#70 ずる休みの昼下がり
休んだ日の昼、ふたつの波に揺られる
休むと決めた朝のあと、
私はそのまま布団に沈んだ。
スマホを胸に抱えたまま、
しばらく動けなかった。
気づけば、
カーテンの隙間から差し込む光が
少しだけ角度を変えていた。
時計を見ると、11:48。
ああ、もう完全に“昼”だ。
社会はとっくに動いているのに、
私はまだ布団の中で、
人間としての形を保てているのか怪しい姿勢で丸まっている。
罪悪感の波がくる
まず最初に来るのは、
やっぱり罪悪感だ。
「みんな働いてるのに、私だけ休んでる」
「昨日の件で印象最悪だよね」
「またお局様に呆れられる」
「Sさんにも、なんか思われるかもしれない」
考えれば考えるほど、
胃のあたりがじわじわ痛くなる。
社会人の胃は、ほんとに脆い。
布団の中で、
私は自分の価値がどんどん下がっていくような気がして、
息が浅くなる。
でも、次の瞬間、開放感の波がくる
罪悪感の波が引いたあと、
ふっと軽くなる瞬間がある。
「あ、今日仕事行かなくていいんだ」
「怒られないんだ」
「電話も来ないし、メールも見なくていい」
この“何もしなくていい”という感覚は、
甘くて、危険で、
でも確実に私を救ってくれる。
布団の中で伸びをすると、
背中がぽきぽき鳴った。
その音だけで、
なんだか生き返った気がした。
罪悪感 ~ 開放感 ~ 罪悪感 ~ 開放感
この波が、
昼の間ずっと交互に押し寄せてくる。
罪悪感のときは、
「私ってほんとダメだな」と思う。
開放感のときは、
「いや、休む権利くらいあるでしょ」と思う。
この揺れは、
まるでエアコンの温度設定みたいに安定しない。
25度にしても暑いし、
24度にすると寒い。
心の温度調整が下手なのだ。
そして、少しだけ自分を許す
お昼を過ぎたころ、
私はようやく布団から半分だけ体を出した。
外の空気は思ったより優しくて、
世界は私が休んでもちゃんと回っていた。
その事実に、
少しだけ救われる。
「まあ、こういう日もあるよね」
「休んだからって死ぬわけじゃないし」
「明日からまた頑張ればいいし」
この“甘さ”が、
私をダメにしているのかもしれないし、
私を守っているのかもしれない。
でも、
今日はもう、
自分を責める気力がない。
だから私は、
そっと自分を許すことにした。
