クマノさんは、何も変わらず笑っていた
私の元気がなくなっても、
クマノさんは、変わらなかった。
「おい、飲みに行くぞ」
そんなふうに雑に誘ってくれる。
“来てもいいよ”ではなく、“来いよ”に近い。
その乱暴さが、逆にやさしかった。
知らない飲み会には呼ばれなかった。
いつものメンバーで、いつもの店で、くだらない話をして、大笑いして終わる。
その時間だけは、少し普通の人になれた気がした。
でも、心を病み始めてから、何かが変わった。
同じように誘われても、怖くなった。
本当は迷惑なんじゃないか。
本当は来てほしくないんじゃないか。
無理して声をかけているだけなんじゃないか。
今までどうやって笑っていたのか、わからなくなった。
一生懸命、場を盛り上げようとした。
変に黙らないようにした。
期待に応えなければと思った。
家に帰ると、前より疲れていた。
クマノさんは、何も変わっていなかった。
変わったのは私の方だった。
やさしさを受け取る力が、なくなっていた。
──────────
🫧この形の私

