ビンゴの皮肉と私の引き寄せ運
社会人になって初めて迎えた12月。
地域の商工会が主催する、大規模なクリスマスパーティーに参加した。
会場は豪華なホテルの大宴会場。
200人はくだらないであろう熱気に包まれた空間で、私は会社の同僚ではなく、他社に勤める友人と並んで立食プレートを囲んでいた。
当時は、クリスマスパーティーといえば誰もが「派手」を競い合った時代だ。
そんな私も、当時、オープンショルダーのタイトなワンピースや、今考えると少し気恥ずかしいエナメルのスーツに身を包んでいた。
(by PINKY&DIANNE)
若さゆえに「派手な格好はしていても、中身はクールでいたい」という、少し尖った自意識もあったのだと思う。
おいしい料理を堪能し、同じ番号札を持つ人を探すマッチングゲームでひとしきり盛り上がった後、いよいよ宴のクライマックスがやってきた。
全員参加の「ビンゴ大会」だ。
カードを渡され、私は思った。
「こういう席で、真っ先にビンゴにだけはなりたくないな……」 この身なりだけに、クールでいたい。
そんな強い拒絶の気持ちは、なぜか私に奇妙なパワーを与えてしまうらしい。
「リ、リーチ?!」
まさかのリーチをかけ、そのまま「ビンゴ」で1等を引き当ててしまった。
景品は高級ブランデーの「レミーマルタン」。
お酒が飲めない私にとっては、これっぽっちも嬉しくない代物だった。
しかも、パーティーの後に二次会へ遊びに行きたいのに、ずっしりと重いボトル。
おまけに1等は壇上へ登らされる。
私は「もう、そういうのいいですから」と言わんばかりの、主催者がドン引きするほど冷めきった態度で景品を受け取り、早々に降壇した。
最悪のミラクルは、これだけで終わらなかった。
翌年のクリスマスパーティー。
私は「2年連続でなんか絶対に当たりたくない!」と強く、心の中で念じていた。
しかし、負の引き寄せパワーは健在だった。
「ビンゴ!」 またしても私は、1等…。
2年目の景品は、文庫本ほどのサイズで5カ国語を話すという、当時としてはかなり高価な「翻訳機」だった。
普通なら大喜びするところだが、私は「なぜまた私なんだ」という不運に、再び冷ややかな真顔で壇上へと上がることになった。
イヤだと強く願うほど、ミラクルが起きてしまう。
この強烈な引き寄せに恐れをなした私は、それ以降、物事をあまり強く思わないように意識するようになった。
3年目には、もうパーティーへ出席することもなかった。
やがて時代の不景気とともに、そんな派手な集まり自体もいつの間にか姿を消していった。
ちなみに、この妙な引き寄せは会社のクリスマスパーティーでも発揮された。
同じくビンゴ大会で私が当てたのは、ウイスキーの「山崎」。
やはり飲めないお酒であり、「早く家に帰れ」と言わんばかりの重いものになるという皮肉な結果だった。
「物欲がない人ほど、なぜか当たってしまう」 これはビンゴ大会における、世界共通の「あるある」なのかもしれない。
ただ、一人冷めた顔でレミーマルタンと翻訳機を抱えていた私の引き寄せパワーは、今思い出しても不思議で、ちょっとだけ懐かしい。
で、ふと思った。
「そうだ!お金などいらない、お金などいらない」そう強く思うことにしようと。
でもあれってビンゴだけかな?
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