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【コンプラ担当の考察】「私が正しい!」と譲らない職場で、日本一有名な「悪役」が教えてくれる板挟みの抜け方

​「権利を主張するのは当然ですよね? ガイドラインにもそう書いてあります」と、冷ややかな目でスマホの画面を突きつけてくる若手社員。

​一方で、会議室に呼び出したベテラン課長は腕を組み、「あいつは権利ばかりいっちょ前で、現場がどれだけ苦労してるか分かってない。お前からもガツンと指導してやってくれよ」と苛立ちを隠そうともしない。

​あなたは「おっしゃる通りですね」「こちらからもよく伝えておきます」と、両方に愛想笑いを浮かべてやり過ごす。

自席に戻ると、どっと押し寄せる疲労感。引き出しを開けて胃薬を取り出しながら、「うまく立ち回れない自分が悪いのだろうか」と、また一人でため息をつく。

​……そんな毎日を送っていないだろうか。

​君が悪いんじゃない。それは「構造的な罠」だ

​わかるよ。今日も一日、本当にお疲れ様。

​俺も都内の企業で労務やコンプラ窓口の責任者をやっているから、その逃げ場のない板挟み感、痛いほどよくわかる。俺も昔は、両方の顔色を窺っては「全員が納得する答えを出せない自分の力不足だ」と、夜中のサウナで一人、天井を睨みつけていたからね。

​でも、これだけは最初に言わせてほしい。

あなたが苦しんでいるのは、あなたの調整能力やマネジメントスキルが低いからじゃない。

これは、今の時代の職場に仕掛けられた「構造的な罠」なんだよ。

​長年コンプラ通報の窓口に座っていると、ある痛烈な事実に気がつく。

それは、職場のトラブルのほとんどは「善と悪の戦い」ではなく、「正義と正義の衝突」であるということだ。

​日本一有名な「悪役」のコクピットから見える景色

​少し視点を変えるために、日本一有名と言っても過言ではない、あの国民的アニメの「悪役(バイキンマン)」の話をさせてほしい。

​幼い頃、私たちは何の疑いもなく、アンパンマンを「絶対的な正義」、彼を「悪」だと信じていた。

でも、大人になった今、あの紫色のUFOのコクピットから見える景色を想像してみてほしいんだ。

​バイキンマンの目から見れば、自分のやりたいことをことごとく邪魔し、最後は圧倒的な暴力(パンチ)で遠くへ吹き飛ばしてくるアンパンマンこそが、自由を奪う「理不尽な悪者」に映っているはずなんだよ。

​悪役がいなければ、正義の味方も存在できない。

誰かにとっての救いが、立ち位置が変われば、別の人にとっては耐え難い抑圧になる。

​職場は「正義」を証明するための戦場になっている

​今のあなたの職場も、これと全く同じ構造なんだ。

  • 若手社員の正義:「自分の心身と法的な権利を守る」

  • ベテラン課長の正義:「チームの業績を上げ、会社を存続させる」

​彼らは決して、「会社をめちゃくちゃにしてやろう」という純粋な悪意で動いているわけじゃない。彼らには彼らなりの守りたい美学や目的があり、それを「正義」だと信じて疑わないからこそ、自分とは違う方角を向いている相手を「悪」に仕立て上げている。

​あなたが今、両方から突き上げを食らっているのは、彼らが「自分たちの正しさ」を証明するために、あなたという壁をサンドバッグとして利用しているに過ぎないんだ。

​だから、真面目で責任感の強いあなたが、「どちらが正しいのか」を倫理観で裁こうとしたり、「私が間に入ってなんとか両方を救わなければ」と感情をまともに受け止めたりすれば、心がすり減って潰れてしまうのは当然の帰結なんだよ。

​鏡の中の「もう一人の自分」と向き合う

​「罪を憎んで罪人を愛さないといけない」という言葉がある。

現代のSNS社会のように、少しでも過ちを犯した者を「悪」と決めつけて徹底的に排除するのは簡単だ。でも、それでは何も解決しない。

​たとえ相手の主張が時に乱暴で、コンプラ的にグレーな「罪」スレスレだったとしても、その背景にある「その人なりの正義」を理解しようと努めること。

「この人は今、必死に自分のアイデンティティを守ろうとしてもがいているんだな」というドライだけど温かい視点を持つこと。

​不思議なもので、その視点に立てたとき、敵に見えていた相手が、ただの「もう一人の自分」に見えてくる瞬間がある。

相手もまた、自分と同じように悩み、何かを信じ、組織の中で生き残ろうと必死なだけの人間なんだと。

​だから、もう「自分が悪い」と抱え込むのはやめにしよう。

​「自分の正義(あるいは会社のルール)だけが唯一の正解である」という握りしめた拳を一度ほどき、隣にある「別の正義」をそっと観察してみる。

その瞬間、あなたを苦しめていた板挟みの壁は消え、少しだけ滑稽で、愛おしい人間模様が見えてくるはずだから。

​今日、あなたが自宅の洗面所で鏡を覗き込むとき、そこに映る自分に問いかけてみてほしい。

「私の正義は、私自身を泣かせてはいないだろうか」と。

​あなたはもう、十分にやっている。真面目すぎるくらいだ。

まずは誰よりも、自分自身を一番大切にしてあげて。美味しいコーヒーでも飲んで、今日はゆっくり休んでくれ。

明日からも、この理不尽な世界で一緒に生きていこう。


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