見出し画像

私は普通の高校生だった──家に着くまでは 🔥2

放課後の教室は、少しだけ安心できる場所だった。

窓から入る風はぬるく、
カーテンがゆっくり揺れている。

友達がくだらない話で笑っている。
誰かが消しゴムを投げる。
机が少しだけ鳴る。

バタン!

耳が動く。肩がビクッとする。
ななめ前の男の子が教科書を拾っている。

なぁんだ、教科書か。
びっくりした。

大丈夫、大丈夫。
怖くはない。

「ねえ、今日さ」

そう言って、私は普通に声を出す。
喉が締まらない。
息を止めなくても、大丈夫。

この子は私を殴らない。
急に怒ったりしない。

大丈夫。

笑う。
自然に。

「あはは」

私、ちゃんと笑えてる。
いい感じに見えるはず。

「わぁ、なにそれ、すごいじゃん!」
面白いことを言い合って大笑いもできる。

私、笑ってる。

普通の人間みたい。

「バイバーイ!またパン食べようね」

友達と別れ、道を歩く。

私は、普通の高校生だ。

帰り道、夕方の光がアスファルトに反射している。
影が長く伸びる。


角を曲がって家が見えた瞬間、口元が
すっと下がる。

足が進みにくくなる。


体が重い。


玄関の前で足が止まる。
玄関の扉を見ているはずなのに、
視界が狭くなったような感じがした。

鍵を回す音が、やけに大きい。

目から光が消えた感覚が、自分でもわかる。


扉を開けた瞬間、私はもう別人だった。

──────────
🫧この形の私

▶ ︎  次の出来事へ(妹との格差🔥4

←  この章の目次へ【崩壊|逆襲】
←  この物語全体を読む【シリーズ一覧】

いいなと思ったら応援しよう!