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「日本の農業の再生はありえるか?」

—「食べていける農業」は夢じゃない——地方を元気にする現実的な選択肢とは?


なぜ「農業の再生」が必要なのか

近年、ニュースでもたびたび「農業の危機」が取り上げられています。耕作放棄地の増加、高齢化、担い手不足、低い収益性……。しかし、こうした話題に触れるたびに、多くの人は「大変だね」と受け止めるだけで、どこか他人事のように感じているのが実情かもしれません。

けれど実は、農業の問題は「国民すべての生活」に深く関わっています。食料は毎日必要なものであり、農業はその生産の根幹です。にもかかわらず、日本の食料自給率(カロリーベース)はわずか37%(2022年度、農林水産省)。つまり、私たちは約6割の食料を海外に依存して暮らしているという現実があります。

この状態が続くと、世界情勢の変化や自然災害が起きたときに、私たちの食卓が一瞬で危機にさらされる可能性があります。実際、ウクライナ戦争や新型コロナウイルスの影響で、輸入小麦や肥料価格が高騰し、パンやラーメンの値上がりが続いているのは記憶に新しいでしょう。

このように、「農業の再生」は、単に地方の問題でも、農家だけの問題でもありません。「国家の安全保障」「国民の生活の安定」という観点から見ても、極めて重要なテーマなのです。


休耕地の復活は簡単ではない——放置された農地の現実

2023年に入り、国は突如として「米を増産せよ」との方針を出し始めました。かつては米余りを懸念して減反政策(米の生産制限)を進めていたにもかかわらず、今になって180度の方針転換です。

この急な舵取りに、現場の農家は困惑しています。「今さら田んぼに稲を植えろと言われても、長年休耕していた土地はすぐには使えない」「草が生い茂り、土壌の栄養バランスも崩れている」といった声があがっています。

実際、休耕地を復活させるには、多くの手間とコストがかかります。まず草刈り、土壌改良、水路整備、害虫駆除……。しかも、それをやったからといって、すぐに“おいしいお米”が収穫できる保証もありません。

つまり、「田んぼがある=すぐに米が作れる」という単純な話ではないのです。休耕地を再生するには、国や自治体による助成金、専門家の派遣、そして継続的な支援が不可欠です。

さらに言えば、減反政策で農業から手を引いた農家が、再び作付けに戻るには、“それだけの魅力”が必要です。収入が見込める、やりがいがある、次世代に引き継げる——そうした条件が整わなければ、誰も戻ってきません。

だからこそ、農地の再生は「農家任せ」にしてはいけない国家的課題です。


農協主導の流通体制の“限界”と“自主性”の欠如

多くの農家は「JA(農協)」を通じて作物を出荷しています。これは安心・安定した販路を意味する一方で、「自主的な価格設定ができない」「作付けの自由がない」「利益率が低い」といった問題も抱えています。

たとえば、ある地域で農協が「今年はキャベツを多めに作ってください」と指示すれば、多くの農家はそれに従います。しかし、結果的に全国的にキャベツが過剰生産されてしまえば、価格は暴落。農家は薄利どころか赤字になることも。

さらに、農協を通して販売する場合、農薬や肥料の仕入れ、資材購入などもセットになることが多く、実質的に自由度はあまり高くありません。これでは農業が「自立したビジネス」になりづらく、「生かさず殺さず」の構造に組み込まれてしまいます。

近年は、農業ベンチャーや若手農家を中心に、ネット直販やふるさと納税などを活用して、JAに頼らない流通を模索する動きも出てきています。これにより利益率を高め、消費者と直接つながることで信頼を築くモデルが徐々に確立しつつあります。

農業の“稼げる化”には、こうした「流通の自主性」が欠かせません。農協を否定するわけではありませんが、複数の選択肢があってこそ、農家は自由に戦略を立てられるのです。


6次産業化の“言葉だけブーム”を超えて

6次産業化とは、「農業(1次産業)×加工(2次産業)×販売(3次産業)」を組み合わせて、農家自らが生産・加工・販売までを手がけることで、付加価値を高める取り組みのことです。

数年前、国も積極的に6次化を推進しようとしました。補助金制度が整備され、「農家が作ったジャム」「地域ブランドの漬物」などが話題になりました。しかし、残念ながら多くは「言葉だけのブーム」に終わっています。

その理由の一つは、「6次化の担い手が限られている」こと。多くの農家は加工や販売のノウハウを持っておらず、新たに機械や施設、人材を確保するハードルが非常に高いのです。また、地域の商工業者や行政との連携が不十分で、販路やプロモーションの支援も不足していました。

成功している例もあります。たとえば、農業法人がワイナリーやジェラート工房を開設し、観光とセットで販売することで高収益化を果たしたケースもあります。ここに共通しているのは、「専門家との連携」「地域ぐるみの協力体制」「SNSなどを活用した情報発信」です。

これからの6次化は、「一部の意識高い系農家のもの」ではなく、「どんな農家でも参入できるような制度設計」に変える必要があります。それこそが、地方経済を底上げし、農業の新しいビジネスモデルを育てる鍵となるのです。

地方のインフラ整備と支援体制の再構築

農業を再生するには、農家の努力だけでは限界があります。特に地方においては、農業を取り巻く“基盤”——すなわちインフラと支援体制が不十分であることが、再生の大きな障害となっています。

たとえば、水路やため池などの灌漑設備、農道の整備、老朽化した農機具の更新などは、個々の農家ではどうにもできません。特に過疎地では、こうしたインフラの維持すら困難になっており、若い世代が農業を始めようとしても、そもそも“スタート地点に立てない”ケースが少なくありません。

また、地方自治体の農業支援体制も、人的・財政的リソースが足りていないのが実情です。農地バンクや新規就農者支援などの制度が整っていても、それを“伴走”できる職員や専門家が圧倒的に不足しています。

つまり、農業を盛り上げるには、農地や人材だけでなく、それを支える「公的なインフラ・制度」の再構築が必要です。そして、そのための予算措置や技術支援を“国が責任をもって行う”という姿勢が問われています。

さらに重要なのが、地域ぐるみの協力体制です。農業は決して農家一人では成り立ちません。地域の工務店や建設業者、学校、観光業者、福祉施設などと連携してこそ、新しい価値が生まれます。

農業を再生することは、地域全体の経済と暮らしを再生することにもつながります。そのための包括的な「農村政策」として、再設計が求められているのです。


「儲かる農業」を本気で作るために

日本では長らく、「農業=儲からない」というイメージが根付いてきました。実際、一般的な農家の所得はサラリーマン平均を下回る水準で推移しており、「副業として」「年金プラスアルファで」といった補助的な位置づけが多く見られます。

しかし、これは制度と流通の問題であって、「農業そのものが儲からない産業」というわけではありません。実際、世界の先進農業国では、テクノロジーやマーケティングを駆使して高収益を実現している事例も数多く存在します。

たとえばオランダは、国土面積が日本の10分の1ほどでありながら、農業輸出額で世界第2位(2022年時点)。これは、高度な温室栽培やIT活用、物流ネットワーク、教育機関の連携が組み合わさった成果です。

日本にもそれは可能です。すでにスマート農業(AI・ドローン・センサーなどを活用)に取り組む若手農家やベンチャーが登場しつつあります。これを広げるには、「投資回収が見込める仕組み」「チャレンジできる環境」「失敗しても再挑戦できるセーフティネット」が不可欠です。

また、「農業法人化」「シェア農園」「地域連携型のブランド構築」など、従来の“家族経営モデル”にこだわらない柔軟な経営形態も求められます。

「儲かる農業」とは、単に高値で売ることではなく、「再生産が可能な収益構造」を持つこと。それを実現できれば、農業は“衰退する産業”ではなく、“成長産業”として、若者も企業も参入したくなるフィールドになるのです。

日本の“食の安全保障”という視点から

農業の再生を語る上で、もう一つ欠かせない視点が「食の安全保障」です。食料はエネルギーと並び、国家の根幹を支える最も重要な戦略資源です。

現在、日本の食料自給率はカロリーベースで37%(2022年度)。これは主要先進国の中でも極めて低い数字であり、残りの60%以上を海外に依存しているという現状は、国際的な物流が混乱した際に一瞬で危機を迎えることを意味します。

事実、新型コロナウイルスの感染拡大、ウクライナ戦争などによる国際供給網の混乱は、日本の食卓にも影響を与えました。小麦、油、飼料、肥料、加工食品などが高騰し、価格転嫁が広がったのは記憶に新しいところです。

国産の食料生産能力を高めることは、単に農家の問題にとどまらず、「国家の持続可能性」そのものに直結する課題です。災害大国である日本において、食料の確保は防災計画とも深く結びついています。

今後、気候変動による農業リスクも高まる中で、国内での安定した生産体制を持つことの重要性はさらに増すでしょう。農業を“守るべき文化”として扱うだけではなく、“未来の戦略的投資”として位置づけ直す必要があるのです。


若者を農業に呼び込むための仕掛けとは?

農業を持続可能な産業とするには、次世代の担い手が不可欠です。しかし現実には、農業従事者の平均年齢は68.4歳(2022年時点)と高齢化が著しく、若者の参入はごく限られています。

その理由の一つは「初期投資の高さ」と「成功するまでの道筋が見えにくい」ことです。土地、農機具、施設、作物の知識、販路の確保……。ゼロから始めるには多くのハードルが存在します。

しかし今、変化の兆しもあります。各地で「農業インターン」「企業就農」「農業×ITのスタートアップ」など、若者が関われる入り口が増えてきました。特に都市部でのサラリーマン生活に疑問を感じた人が、農業での自立や自然との共生を求めて地方に移住するケースも増加しています。

こうした動きを加速するには、「就農支援だけではなく、生活支援も必要」だという認識が重要です。住居や子育て支援、地域コミュニティとの接続など、移住後の“生活の安心”があってこそ、農業に腰を据えて取り組むことができます。

また、教育機関とも連携し、「高校生のうちから農業ビジネスを学ぶ」「大学の農業インターンを制度化する」といったキャリアパスを設計することも有効です。農業は“生きる技術”であり、若者の感性を活かせるフィールドでもあるのです。


結論——農業再生は「夢」ではなく「選択」

本記事では、農業の再生について多角的に論じてきました。休耕地の再利用、流通の改革、6次産業化の再定義、インフラ支援、収益構造の見直し、食の安全保障、そして次世代の担い手育成……。

いずれも、決して不可能な話ではありません。必要なのは「覚悟」と「戦略」です。国がどれだけ本気で農業を基幹産業と捉えるか、地方がどれだけ地域の未来を見据えて再構築するか、そして私たち消費者がどれだけ“自分ごと”として食と農を見直せるか。

農業は「過去の産業」ではありません。むしろ、エネルギー問題や環境問題、人口減少社会といった未来の課題に対して、最前線で貢献できるポテンシャルを秘めた産業です。

農業再生は、もはや夢ではありません。それは、私たち一人ひとりが選び取ることのできる“現実的な未来”です。政策、企業、市民——すべてが一体となって動き出せば、日本の農業は再び息を吹き返すことができるでしょう。


最後までお読みいただきありがとうございます。
実は私は農家の長男であり、農業の衰退に危機感を感じている一人です。
すでに実家の農業については事実上の廃業状態であり、田畑は人に貸して自家では農業を営んでいない状況です。
このような農家が全国に多数存在することは想像に難くありません。
農業は競争させてはいけない分野です。国の根幹でもあり手厚く保護し未来へつなげていかなければなりません。

次回は農協解体論について物申して行きたいと思います。まだ構成すらできあがっていませんが、一言いっておかなければという思いがあります。

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