【プロンプト・オブ・ハピネス】⑪
第四十二章 進路が決まった瞬間
マヤの実家から帰り、家に落ち着くと、私は早速、マヤの大好きなパスタとサラダを作った。食事をしながら、彼女が話し始めた。 「私は、あなたに出会ってから日本に住んでみたいと思うようになったの。私の通っている大学と交換留学のシステムがあるから、それを使えば比較的日本の大学に留学するのは簡単なのよ。でも、海斗がスウェーデンの私の通っている大学に入るのは難しいかもしれない。だから、私が日本の大学に留学して、一緒に住むことにしたら、離れ離れにならなくて済むと思うんだ。それで、海斗には、私が留学しようと思う大学に合格してほしいの」
「それはどこの大学?」 私が尋ねると、彼女は答えた。 「東京大学」 彼女は、それが私が以前受験して落ちた大学だと知っていた。当時、私は滑り止め用の私立大学を受験せず、東大一本で受験した結果、不合格だった。もう一度東京大学に挑戦するのも悪くない。そう思った。
「海斗、一緒に頑張りましょうね」 マヤがそう言って、私の手を握った。 「今回は、本気で勉強して東京大学に合格するよ」 私は堂々と答えた。その言葉には、以前の受験ではなかった確かな決意が込められていた。 「以前は、あまり強い気持ちじゃなかったんだよね?」 マヤが尋ねると、私は正直に答えた。 「うん、前は適当だった。なんとなく合格できたらいいかなって感じで受験したんだ。でも、今回はマヤと一緒に東京大学に行くっていう明確な目標があるから」 そう言って、私は笑顔を見せた。
「それで、カフェでのバイトは辞めるの?」 彼女が尋ねた。 「その方がいい。今は勉強に集中しなきゃ。母に受験用の道具を送ってもらうことにしたよ」 私はそう答えた。 その後、私たちは彼女の母親とカフェの店長に、この計画を話に行くことにした。
2日後、私たちは再びマヤの実家を訪れ、家族に計画を話すと、彼らはあっさりと承諾してくれた。 「それが現実になったら、住むところは父が用意してくれるんだって」 マヤが嬉しそうに言った。
翌日、私たちはバイト先で旅行のお土産を渡し、店長とスタッフにその旨を話した。彼女のお母さんからはすでに店長に連絡が来ていたようで、話はスムーズに進んだ。
「勉強道具、母に送ってもらったよ。30キロまで最短7日間で、料金は6万5500円だって」 私はマヤに説明した。 「マヤ、日本語勉強しているんだって?」 私が尋ねると、彼女はにっこり笑った。
「マヤと出会った時は受験に失敗して、この先どうしたらいいか不安だったけど、今は明確な目標ができて、やる気が出てきたよ」 私は心からの言葉を口にした。 「クリスマスをスウェーデンで過ごして、それが終わったら日本に帰って受験の準備することにする」 私がそう言うと、彼女はクリスマスを一緒に過ごせることを喜び、その笑顔は私をさらに力づけた。北欧のクリスマスは、きっと特別なものになるだろう。
「春から東京大学に行ける、合格したらの話だけど、それを考えるだけでワクワクするね」 私が言うと、彼女も同じ気持ちだと頷いた。 「マヤ、**スウェーデン王立工科大学(KTH)**と東京大学との交換留学、受け入れているみたいだね」 私が尋ねると、 「ええ、そうなの。早速大学で手続きに取り掛かったわ」 彼女は嬉しそうに答えた。
「それはすごいね。日本から受験のための荷物が届いた。早速1日8時間、勉強に集中するね。一度試験を受けてるから、どこを重点に勉強すればいいか、分かっているからそれを元に頑張る」 私は意気込みを語った。私の未来は、再び明確な光を帯び始めた。
第四十三章 受験の準備とクリスマス
9月の終わり、私は大学入学共通テストの願書提出のために、いったん日本へ帰国した。志願票を書き、検定料を支払って願書提出を済ませると、すぐにスウェーデンへと戻った。マヤとの日々が、私の学習意欲をさらに高めていた。
11月に入ると、嬉しいニュースが飛び込んできた。 「マヤ、東京大学への留学が決まったんだね。おめでとう!」 私は彼女の肩を抱き、心からの祝福を伝えた。 「ありがとう!次は海斗ね。あなたなら大丈夫だと私は信じているわ」 彼女は私の肩に寄りかかり、そう言ってくれた。 「その前に、あなたと初めてのスウェーデンでのクリスマス、楽しみだわ」
「そうだね。スウェーデンのクリスマスってどんな感じなんだろう?」 私が聞くと、彼女は目を輝かせながら答えた。 「スウェーデンでは11月下旬から街がライトアップされて、とてもロマンチックなの。人々は星の形のランプを窓に飾るのよ」 「なるほど、日照時間が短い冬でも、その暗さがキラキラとしたクリスマスになるんだね」 私が言うと、彼女は微笑んで続けた。 「そう。スウェーデン語でクリスマスは『JUL(ユール)』って言うのよ。メリークリスマスは『GOD JUL(ゴッユール)』って言うの」 そう教えてくれた。
「面白いね。それに、スウェーデンのクリスマスは12月25日じゃなくて、24日に家族のイベントがあるって聞いたことがあるよ」 私が尋ねると、彼女は頷いた。 「そう。24日は家族で食事をしたり、プレゼントを交換したりする日なの。窓に星のライトを飾ったり、本物のもみの木でツリーを作ったりするのも楽しいんだ」 「それは素敵だね。僕も家族パーティーに参加してもいいかな?」 私が聞くと、彼女は嬉しそうに答えた。 「もちろん。みんな海斗が来るのを楽しみにしているよ。一緒に**Glögg(グロッグ)**っていうスパイス入りのホットワインを飲んだり、ユールボードと呼ばれるスウェーデン料理のビュッフェを楽しんだりしましょう」 「それは楽しそうだね。クリスマスが待ち遠しいな」 私はそう言った。
12月24日の朝、私とマヤは家族のクリスマスのお祝いに参加するために、彼女の実家を訪れた。窓から差し込む朝日が部屋を明るく照らし、クリスマスの装飾で彩られた空間が広がっていた。窓際には星が輝く装飾が飾られ、その輝きが部屋に幻想的な光景を作り出していた。リビングには立派なもみの木のツリーが飾られ、その周りには色とりどりのプレゼントが並べられている。
家族全員が集まり、プレゼントの交換が始まった。美味しいスウェーデン料理が供され、温かい会話が家族の絆をさらに強めていく。私はギターを手に取り、マヤが美しい歌声でクリスマスキャロルを歌い始めた。その瞬間、家族全員が一体となり、愛情に満ちた雰囲気が部屋中に広がった。
第四十四章 受験のために帰国
クリスマスの翌日、私はマヤに空港で見送られ、日本へと帰国した。関西国際空港に到着すると、両親が笑顔で私を迎えてくれた。長いフライトの疲れも吹き飛び、家族の愛情に包まれた温かな歓迎に心が癒やされた。
長いフライトの疲れが残る中、私は翌日、母親と京都の北野天満宮に向かった。合格祈願を済ませるために。この神社では多くの学生たちが受験勉強の成果を祈願している。私もその一人だった。緊張と期待が入り混じる中、厳かな雰囲気の中で祈りを捧げた。
そして、1月13日と14日に迫った大学入学共通テストに向けて、私はできる限りの準備を完了させた。寝食を忘れて努力し、自分の力を試すべく最善を尽くした。果たしてその成果がどう出るのか、私にも不安と期待が入り混じった心境だった。
2月14日、恋人たちが愛を語り合うバレンタインデーの日に、私にも素晴らしいニュースが舞い込んだ。東京大学の一般選抜の第1段階選抜の合格者が発表され、私はその中に名を連ねたのだ。この瞬間、私の心は喜びと興奮で満たされた。ここまでの過程は、去年と全く同じだった。
二次試験の出願期間は1月22日から2月2日までで、私はその最初の日に出願手続きを完了した。そして、二次試験の期日が迫る中、私は緊張と期待を胸に、東京大学の理科一類の試験に臨んだ。
第四十五章 合格発表
そして、待ちに待った3月10日。東京大学の合格発表の日がやってきた。
3月9日の夜、私たちは家族全員で楽しいひとときを過ごすために、私の両親とマヤ、そして彼女の両親とともに食事をすることになった。東京への旅行は、私の合格発表を見に行くだけでなく、私とマヤが一緒に住む予定の不動産を探すことも兼ねていた。
家族全員が揃っての食事は、和やかで温かな雰囲気に包まれていた。私とマヤが通訳をしながら、笑顔と笑い声が絶えない時間が流れた。私の母は、マヤの美しさに目を奪われ、「妖精みたいだね」と私に耳打ちした。その言葉に私は微笑みながら、マヤの隣に座り、この特別な夜を大切に過ごした。この幸せな瞬間は、私たちの未来への希望と期待を一層強くした。
合格発表当日の3月10日、私たちは心臓が高鳴りながら本郷キャンパスへと向かった。そこには合格発表の看板が掲げられており、私たちはドキドキしながらその場所へと歩みを進めた。私の受験番号は事前に全員に伝えており、その番号を探すために目を凝らした。
すると、一番最初に私の受験番号を見つけたのはマヤだった。 私はホッとして、胸の内に穏やかな安堵が広がった。その瞬間、長い間の不安や緊張が一気に解け、心に温かな光が差し込んできた。周囲の喜びや感動が私を包み込む中、涙が目頭に溢れ、心からの感謝の念が溢れ出した。
つづく
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