【プロンプト・オブ・ハピネス】⑫
第四十六章 入学式
4月12日の入学式当日、日本武道館は朝陽に照らされて輝き、まるで未来への門を開いたようだった。その壮大な建物は、新たなる旅立ちを迎える若者たちやその家族、そしてさまざまな立場の人々で溢れ返っていた。入学生たちは、新しい一歩を踏み出す興奮に胸を躍らせ、期待に満ちた表情を浮かべていた。彼らの視線は、未来へと続く道を見つめ、その先に広がる可能性を夢見ていた。武道館内では、歓声や笑い声が交錯し、一体感溢れる雰囲気が漂っていた。誰もが同じ夢を追いかけ、同じ舞台で新たな一歩を踏み出すことに、心を一つにしていた。
その列には、私の両親とマヤの家族も含まれていた。彼らとともに、この特別な瞬間に立ち会い、喜びを分かち合った。私とマヤは、この日を迎え、同じ学部での学びをともにすることになった。新たな出発の予感が胸を躍らせる中、私たちはこれからの未来への一歩を踏み出す準備を整えていた。
学部長のスピーチの間、マヤが私に耳打ちをした。 「あなたと一緒にいると、穏やかな安心感が私を包み込み、心の平穏を取り戻せるの。女の子の日は、あなたと出会う前はとてもイライラしてつらかった。そんな日でも、あなたといると心が落ち着いて、私のイライラはしなくなるの。あなたとの時間が私にとっていかに貴重であるか。あなたって不思議な人ね」
彼女の言葉は、私の心に深く響いてきた。長いスピーチの中、私の頭は、子供の頃に戻っていた。 母は、月に数日、生理が重く、何もやる気が起きない日々を過ごしていた。そんな時、父は会社を休んで母のそばに寄り添っていたものだ。私が小学校2年生になった頃、母は私に言った。 「お母さんは月に2日か3日、体がつらくなるの。そんな時はあなたが、お母さんのそばにいてね」 そこから、私は父の代わりに母のそばに寄り添うことに決めた。母が生理の日になると、私の学校に電話をかけて「私がしんどいので、息子を学校休ませます」と連絡を入れていたものだ。そばに寄り添うことで人は安心するんだと、私は母から学んだのかもしれない。
第四十七章 私たちの住まい
マヤと彼女のお父さんが選んでくれた、私たちの住まい兼仕事場は貸家だった。その住所は東京都文京区本郷6丁目1で、賃料は48万円。場所は東京メトロ南北線の東大前駅から徒歩5分の距離に位置している。建物は1989年3月に建てられており、築35年の歴史がある。4LDKという広さで、1階には15畳の洋室があり、トレーニングルームとして利用することにした。2階には18畳のリビングダイニングキッチンがあり、ゆっくりとした時間を過ごす場所としては十分すぎる広さだった。3階にはマヤの勉強部屋と私の勉強部屋があり、それぞれ8畳と6畳の広さだった。そして4階は、11畳の部屋をワーキングスペースにして、そこには彼女のスウェーデンの家から持ってきたパソコンやモニターを置いた。
「この家、リノベーションされてるから、古いけど中は快適だね」 彼女が嬉しそうに言うと、私は微笑んで頷いた。賃料は高かったものの、住居兼仕事場としては東京では比較的安い方だったらしい。特に気に入ったのは、東京大学のすぐ近くにあることだ。 「通学時間のロスを考えると、これぞ理想の場所だよね」 私が言うと、彼女も笑顔で同意してくれた。
この家には私たちの生活をより快適にするための、様々な設備が備わっていた。トレーニングルームにはランニングマシンや自転車、筋トレ用の鉄アレイやダンベルが備え付けられていた。 「フィットネスもできるね、リビングも広くて最高だね」 彼女は、嬉しそうに言った。また、リビングダイニングキッチンでは食事を作ったり食べたりするだけでなく、リラックスした時間を過ごせた。 「1年前にはこんな素敵な家に住めるとは、夢にも思わなかった。お父さんに感謝だね」 私が言うと、彼女も深く頷いた。
第四十八章 歓迎会
入学式の後、学部や同じゼミの新入生歓迎会が何度か行われた。私とマヤはそろって参加した。多くの人が私たちの美しさに目を見張り、そして私たちが一緒に暮らしていることに驚いていた。いろいろと詮索されたが、あまり詳しくは話さず、「旅行先で知り合った」と私たちは答えた。
「東京大学の学生は、本当に個性的で賢い人たちばかりだね」 マヤが感心しながら話した。私も頷いた。 マヤは2年間の留学生なので、その後の進路はまだ決まっていなかった。 「とりあえず、この環境で2年間マヤと過ごせることは、私にとってとても幸せだよ」 私がそう言うと、彼女も微笑んだ。
東京大学には進学振分け制度というものがあり、1年生と2年生の途中までの成績を元に、3年生からの進学先を決める制度だった。これは「リベラル・アーツ教育」の一環であり、大学入学後は専門分野に囚われず、興味を持ったことは何でも広く学べるという。 「私は現段階では電子情報工学科を目指しているんだ」 私がそう話すと、マヤは興味深そうに聞いた。 「人工知能を活用して機器を操作することを目標に、勉強していきたいと思っているんだ」 と続けて言った。私の言葉に、彼女の瞳は好奇心に満ちていた。
つづく
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