第25回:将来一緒にいたい人との時間を今から大切にすることも投資である。
これまでの連載で、お金を整え、仕事の質を高めることで得られる「自由」についてお話ししてきました。しかし、自由や資産はあくまで手段に過ぎません。私の人生の真の目的は、**「幸せに生きること」**です。
自分が死ぬ時に「幸せだった」と思えるためには、今、何をすべきか。その答えを逆算していくと、自ずと「投資すべき対象」がもう一つ見えてきました。それが、**「未来の人間関係」**です。
1. 幸せをデザインする「逆算の思考」
私が人生の最期に望む状態は、極めてシンプルです。
家族に見守られて旅立つこと。
医師として多くの患者さんの人生に貢献できたと実感すること。
生きている間、自分の好きな人たちに囲まれていること。
これらの状態を維持し、一人でも多くの患者さんの健康を支え続ける。これを継続することこそが、私にとっての「幸せな人生」の定義です。
2. 「地位」と「幸福」の距離感
「教授選に出た私が言うと矛盾しているようですが、高い役職を得る事そのものは、幸せな人生には必ずしも必要ないものなのかもしれません」
最近、私はそんな風に感じています。もちろん、一般的に役職が上がれば収入が増え、生活が安定し、社会的な影響力も増します。それ自体は決して不必要なものではありません。
しかし、自分の人生の中心に何を置くかと考えたとき、私にとって「肩書き」は最優先事項ではないようです。地位を求めることが人生の目的化してしまうと、本来大切にすべき「幸せの基準」を見失ってしまうリスクすらある。そのことに気づけたのは、一つの大きな収穫でした。
3. 80歳の恩師が教えてくれた「孤立しない未来」
私の身近には、素晴らしいお手本がいます。御年80歳を過ぎた私の恩師です。
恩師は今でも同世代の友人とゴルフを楽しみながら、55歳の私や、さらにその下の40代の世代とも頻繁に食事や酒席を共にし、人生を謳歌されています。私も、恩師との時間はいつも楽しく、多くの刺激をいただいています。
年齢の壁を越えて、下の世代から「一緒に過ごしたい」と思われ続ける。そんな恩師の姿を見て、私は**「これこそが、老後の真の豊かさだ」**と確信しました。
4. 若い世代への「時間と心の投資」
恩師のような素敵な老後を送るために、私は最近、意識的に20〜30歳ほど歳の離れた若い世代と食事に行く機会を増やすようにしています。これも、一種の「人生の投資」です。
一般企業に勤める古くからの友人たちに聞くと、「歳の離れた後輩とわざわざ食事に行く習慣はない」と言われます。もしかしたら、これは医療界独特の習慣なのかもしれません。
しかし、自分より若い世代の価値観に触れ、彼らとのパイプを太くしておくことは、自分が年齢を重ねた時に「孤立」を防ぐだけでなく、常に新しい感性で社会と繋がり続けるための、何物にも代えがたい資産になります。
投資のゴールは「幸せの総量」を増やすこと
お金を増やすことも、仕事の専門性を磨くことも、すべてはこの「幸せな人間関係」を支えるための土台に過ぎません。
どれだけ資産があっても、独りきりでは幸せを分かち合えません。若手への指導や食事の場を通じて、自分の経験を伝え、同時に彼らから新しいエネルギーをもらう。この循環の中にこそ、人生の真の喜びがあるのではないでしょうか。
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