【プロンプト・オブ・ハピネス】⑭
第五十二章 東京からの対応
東京の家に戻り、急いでパソコンを立ち上げて、マヤとオンラインで回線を結んだ。リアルタイムで状況を確認しながら、私は対応を始めた。 「攻撃はネットカフェから仕掛けられているよ。バックドアからの攻撃だ。これは僕もよく使う手だけど、対処療法でしかない。大元のパソコンに入り込んで、パソコンをダウンさせるか、サーバーごとダウンさせる必要がある。まずは、どこから攻撃が発信されているかをつかむ必要がある」
サイバー攻撃はどこからでもできるため、たどるのがとても厄介だ。軍事関係の施設からとは限らない。だが、この規模のサイバー攻撃をするには、それなりの施設が必要だ。事前に調査していた施設を一つ一つ丁寧に調べた。夜が明けるまでかかり、最終的にモスクワのある施設からだと特定した。
私はその施設のサーバーをダウンさせ、さらにその地域の送電施設にハッキングをし、停電させた。 「この復旧には24時間以上かかるだろう。その間に僕はスウェーデンに行く」 私はマヤに状況を伝えた。 「バックドア通信を検出する機能を活用して、クライアントのパソコンに作られたバックドアの特定を徹底的に行ってほしい」 と、彼女に指示を出した。
「了解!発信する側はとりあえず海斗が止めてくれたけど、どのパソコンに入ったかを確認して、そのパソコンを最新のOSに入れ直して入り口をふさがないとね」 マヤはすぐ、作業を開始した。しかし、深夜の時間帯であったため、作業は少々時間がかかることが予想された。私は彼女の努力に感謝しつつ、安全確保のためにもこの作業が急務であることを理解していた。
一方で、社内でのバックドアの発見は、私たちが悪意のある侵入者に操られる可能性を考えると、不安を感じた。しかし、彼女の手際の良さとプロフェッショナルな能力に期待した。そして、私は少し仮眠を取ることにした。短時間だが、今後の対応に備えるためにも必要な休息だった。
第五十三章 バックドア
バックドアの設置、それはまるで密かな侵入口を作り出すようなものだ。その存在は、データの漏えいや操作履歴の盗見、通信の傍受、そしてシステムの改ざんや破壊など、多くの悪意ある行為につながる恐れがある。攻撃者たちは、メールやウェブサイトを経由したり、システムの脆弱性を突いたりする。さらに、ゼロデイ攻撃のような、まだ発見されていない脆弱性を狙うなど、さまざまな巧妙な手法でバックドアを仕掛けてくる。その一つ一つが、組織や個人にとって大きな脅威となり得るのだ。
バックドアからの遠隔操作は、まるで暗躍する手先を操る悪辣な手口だ。DDoS攻撃や標的型攻撃など、多様な悪意が形を変えて現れる。そして、その恐ろしいところは、侵入されたシステムだけでなく、別の標的を攻撃するための足がかりにされてしまうという点にある。遠隔操作されたシステムは、まるで自社のシステムが攻撃元であるかのように見え、加害者として誤認されてしまう。いつの間にか、自らが悪事の温床となってしまうかもしれない。バックドアが設置されたサーバーを介して、他のサーバーやLAN内のシステムに被害が波及する可能性も考えられる。一度バックドアが仕掛けられてしまうと、その影響範囲は予測できないほどに拡大してしまう。
我々は、バックドアが悪意ある侵入者によって設置された際には、即座に対応する必要がある。その拡散を食い止め、再び安全な状態に戻すために。
第五十四章 敏速な対応
約27時間のフライト後、私はストックホルム・アーランダ空港に到着した。到着ロビーに出ると、マヤが車で迎えに来てくれていた。 「海斗、無事に着いてくれて良かったわ」 彼女が駆け寄ってくると、私は微笑んで応え、感謝の気持ちを込めて彼女を強くハグした。 「そうだね。ありがとう、迎えに来てくれて」
「頼まれていた対策は済ませておいたわ」 マヤの言葉に、私は安心した。そのまま一緒にクライアントの会社に向かった。会社に着くと、彼女のお父さんとクライアントの役員たちが出迎えてくれた。 「海斗、お疲れ様。君の迅速な対応、本当に助かったよ」 彼女のお父さんは私の手を握り、力強く感謝の言葉を述べた。 「どういたしまして、被害を最小限に抑えられて良かったです」 私も手を握り返して答えた。 「君の行動力には感謝の言葉しかありません」 クライアントの役員が、深々と頭を下げた。 「こちらこそ、信頼をいただきありがとうございます」 と、私も感謝を述べた。
「今後もよろしく頼むよ」 私の対応の早さと、未然に重大な被害を防げたことに彼らは心から感謝してくれた。 「お父さん、バックドアへの対策も強化する契約が取れたみたいだよ。これで安心できるね。さて、次はハッカーを返り討ちにする準備をしなきゃ」 マヤがそう言うと、私も力強く頷いた。
マヤと私は、彼女の家にあるパソコンを使って、ロシアのハッカーを撃退するための作戦を練り始めた。 「そうだね。今回の攻撃者を徹底的に壊滅状態にしてやる」 そう言って、私たちは早速作業に取り掛かった。こちら側からバックドアを仕込み、相手の情報を抜き取り、そしていつでもそのパソコンをダウンさせられるようにする。全ての作業が終わると、私は疲れ果てた。マヤもほとんど寝ていなかったので、二人で深い眠りに落ちていった。
部屋には深い静寂が広がり、穏やかな眠りが私たちを包み込んでいった。その静かな夜の中で、過去の戦いの疲れが次第に癒やされ、新たなエネルギーと希望が心に湧いてきた。
次に目を覚ました時、朝の光が窓から差し込んでいた。疲労感は残っているものの、心は穏やかで、達成感が心を満たしていた。今回の戦いで勝利を収めたことが、私にとって大きな自信となった。
朝の光が差し込む部屋で、私は目を覚ました。彼女も静かな眠りの中にいた。過去数時間の戦いの疲れが体に残っているものの、心は穏やかで満ち足りた感覚に包まれていた。 「おはよう、マヤ」 私は優しく言った。彼女は眠りから覚め、微笑みながら言った。 「おはよう、海斗」 「昨夜は本当に大変だったね。なんとか乗り越えたよ」 「うん、本当に。おかげで私たちの取り組みが報われたね」 二人はそっと微笑み合い、この新たな勝利に対する喜びを共有した。これからも一緒に立ち向かっていけることを確信し、新たな挑戦に向かって進んでいく覚悟を固めたのだった。
モーニングは私が以前働いていたカフェに行くことにした。店に到着すると、懐かしい顔ぶれが出迎えてくれた。店長は大きな笑顔で私を迎え入れ、 「大学に合格したんだって?おめでとう!」 と声をかけてくれた。そして、今日シフトに入っていたスタッフたちも、日本でナンバーワンの大学に合格した私を称賛してくれた。 「ありがとう、みんな。ここで働いていた頃の思い出は忘れられないよ」 私はそう言った。店内には温かい雰囲気が漂い、懐かしい会話が弾んでいた。私たちは、朝食を楽しみ、心温まるひとときを過ごした後、家に戻った。
改めて、今回のハッカー事件の解決についてお互いにねぎらい合った。彼女は急に東京から呼び出して対処してくれたことに深く感謝し、私も彼女の協力に心から感謝した。 「本当に助かったよ、おかげで事件を早く解決できた。クライアントも安心できるようになった」 私が言うと、 「いいえ、私もおかげで大変勉強になったわ。役に立ててよかった」 と彼女が笑顔で答えた。
私たちは3日後に一緒に東京へ帰ることにした。その間、東京に帰ってから残りの夏休みをどう過ごすか、計画を練った。
つづく
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