごちゃごちゃ言ってたら
やっていけないよ」

何も言えなかった。

元々、人付き合いには自信がない。

私は、“ダメなやつ”なの?
私がこう望むのは、わがままなの?

─────

それからは、ただひたすらに、
夫と、夫の家族のペースに合わせて
生活しようと努力し続けた。

誰かが家に来たら、どんなに辛くても
笑顔で出迎えた。

歓迎している。

そんな空気を出すように意識していた。

苦しいけれど、そうしなければならないもの。
そう思っていた。

─────

そうしているうちに、数ヶ月が過ぎた。

苦しい感じは、変わらずあった。

それでも、自分に言い聞かせた。

『人付き合いが悪いよりは、
いい人の方が優れている。』
『相手に合わせられるようになるのが、
大人になるということ。』

『苦しいと思うのがそもそも、”おかしい“。』


夫の家族に、嫌な態度を取られることはなかった。
それなりに、仲間のように接してもらっていると感じていた。

─────

それでも、体は私の気持ちとは違う動きをした。

夫の兄や妹が我が家に泊まりに来ると、
決まってその後、熱を出した。

嫌だなぁ、また熱が出た。
そう思った。
恥ずかしかったし、申し訳なかった。

─────

その日は、仕事だった。

夕方家に帰ると、義妹と義兄が
家にいた。

「みのりちゃん、おかえり」
「わぁ、来てたんだ!ただいま!」

私は、明るく答えた。

「基お兄ちゃん、もうすぐ帰るって
お父さんも来るよ」
義妹は笑って言った。

─────

「ご飯どうするの?」

「お父さんが、基お兄ちゃんと買いに行ってるよ」
「これ、お土産」

義妹は、箱を出してきた。

「わぁ、これいつものロールケーキだ」

私が歓声を上げると義妹は笑った。

「そ。みのりちゃんが好きな、いつものやつ」

「いつもありがとう!」

私は大事に箱を抱え、冷蔵庫に入れた。

─────

机の上に置かれたお惣菜。

ピザ、お刺身、唐揚げ、マカロニサラダ。

私は小皿を用意しただけだ。

みんなで食べて、テレビを見る。

「さて、片付けるか」
義妹が腰を上げた。

「あ、私が……」
慌てて立ち上がると、義妹は笑った。

「あ、みのりちゃんは座ってて。
お兄ちゃんたちとやるから」

え、なんか申し訳ない。

どうしていいか分からず、座っていた。

「このくらいやるよ」
義兄も笑ってお皿を運ぶ。

これって、いいの?
何が正解?

ソワソワしていると、義父が腰を上げた。
「さて、そろそろ帰るか」

「バイバーイ」
玄関まで見送り、部屋に戻る。

片付けなくても、座っていても
誰も何も言わない。

誰も怒らなかった。

それなのに、私は何故か落ち着かなかった。

─────

母が、かつていた環境に比べれば
それは、ずっと楽なはずだった。

翌朝。
だるさを感じ、体温計は7.6度。

まただ。

自分にガッカリする。


「みのりちゃんは繊細だよね。
私たちは一家みんな体が強いからさ」

「いや、私らが強すぎるのか」

そう言って笑う、夫や義妹たちの言葉を聞きながら、
泣きそうになる。


弱くて、ごめんなさい。

グッとこらえて、笑顔を作った。

月に3、4回はそういう日があった。

─────

この状況を、熱を出さずに
乗り切らなければならない。

そう決意した。

けれど、
それからも
私の体は言うことを聞かなかった。

苦しいと思うのが、おかしい。
そのたびに私は、

自分に言い聞かせていた。

──────────
🫧この形の私

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