『俺なら今すぐ切っちゃうけど』
転勤で長岡に住んでいた頃の話だ。
帰省中、背中に何とも言えない熱っぽさと痛みを感じた。
地元の皮膚科に駆け込むと、診断は「アテローム(粉瘤)」。
「切開が必要ですが、今は炎症を起こして腫れているので、切ることが出来ません。まずは薬で抑えましょう。鎮まるのに4〜5日、切開後も通院に1週間ほどかかります」
仕事があるため、そんなに長く滞在してはいられない。
私は処置を保留し、長岡に戻って皮膚科を探すことにした。
検索して見つけたのは、比較的あたらしい皮膚科。
ネット予約をすると、当日、「順番が近づいています。病院へ向かってください」と通知が来る画期的なシステムを導入しているクリニックだった。
初診の問診票に経過を書き、診察室で背中を見せる。
「確かに炎症が起きていて痛そうだね。どうする? 俺なら今すぐ切っちゃうけど」
フランクな先生の言葉に、私は即答した。
「先生、切って、抉(えぐ)って、縫ってください!」
「即決だねぇ〜。でも縫うと治りが遅くなるから縫わないよ。麻酔は経験ある?」
「全身麻酔と、指先にあります」
「じゃ、大丈夫だね」
処置室でうつぶせになり、麻酔を受ける。
私は麻酔が切れやすいため「早めにお願いします」と伝えた。
アテロームは袋ごと除去しないと再発する。
炎症中の一括除去は難易度が高いらしいが、先生は「完璧にとる自信はあるから」と手際よく執刀してくれた。
「痛い? 大丈夫? あと少しだからね」
「痛みはないです。……先生、取り除いたやつ見たいです」
「えっ? こんなの見たいっていう人、初めてなんだけど(笑)」
2〜3ミリの小さな穴から見事にすべてくり抜かれ、無事に手術は終了。
後で見せてもらったブツ(?)を見て達成感を味わった。
(帰宅後、傷口の穴に入れられたガーゼを自分で引き抜く瞬間はさすがに激痛だったが……)
それから連日通院していたある日、ふと気になって聞いてみた。
「先生、いつから湯船に浸かっていいですか?」
「え? 術後すぐでも平気だよ。温泉でもプールでも。言ってなかったっけ? 今までシャワーだけだった?」
「いえ……傷口を入れなきゃいいと思って、湯船の中で『四つん這い』になって浸かってました」
先生は大爆笑。
「よくそんな体勢思いつくなぁ! 見てみたいわ(笑)。もう普通に入って大丈夫だから」
あれから何年も経つが、再発は一度もない。
もし最初の病院の言う通りにしていたら、長期間仕事を休むか、痛みを抱えたまま過ごすことになっていただろう。
医療において「絶対の正解」は一つではない。
信頼している病院であっても、時には勇気を出してセカンドオピニオンを受けることが大切なのだと、背中の小さな傷跡を見るたびに思い出す。
特に説明を受けて何か違和感を感じたら、必ずそうしたほうがよいと思っている。
それと、参考までに。。。
病院でしっかりと先生の話を聞きたい場合は、必ず「メモ」をとること。
先生によっては嫌がる人もいるみたいだが、「メモ」の効能は結構大きいらしい。
(あくまでも個人的な感想です!)
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