黄金の鎧と、白き花の誓い 「復活の古き王」
「我が血を贄とし、この依代へ今一度蘇れ、古き王、ガルド・ルード!!」
蒼き稲妻が全身を包みこんだ…。
「お願い…応えて…。」
晴天のある日、王国に祝福の鐘が鳴り響く。
「皇女様がお生まれになった!!」
「美しい姫の誕生だ!!」
民衆たちは、騒ぎ立て、城の門には我先にお祝いをと人集りが列をなした。
「まぁ、なんて、お可愛らしいんでしょ王妃様それはもう、素敵な姫様です。」
ふわりと、乳母に抱きしめられた皇女は金色に輝く髪をなびかせながら、キャッキャと笑う。
「元気に産まれてくれて、本当にありがとう」
王妃は顔を近づけ、そっと指で頭を撫でた。
「まもなく、祝福の儀である。」
コツコツと音を立て、白いスーツ姿の男が金色のマントを翻し、そっと王妃の隣で我が子を慈しむ。
「陛下、儀式の最中、ルーヴェが泣き出さないか心配ですわ」
王妃は、ため息をつき乳母からそっとルーヴェ皇女を抱きかかえ、陛下を憂いの表情で見つめた。
陛下は、微笑み「泣いたとて問題ない、美しい皇女の声で皆歓喜するであろう。」
「此度の祝福は、遠い異国から来た魔女を呼んだ。何でも祝福に長けた魔女らしい。」
「それなら安心ですわ。」
王妃は安堵し、キリッと表情を変え、陛下の隣で、謁見の間へ歩き出した。
王妃は我が娘にそっと囁く、「貴方は我がリリウム帝国の皇女なのです。自身を持って勤めるのよ。」
大きな赤い豪華な扉が開き、貴族たちの拍手喝采の中、3人は、一礼し王座へ座る。
皇女殿下は、皆に見やすいよう、斜めに施された、真っ白な百合の紋章の入ったゆりかごに眠らされる。
王が立ち上がると、一気に緊迫した空気に変わり、空気が重くなった。
「皆のもの、本日は、遠路遥々我が娘似合いに来てくれて感謝する。」
「娘の名は、王妃と話し合い、ルナリア・ルーヴェと名付けた。」
拍手喝采が鳴り響く。
「皇女殿下万歳!」という声まで聞こえてきた。
陛下は、パンパンと手を鳴らし静まりかえらせる。
「今日この素晴らしい日に、彼の地より、祝福の魔女殿を招待した。」
そう言って、左側の一番前に参列していた女性に手のひらを向ける。
「ヴェリシア王国の13番目の魔女、ハンヴィー・アストレア殿だ」
白い服を纏い、紫と黒の混じった長い髪をなびかせながら、魔女は王座の下までふわっと飛び降り、陛下と王妃に深くカーテシーをし
振り返り、貴族たちにもカーテシーをしてみせた。
陛下と王妃の方へ向き直し、落ち着いた少女の声で「本日は、お招きいただきありがとうございます。早速、祝福を授けさせていただきます」
彼女が、空中をさっと手で切ると、銀色の杖が現れた。
トップに添えられた、光の加減で赤や青に輝く月の形の石が光はじめ彼女が「アトレ」と囁くと、光輝く紫の蝶が螺旋を描き皇女を包みこんでいく。
「貴方の加護の精霊が目を覚まし、貴方とともに成長しますように。」
「どんな運命にも抗い、強く健康に育つように…」
光の蝶が金色に輝き、皇女の笑い声が響く。
蝶が皇女の中に吸い込まれると、金色に輝く白い子ライオンが皇女のゆりかごの下で、くるくるとまわり座り込んだ。
「皇女殿下は、光の精霊の庇護下にあるようです。人々を慈しむ素敵な方になられるでしょう。」
そう言い残し、ハンヴィーは、杖をふるい蝶の姿になって会場から姿を消した。
「なんと!我が紋章のライオンがルーヴェの精霊とは…まるで初代、聖女様と同じではないか!!」
国王陛下は、皇女を抱きかかえ、皆もめでたいと歓喜する。
百合を護ライオンの白地に金の旗がはためき、祝福するかのように一斉に風に舞う。
皇女は、後に聖女と呼ばれ、大切に育てられた。
それは…皇女が16歳の誕生日を迎えてすぐの事。
寝静まった夜中、「皇女殿下お逃げください」と勢いよく部屋のドアが開いた。
何事かと、飛び起きると、目の前がいきなり赤く染まった。
ビックリして全体必死に拭うと、手が赤く染まり、鉄のような強烈な香りで我に返る。
血!?
目の前には、騎士の頭が床に転がり勢いよく首から血が飛び地面に崩れた。
「きゃあああ」と叫ぶと同時に、黒い牛のような獣が重そうな斧を持ってドスドスと部屋に入ってくる。
獣は、フンッと鼻息を荒くし、腕を伸ばして私の手を掴もうとした。
咄嗟に、ベットを降り、脇目も振らず走り出した。
何処に逃げればいいか分からず、とりあえず
お父様とお母様の寝室へ向かう。
勢いよく屋を開けると、2人は、王家に伝わる、暖炉の抜け道を開けていた。
「ルーヴェ良かった生きてたのね!」
お母様がきつく抱きしめてくれた。
お互い震える手で、無事で良かったと涙を浮かべる。
「ルーヴェ。よく聞け、ここから先はお前と王妃で行け。」
お父様は刀を抜き、入り口の方を睨む。
「そんな、お父様!お父様も一緒に!」
必死にお父様の袖をつかむが、お父様は、払いのけ、「王族は最後まで、民のため尽くすものだ。」と風魔法の突風を私たちに向け抜け道に突き飛ばす。
鋭い衝撃で勢いよく背中を打ち付ける。
背中に鈍い痛みが走り、必死に手を伸ばすも、暖炉の穴が閉じ、お父様は背中越しに微笑み見えなくなった。
「お父様!お父様!」必死に手を伸ばすが声が届かない。
「ルーヴェ、こちらへ。」お母様が私の手を手探りで掴み、どんどん進んでいく。
「何故…何故このような事に…」
涙があふれる。ほんの数石前まで穏やかに笑い合っていたというのに。
「しっかりしなさい!それよりも、この後です。街もきっと希望はないでしょう。」
「私たち、王族には、このような時のために、召喚魔法を教えられてます。」
お母様は淡々と、何処か決意した態度で説明する。
「金色の王の召喚は、覚えてますね」
「えぇ、幼少期からのおとぎ話ですよね?」
「あれは事実です。もし、外に敵がいたら、私が絶対に止めるので、貴方はあそこまで走り、召喚なさい!」
「決して、一緒に戦っては行けません!」そう言ってお母様は立ち止まり、私の腰に手を当てると、ビリビリとネグリージェを破き出した。短くなっていくスカートに焦る。
「お母様!?何をなさるの!?」
「しっ、こんな長いものは、役に立ちません足をとられるだけです。よく聞いて、ここから出たらまっすぐ走れば広場の中央です。
一緒に走りますから、先に着いたほうが召喚するのですよ。」
そう言い、自らの服もビリビリと短くしていった。
「目も慣れてきたでしょう?光が漏れて見つからないように光魔法は夜が明けるまで使っては行けません」
お母様の声は、上ずっていた。
「はいお母様。」心配をかけたいと必死に声を出した。
お母様は、震える手を何とか抑え込み、上を指差し、木でできたハシゴを登り始める。
ギシッギシと崩れそうなハシゴを登り、ガラガラと重たい扉をズラす音が頭上から響く。
鉄の焦げたような独特の香りが鼻を刺す。お母様の手につかまり、思わず手で口を塞ぎ息を呑んだ。
視界に入ってくるのは、赤い炎に包まれ逃げ惑う人々。お父様達とかつてパレードした広場は、角とハネの生えた獰猛な獣達により、残虐な景色へと変えられ。
兵たちの力も虚しく、鋭い爪で呆気なく倒れていく。
お母様は、指輪を光らせ水の精霊を召喚した。
マーメイドの姿の精霊が大きな声で歌い出す。
「走りなさい!」
お母様の声で、我に返り走り出す。
敵は、水の精霊の歌声で次々と倒れていく。
必死に敵の合間を縫って、走る。
敵陣の中へ飛び込まなければいけない。怖いと目をギュッと閉じる。
私の思いに反応したのか、指輪が輝き、光の精霊が飛び出す。
「お願いルゥ!黄金像まで連れて行って!!」
光輝くライオンの背に乗って、素早く像の近くまで走り抜ける」
既のところで、何かが勢いよく跳んできて、思い切り視界が吹っ飛んだ。
全身に強い痛みが走る。
手足は痺れ、腰から下は重い。
「なんなの…何が起こって…」
揺らぐ視界で、腰にぶつかった物を見る。
「ひっっっ、お母様!?」
血に濡れた虚ろな目。
そこにあったのは、お母様の上半身だけだった。
「どうして!どうして、お母様!」
必死にお母様を揺さぶる。
お母様の目には光がなく、死というものを初めて実感する。
まだほんのり温かなお母様を抱きしめ、「お母様!」と泣き叫ぶ。
ドシンッと鋭い音が、先ほどお母様と別れた方角から鳴り響いた。
音はゆっくりと確実にこちらに近づいてくる。
死が近づいてくると直感した。
だが、体が震えて動かない。
動けない。
グルグルという重低音の振動とともに、3つの犬のような頭が一斉にこちらを睨む。
赤黒い瞳と鼻息がかかる近さに全身の力が抜ける。
そのとき、グイッとルゥが右腕に噛みついた。
鋭い痛みで、一瞬だけ意識が跳ね上がる。
——今だ。
咄嗟に風魔法を放ち、身体を黄金像の前へと飛ばした。
ルゥは大きく姿を変え、犬の獣へと立ち向かい、鋭く威嚇して足止めする。
噛まれた腕から血が流れる。
それをそのまま、黄金像の足へと押しつけた。
「我が血を贄とし、この依代へ今一度蘇れ、古き王、ガルド・ルード!!」
蒼い稲妻が走り、全身を包み込む。
「お願い……応えて……」
視界が揺れ、像から落ちかけたその瞬間――
冷たく硬い腕に抱きとめられた。
「おい娘、死にぞこないにしては上出来だな」
偉そうな声が落ちる。
次の瞬間、身体は地面へと軽く下ろされた。
黄金の剣が抜かれ、空気を裂く。
彼はそのまま、獣の群れへと跳んでいった。
こちらに参加させていただきました。
