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【エッセイ2】利用者様が教えてくれた田んぼの思い出




80代の男性が、見守り中に語ってくれたこと


見守り中、80代の男性が話し始めた。

「田植えはな、5月の連休明けじゃ」

窓の外を見ながら、ぽつりぽつりと。

「家族総出でな。朝から晩まで。腰が痛うてな」

その目は、遠くを見ていた。


昔の話は、本当によく覚えている

認知症の利用者様。

昨日の食事は覚えていない。

さっき会った人の名前も、出てこない。

でも、田んぼの話になると。

驚くほど、鮮明に語る。


「田植えが終わったら、草取りじゃ」

「6月は毎日、田んぼに入っとった」

「7月は水の管理。これが一番大事でな」

「8月は台風が心配で、夜も眠れん」

「9月、稲刈り。これがまた大変でな」

月ごとに、やることが決まっていた。

一年中、お米のことを考えて生きていた。


田植えから稲刈りまで、人生そのもの

「田植えはな、家族の力を合わせる時じゃ」

小さい頃から、手伝わされた。

学校から帰ったら、田んぼ。

休みの日も、田んぼ。

「遊びたかったけどな」

そう言いながら、笑った。


「でもな、稲刈りの時はうれしかったぞ」

黄金色に実った稲穂。

家族で刈り取る。

束ねる。

干す。

「ああ、今年も無事に終わったって」

その安堵感。

達成感。


「米ができるまでは、気が抜けん」

田植えをして、終わりじゃない。

草を取る。

水を管理する。

台風に備える。

病気を防ぐ。

毎日、田んぼを見に行く。

「米作りは、子育てと一緒じゃ」


一年中、お米のことを考えて

10月、収穫が終わる。

でも、それで終わりじゃない。

「脱穀して、乾燥させて、袋に詰めて」

11月、来年のための土作り。

12月、正月の餅米の準備。

1月、農機具の手入れ。

2月、種籾の準備。

3月、田んぼの水を入れる準備。

4月、田おこし。

そして5月、また田植え。


「一年中、米のことを考えとった」

それが、当たり前だった。

それが、人生だった。


東京から来た僕には

正直、最初はピンとこなかった。

東京で育った僕。

米は、スーパーで買うもの。

袋に入って、売ってるもの。


でも、この男性の話を聞いて。

米は、人生だったんだと。

一年中、家族で向き合ってきたものだったんだと。


「今の若い人は、米作りせんようになったな」

男性は、少し寂しそうに言った。

「機械でやるし、兼業が多いし」

「昔みたいに、家族総出でやることも減った」


でも、と男性は続けた。

「それでええんじゃ」

「わしらの時代は、米作らんと食えんかった」

「今は、選べる」

「それは、ええことじゃ」


認知症でも、消えない記憶

昨日のことは、覚えていない。

さっきのことも、忘れる。

でも、田んぼの記憶は、消えない。


それは、体に染み込んでいるから。

毎日、毎年、繰り返してきたから。

家族と一緒に、汗を流してきたから。

喜びも、苦労も、全部込みで、人生そのものだったから。


「田植えの時の、泥の感触」

「稲刈りの時の、稲の匂い」

「新米を炊いた時の、あの香り」

五感に刻まれた記憶は、強い。


僕が学んだこと

この男性の話を聞いて、思った。

人生って、こういうことなんだと。


毎日、同じことを繰り返す。

地味で、派手じゃない。

でも、それが積み重なって。

人生になる。

記憶になる。

誇りになる。


僕は今、YouTubeを始めた。

NOTEを書いている。

登録者は、まだ5人。

再生回数も、そんなに多くない。


でも、この男性の話を聞いて思った。

続けることが、大事なんだと。

毎日、少しずつでも。

一年、二年、十年と積み重ねていけば。

それが、人生になるんだと。


利用者様は、僕の先生

介護の仕事をしていると、学ぶことが多い。

利用者様は、人生の先輩。

長い時間を生きてきた人たち。


その話を聞くことは、歴史を学ぶこと。

その生き方を知ることは、人生を学ぶこと。


田んぼの話。

家族の話。

戦争の話。

昔の新居浜の話。


どれも、本や映像では学べない。

リアルな、生の声。


最後に

男性は、最後にこう言った。

「米作りはな、報われるんじゃ」

「ちゃんと手をかけたら、ちゃんと実る」

「サボったら、すぐわかる」

「正直なんじゃ、米は」


その言葉が、心に残った。


YouTubeも、NOTEも、人生も。

ちゃんと手をかけたら、ちゃんと実る。

サボったら、すぐわかる。

正直なんだ。


田んぼの話を聞きながら、僕は学んだ。

一年中、お米のことを考えて生きてきた男性から。

継続すること。

手をかけること。

正直であること。


それが、人生なんだと。


あとがき

介護の仕事をしていると、こういう瞬間がある。

利用者様の何気ない話が、自分の人生のヒントになる瞬間。


東京から新居浜に移住して10年。

介護福祉士として働きながら。

YouTubeを始めて。

NOTEを書いて。


毎日が、学びの連続。

利用者様が、先生。


これからも、記録し続けよう。

一年中、何かを考えて生きていこう。

その先に、何かが実ると信じて。


来週のコラムに向けて

介護の仕事をしていると、利用者様から色々な話を聞く。

田んぼの話。

昔の新居浜の話。

家族の話。

どれも、貴重な記憶。


毎週、一つずつ。

利用者様が教えてくれたことを、記録していきたい。

それが、この地域の歴史になる。

僕自身の学びにもなる。


来週も、また書きます。

何を書くかは、まだ決めていない。

でも、何か書く。

それが、継続すること。


田んぼの男性が教えてくれた。

「ちゃんと手をかけたら、ちゃんと実る」


NOTEも、YouTubeも、同じ。

一週間ごとに、一本ずつ。

積み重ねていく。


来週も、読んでくれたら嬉しいです。


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