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【学び直しの生化学】糖新生はダイエットのためではなく生命維持のための必須機能

糖新生?

初めて聞く単語かもしれませんが、
最近ダイエットやファスティングなんかをしている人はひょっとしたら聞いたことがあるかもしれません。

そんな方はなんとなく
「糖質を食べなかったときに、体が代わりに糖をつくる仕組み」
というイメージがあかもしれません。

まあ、だいたい合っています。

でも決して、糖新生はダイエットのために人間が身につけた便利機能なんかではなく、生命維持のための基本システムです。

「昨日の夜から何も食べていない。」
こんなふうに長時間糖質を補給していなくても、血液中のブドウ糖は簡単にはなくなりません。

なぜでしょう?

これが「糖新生(とうしんせい)」の役割なんです。
そんな訳で、本日は糖新生について学び直してみました。

糖がないなら、つくればいい

私たちの体は、ブドウ糖を重要なエネルギー源として利用しています。

特に赤血球はミトコンドリアを持たないため、エネルギー産生をほぼ解糖系に頼っています。また脳も、通常はブドウ糖への依存度が高い組織です。

ところが、人間は四六時中ご飯を食べているわけではありません。

夕食を食べて、寝て、朝起きる。
その間にも体は動いています。

そこで登場する仕組みの一つが、
糖新生(gluconeogenesis)
です。

その名の通り、
「糖を新しくつくる」
仕組みです。

とは言っても、糖から糖をつくるのではありません。

乳酸、グリセロール、糖原性アミノ酸などの
「糖ではない物質」
を材料として、グルコースをつくります。

つまり、
「糖が入ってこない? じゃあ、手元にある材料からつくろう」
という、なかなかたくましい代謝システムなのです。

糖新生はどこで行われる?

糖新生の中心となる臓器は肝臓です。
長時間の絶食などでは腎臓も重要な役割を担います。

とはいえ一か所だけで完結する反応ではありません。
反応によって、

  • ミトコンドリア

  • 細胞質

  • 小胞体

を使い分けながら進みます。


何から糖をつくるのか?

代表的な材料は3つ。

1.乳酸

運動のしすぎの時によく言われる乳酸。
乳酸が溜まってる〜なんて聞きますよね。
(正確には乳酸はそこにとどまることはないのですが、激しい運動の際にエネルギーを沢山消費した際に生まれる副産物が乳酸で、その濃度が一時的に上がった状態を指します)

実は乳酸はただの疲労物質ではありません。血液に乗って運ばれ、別の組織では燃料として使われ、肝臓では糖新生によって再びグルコースに戻すこともできるんです(コリ回路)。

人間の体は、使ったものを簡単には捨てません。乳酸は回収して再利用できる資源でもあるわけです。

昔は、
運動する → 乳酸が溜まる → 筋肉が酸性になる → 疲れる
という説明がよくされました。
現在では、乳酸そのものを単純な「疲労物質」とみなす考え方は否定的です。
まして翌日の筋肉痛について、
「昨日運動して乳酸が溜まっているから筋肉痛になった」
という説明は基本的に間違いです。乳酸濃度は運動後に比較的速やかに低下するので、翌日まで乳酸が筋肉に溜まって筋肉痛を起こしているわけではありません。

2.グリセロール(中性脂肪より)

空腹時には脂肪組織の中性脂肪が分解されます。
(なんて嬉しい反応なんでしょう!)

すると、
脂肪酸+グリセロール
が生じます。

脂肪酸は主にエネルギー源として利用され、一方のグリセロールは肝臓で糖新生に利用できます。

「脂肪を分解したら、その一部が糖をつくる材料にもなる」
というわけです。

人類は長い間、今のようにいつでも好きなだけ食べ物が手に入る環境で暮らしてきたわけではありません。食べられるときにエネルギーを蓄え、食べられないときにはそれを取り崩す。
そのための非常に優れた仕組みが「脂肪」です。
今では「中性脂肪」というと、健康診断で数値を見て目の敵にされがちですが、本来は決して悪者ではありません。
むしろ、余ったエネルギーをコンパクトに蓄えておき、食べ物が入ってこないときにも生命を維持するための、とても重要な備蓄なのです。


3.糖原性アミノ酸(タンパク質より)

タンパク質から生じるアミノ酸の中には、糖新生の材料になれるものがあります。
代表例がアラニンです。
筋肉から肝臓へアラニンが運ばれ、糖新生に利用される仕組みはグルコース・アラニン回路と呼ばれます。

このように筋肉からも糖を作り出しています。

ここまで来ると、

糖質、脂質、タンパク質という三大栄養素は、別々に存在しているのではなく、体内で複雑につながっていることが見えてきます。


糖新生はタダではない

さらに重要なのがエネルギーです。
グルコース1分子をピルビン酸2分子からつくるためには、
4 ATP + 2 GTP + 2 NADH
が必要です。

つまり糖新生は、

貴重なエネルギーを使ってまでグルコースを確保する仕組み

なのです。
それだけ、血中のグルコースを必要とする組織に供給し続けることが生命維持に重要だからです。

私たちの生活ではいつ糖新生が起きている?

実は特別な現象ではありません。
たとえば夕食を19時に食べて、翌朝7時に朝食を食べる。
約12時間、食事から糖質が入ってきません。

この間、最初は肝臓に蓄えられたグリコーゲンの分解が血糖維持に大きく貢献します。

しかし絶食時間が長くなるにつれて、糖新生の重要性が増してきます。

つまり私たちは、
眠っている間にも糖をつくっている。
わけです。

ほかにも長時間の運動、糖質摂取が少ない状態、長時間の絶食などでは糖新生が重要になります。

ホルモンも関係します。

食後に増えるインスリンは糖新生を抑える方向へ。
一方、空腹時に働くグルカゴンなどは、肝臓の糖新生を促す方向へ作用します。

食べる、食べない。

運動する、休む。

眠る、起きる。

そんな日常生活の裏側で、代謝経路は絶えず切り替えられているのです。

ということで、糖新生をダイエットではなく生化学の立場から見てみました。
特に考える必要もなく
これだけの仕事を毎日してくれている
体には感謝ですね。

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