不穏の家 🔥4
実家には、いつも張りつめた空気があった。
誰かが怒っているわけではない。
けれど、気を抜くと壊れてしまいそうな、
薄い膜のような緊張。
父は家に帰ると、
苛立ちを隠そうともしなかった。
声は大きくなり、物音が荒くなる。
酒とタバコだけが、
機嫌を保つための道具のようだった。
母は、深夜まで働いていた。
家にいても、どこか遠くにいる人のようだった。
仕事の話はよくしたけれど、
家の中のことには無頓着だった。
そして母は、私にだけ愚痴をこぼす。
自分がどれだけ大変か、
どれだけ我慢しているか。
私は黙って聞きながら、
母を守る役を、いつの間にか引き受けていた。
家の中は、誰も元気ではなかった。
妹はいつも黙っていて、
笑っていても、目だけが疲れていた。
母と私と妹は、ひとまとまりに見えたかもしれない。
でも、それは支え合いというより、
離れられないだけの形だった。
誰かが楽になると、
誰かが苦しくなる。
そんな均衡の上に、家族は立っていた。
この家にいる限り、
誰も幸せにはなれない。
そう感じながらも、
どうすれば抜け出せるのかは、分からなかった。
私はただ、
この家の機嫌を損ねないように、生きていた。
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🫧この形の私

