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4歳の彼との小さな約束

幼稚園教諭と保育士の資格を取るためには、避けて通れない「実習」がある。

幼稚園、保育園、児童福祉施設。

いくつかの場所に赴いたが、その中で出会ったある4歳の男の子のことは、今でも強烈に心に残っている。



実は、本気で保育系の進学を目指した周囲の友人たちに比べ、当時の私は「なんとなく」実習に参加していたのが正直なところだった。

もちろん立場上、そんなことは口が裂けても言えない。

私はただ、一端の「実習生」を必死に演じていただけだった。



大人げない私は、園児たちと鬼ごっこをする際にも一切手加減をしなかった。

全力で逃げ回り、追いつけない園児を泣かせてしまったことすらある。


見かねた担当の先生からは、何度も注意を受けた。


「先生、実習生とはいえ、子どもにとっては本当の先生なんですよ。たまには鬼になってあげて。捕まってあげてください」


それでも私は、

「子ども相手だろうと本気で遊ぶのが流儀だ」

と、内心開き直って真剣に逃げ続けていた。



そんな私の大人気なさ全開の本気が伝わっていたのだろうか。



夕方の合同保育の時間、いつも私の背中に飛びついてくる男の子がいた。

担当のクラスではない4歳のRくんだ。

背中にしがみついたまま、毎回、彼は後ろから耳元でコソコソとした小さな声で囁く。


「先生って、かわいいね」

「先生。僕ね、先生のこと好きかも」

「先生も僕のこと好きだよね」


あまりに愛らしい告白に、私はそのたび彼を抱き上げてグルグルと回した。

「どうしてもっと早く生まれてきてくれなかったんだろう」

と、イケメンになるであろう顔を見ながらそう思った。



実習の最終日、Rくんは目に涙をいっぱいに浮かべて私を見上げた。

「花火のときに、会えるよね?」

夏の実習だったため、ひと月後に園で花火大会が予定されていたのだ。

私は切ない気持ちになりながら、「うん、うん」と簡単に頷いてしまった。



そして、約束の花火大会の当日。

私はすっかり忘れて友人と遊んでいた。

ふと花火大会のことを思い出し、一瞬だけ忘れたままでいようかと迷った。

しかし、「途中からでも行こう」と思い立ち、急いで園へと向かった。



園の門に到着したとき、そこにはRくんとお母さまの姿があった。

私の姿を見つけるなり、お母さまがホッとしたように声を上げた。


「先生、よかった! Rが『先生は絶対に来るから』って、花火もしないでずっと待っていたのよ」



見れば、Rくんは半べそをかいていた。

私は胸が締め付けられるような申し訳なさで、『ごめんね』そう言って、思わず彼を強く抱きしめた。



それから、もう残り少なくなってしまった手持ち花火を一緒に楽しんだ。

パチパチと弾ける光のなか、Rくんは嬉しそうにお母さまに言った。


「ね? 先生は絶対来るって言ったでしょ」


その誇らしげな横顔を見て、私は強く胸に刻んだ。

大人は、子どもとの約束を絶対に守らなくてはならない、と。



あれから長い年月が経ち、Rくんももう立派な大人になっているはずだ。

今、彼はどこでどんな夏を迎えているのだろう。


毎年このじっとりとした暑い季節になると、私は決まって、あの小さな男の子の温もりと、弾けた花火の光を思い出す。



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