30数年放置した「走るOS」をアップデート!厚底スパイクに魂を売った話
「単なるダイエットのはずだった」
20kgの減量に成功し自分の体が軽くなったと感じたとき、私の中に眠っていた「スプリンター魂」がふつふつと目を覚まそうとしていました。
しかし、30数年ぶりに戻ろうとしたタータントラックは、私の知っていた世界とは一変していたのです。
かつて土のグラウンドで汗を流した昭和・平成のランナーなら、現在の競技シーンを見れば誰もがこう叫ぶはずです。
「良いのかい、あんな魔法の靴履いて!」と。
私が「日本記録を目指す」という大いなる勘違いに突き進むことになった、4つのトリガー。
今回はその最大の功労者(あるいは戦犯)、「厚底スパイク」との出会いについて語ります。
「厚底スパイクという黒船の襲来」
高校時代の部活動で短距離をしていました。
競技歴は高校時代のみであっさり引退。その後、体型は「体重別競技」が似合うようになりながらも、陸上競技自体は好きでオリンピックなどテレビで楽しんでいました。
そんな時かなぁ、青山学院大学が躍進していた箱根駅伝で異変に気づきます。
選手がこぞって、ありえない厚さの見たこともない形のシューズを履いている。
NIKEの「ヴェーパーフライねくすとなんちゃら」が世界を席巻した瞬間でした。
見た瞬間は正直「あれは何?許されるのか?」と思いました。
私たちの時代、招集所でのスパイク検査は厳格そのもの。派手な色にありえない厚さのシューズをトップ選手が履くなんて、薄くて軽いシューズが正義だった世代からすれば、まさに目から鱗でした。
その驚きは、短距離界にも襲来します。
東京オリンピック以降、世界陸上などの大舞台で短距離スパイクまでもが
「 厚 底 」になっているのに気がつきました。短距離をしていた身にとっては長距離の時以上の衝撃です。
「おいおいいいのかい、あんなドクター中松のジャンピングシューズみたいな靴、ホントにいいのかい?陸連さんーー!」
そう毒づきつつも、心の奥底では「履いたらどんな感触なんだろう?」という抗いがたい好奇心が静かに、しかし確実に芽生え葛藤していました。
絶望的なまでの「レベルの向上」
ここで、陸上に詳しくない方へ。この「厚底」の登場以降、日本の陸上界にどれほどの激震が走ったかをお伝えします。
日本国内で一番大きなガチ大会「日本選手権」。今年2026年の100m参加標準記録(出場するための条件)は、何と 「10秒21」 です。
ピンとこないかもしれませんが、私と同じ世代の元・陸上部員なら、この数字を見て腰を抜かすはずです。
なぜなら、私が現役だった30数年前の日本記録が 「10秒34」 だったからです。
つまり、当時の日本記録保持者がタイムリープして現代にやってきても、日本選手権にエントリーすらできない。それほどまでに、道具の進化とフィジカルの向上によって、アベレージが底上げされているのです。
「少し痩せた勘違いおっさん、魔法の靴に挑む」
陸上の興奮から離れて30数年。
「あのスパイクを履けば、今の自分はどうなるのか?」そのメラメラとした欲望が、ダイエットに成功して調子に乗ったおじさんの背中を追い風参考のように強烈に押しました。
定価3万円超。高校時代の倍以上の値段がするその「魔法の靴」は、ただの趣味で履くにはあまりに高貴で、失礼な代物です。
何より、単に痩せたくらいでは恩恵を受けるどころか宝の持ち腐れ確定。
「それなら、この靴に相応しいハムストリングを作り上げてやる」
こうして、健康のためのジョギングは日本記録を目指してみる「競技」へと変貌してしまったのです。
次回は、「大会出場を目指し日本記録を確認すると、ん?行けんじゃない?という壮大な勘違いの連鎖」をお送りします。(つづく)
【シリーズ第1話】 すべてはここから始まった。PTAのストレス解消で始めたランニングが、まさかの事態に……。
厚底スパイクの詳しい機能や選び方については、こちらの記事がとても詳しくて参考になりました。専門的なことはぜひこちらを読んでみてください。
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