落語の話。『粗忽長屋』演:三遊亭遊七。
久々の寄席。
先日の東京美術館めぐり、オッサン一人の旅は、夜が長い。色気を出す歳でもなし、下戸ときてる。サテ何をして時間をつぶそうか、というところで、推しに従い寄席を選択。
浅草演芸ホールに行ってみることにする。
実をいうと、落語も昔、ちょいとかじってはいたんだけど、さてもうずいぶんご無沙汰だ。何年? 十何年? ひょっとしたら数十年? それすら覚えていない……せっかくだから、これがまた始めるキッカケになれば嬉しいな、などと。
妙に品のある女流の方。
推しである女流噺家のタマゴに影響されて寄席に行ったら、久々に見る生の高座が、女流の噺家さんだったという。
縁は異なものと申しますが。こう言うご縁も味なもの。
さてこの女流の噺家さん、なんだか、妙に立ち居振る舞いに落ち着きがあって、落語家というより、高校の古文の先生みたいな……
ああそうだ、いたいたこういう先生! 男子からは地味だと言われて、ほとんど意識されてなかったけど、一部の女子からはやたら慕われてた! 授業は丁寧、板書の字がきれいであまり無駄話もしないけど、好きな古典作品については目をキラッキラさせて語り、授業をまるまる一コマつぶしてた!
しかし、最初の見た目で、そういうイメージを持っちゃったのは、あんまりよくなかったかもしれない……
聴いていて心地よい感じはさすが。
演目『粗忽長屋』は、江戸古典落語の定番中の定番。
八っつぁんクマさんがドタバタ騒ぎをする滑稽噺。
ポンポンと言葉を投げつけるように話す、江戸っ子の職人らしい語り口があり、それに戸惑う世話人は世話人らしくオドオドしながらも、それなりの立場のある者らしくオットリと包むような口調。
ハッキリした発声にしっかり息が入っていて、聞きやすいったらない。基本の声質が、落ち着いた響きのあるアルトだからか、耳だけで聞いている感じがしない。もっと納得させるような届き方をしている。生の舞台の醍醐味か。
ただ、この八っつぁんクマさん、セッケンの匂いがしそう……いや、そこまでじゃないか。でも、ちゃんとお風呂には入ってるよね? 部屋の掃除もしていそう……そんな八っつぁんクマさんである。
ポンポンしゃべる、威勢の良さはすっごくいい。歯切れがよくって、カーンと気持ちよく声が通る。爽やかな八つぁんだ。クマさんもポヤヤンと可愛らしい。
ゲラゲラ笑うのではなくて……
いわゆる八っつぁんクマさんの滑稽噺というと、ゲラゲラ笑うみたいなイメージだけど、この一席で提供された笑いは、ほのぼのとしているというか、思わず口元がほころんでくるような、そんな笑いだった。
まあ、そもそも演目からしてド定番という、みんなオチまで知っている前提のものだ。「落ち着いて聞いてください」がコンセプトだったのかな。だとしたら、もう十分すぎるほど堪能させてもらいました。
最初、国語の先生が出てきた時にはどうしようかと思ったけど、意外な方向性で大満足。女流じゃなければ味わえない高座だったと思います。
さて演目は続き、三遊亭遊雀『悋気の独楽』でございます。
