『水色は、色ではなかった』
世界には、色がなかった。
それは欠落ではなく、そういう構造だった。
誰も疑わなかったし、疑う理由もなかった。
すべては正しく、区別され、そこにあった。
ある日、はじめて
“何か”
が見えた。
名前は、分からない。
ただ、それは他のどれとも一致しなかった。
形でもなく、光でもなく、影でもなかった。
それは、そこにあった。
僕はそれを見ていた。
見ている、という確信だけがあった。
触れようとして、やめた。
触れてしまえば、それが何かになってしまう気がした。
それは、ただそこにあるべきだった。
しばらくして、それは消えた。
跡は残らなかった。
最初から存在していなかったかのように、世界は整っていた。
けれど、何かがずれていた。
すべては同じなのに、同じではなかった。
区別は保たれているのに、区別できていない気がした。
僕は知ってしまった。
この世界には、最初から色がなかった。
あれは、水色だった。
水色とは、色ではない。
それは、
見えなかった構造に気づくためのズレだった。
色の世界へ あなたは何色が見えますか?
