結婚式のドレス
地元に帰ってしばらくした頃、
一通の招待状が届いた。
差出人を見た瞬間、胸が跳ねた。
ヤマダさんが、結婚する。
「うわぁ」
嬉しさで思わず声が出た。
私はすぐに電話した。
「おめでとうございます。
招待状、受け取りました。
すごく嬉しいです。絶対行きます」
電話口の向こうで、ヤマダさんも喜んでくれた。
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私は早速、結婚式用のドレスを探しに行った。
条件は多かった。
できるだけ安く、派手すぎず、
肩や胸元は控えめに。
普段でも着られるシンプルなもの。
何軒も店を回ったあとで、ついに出会った。
それは、薄くてシャラシャラと軽やかな生地。
もしかしたらオーガンジーという素材だったのかもしれない。
下地の上にさらに薄い生地が重なっていて、
ほんのり光沢のあるラメが散りばめられていた。
シンプルだけど、柔らかく、
可愛らしいワンピースだった。
3000円。
価格は申し分ない。
試着してみると、思わず笑みがこぼれた。
「これ、私にぴったりかも」
スタイルがよく見えて、すごく可愛い。
間違いなくこれだ。
私は迷わず決めた。絶対これにしよう、と。
淡いピンク色のストールも一緒に買った。
膝掛けにもなるし、合わせるとちょうどいい。
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家に帰り、ワンピースを着てみる。
「やっぱり素敵」
玄関で靴を履いて確認していると、
母が帰ってきた。
「どうしたのその格好」
「ヤマダさん、結婚するんだって」
「へぇ、可愛いドレスだね」
褒められて、嬉しかった。
─────
結婚式当日。
バスに乗り、会場へ向かう。
久しぶりに会う顔ぶれに、心が浮き立つ。
到着すると、ヤマダさんと旦那さん、
そしてヤマダさんのお母さんが迎えてくれた。
みんな笑顔で、温かかった。
ヤマダさんの計らいで、後輩とケーキを運ぶ役まで任された。
少し緊張したけれど、それも嬉しかった。
帰り際のことだった。
「みのりさん、今日は来てくれてありがとう」
ヤマダお母さんが笑顔で言った。
「いえ、出席できて、嬉しかったです」
私は笑顔で返した。
ヤマダお母さんが、私の耳元で言った。
「あのな、結婚式のドレス、白はあかんねん。
花嫁、白やろ?被ったらあかんねん」
「え?」
心臓が跳ねる。
そのままの調子で、ヤマダお母さんは続けた。
「今回はええねんで、この子の結婚式やから。
気にせんでええよ。
でもこれからも知らんと、
みのりさんが恥かくやろ。それは嫌やから」
そうだったのか――全く知らなかった。
私はヤマダさんのところに駆け寄り、
全力で謝った。
「ヤマダさん、ごめんなさい!」
「主役を食うとかそんなつもり、
全然なかったんです!」
それを聞いて、ヤマダさんも、
ヤマダお母さんも大笑いした。
「そんなん思うわけないやん。
ストールピンクやし、大丈夫やで。
主役食うとか、気にならへん」
ヤマダさんは、純白のドレスで笑う。
「ほんま、相変わらず素直でおもろい子やなぁ。
気にしたらあかんで。今後の話や」
ヤマダお母さんが手を叩きながら言った。
「教えてくださってありがとうございます!」
教えて貰えて、良かった。
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けれど、同時に私の中には
別の気持ちが頭の中にモヤのように渦巻いた。
家では、誰も何も言わなかった。
母は、ドレスを見ていた。
そのまま、下を向いてドレスを見つめた。
それから、その白いドレスは
私のタンスの奥の、奥の方で眠り続けた。
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🫧この形の私

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