民間の医療保険は必要?——公的保障でどこまでカバーされるか
「とりあえず入っておく」の前に
「医療保険、入っておいたほうがいいのかな」「保険料、払いすぎている気もする」——多くの方が一度は迷う問いだと思います。
この記事は、特定の保険をすすめたり比べたりするものではありません。判断の土台になる「公的な保障でどこまで守られるのか」を整理し、そのうえで「民間保険で何を補うか」を自分で考えられるようにするのが目的です。順番に見ていきましょう。
入院でかかるお金の実際
まず、入院したときの自己負担の目安です。ある調査では、入院1回あたりの自己負担は平均でおよそ18.7万円、20万円未満が約7割とされています。「数百万円」のイメージとは、少し違うかもしれません。
その理由が、次に挙げる公的な保障です。
公的保障①——高額療養費(医療費の上限)
医療費が高額になっても、高額療養費制度によって、1か月の自己負担には上限があります。たとえば年収約370〜770万円の方なら、上限は月8万円台です。
ただし、食事代・差額ベッド代・先進医療の技術料は対象外で、別にかかります。差額ベッド代は平均で1日約6,862円ですが、これは自分から希望しなければかかりません。
▶ 【完全版】高額療養費——区分別の上限と2026年8月改正
公的保障②——傷病手当金(収入の補填)
医療費だけでなく、「働けない間の収入」も支えがあります。会社員などが病気で長く休むと、健康保険から傷病手当金(給料の約3分の2)が通算1年6か月まで支給されます。
ここで注意したいのが、自営業・フリーランスの方です。国民健康保険には傷病手当金がないため、働けない間の収入はそのまま途絶えます。会社員か自営業かで、必要な備えが大きく変わるポイントです。
公的保障③——長く続くときの備え
療養が長期になっても、支える仕組みがあります。同じ年に何度も高額療養費に該当すると4回目から上限が下がる「多数回該当」、2026年8月からは「年間上限」も新設されました。さらに、障害が残るほど長引いたときは「障害年金」という仕組みもあります。
つまり、医療費そのものは何重もの公的保障で守られている、というのが日本の制度の特徴です。
民間保険で「補うか考える」3つの視点
では、民間の医療保険は何を補う発想なのでしょうか。判断の材料として、3つの視点があります。
① 公的の対象外をどう見るか:差額ベッド代・食事代・先進医療の技術料(数百万円になることも)は自己負担。これを貯蓄でまかなえるか
② 収入が減るリスク:とくに傷病手当金のない自営業の方や、長期療養で収入が落ちる場合に、生活費をどう支えるか
③ 貯蓄とのバランス:「公的保障+貯蓄」で足りるなら、保険料はその分軽くできる。逆に貯蓄が薄いなら、保険で穴を埋める考え方もある
大切なのは、「不安だから全部入る」ではなく、公的でカバーされる部分を差し引いて、本当に足りないところだけを補うという順番です。重複した保障に保険料を払い続けていないか、見直す価値があります。
薬剤師×FPとして感じること
「保険に入っていれば安心」という気持ちはよく分かります。でも、日本の公的保障はとても手厚く、知らずに過剰に備えている方も少なくありません。まず公的保障の全体像を知り、足りない部分だけを民間で補う。これが、お金の面でも納得しやすい考え方だと感じています。最終的な判断は、ご自身の家計や価値観に合わせて、必要ならFPなど専門家にも相談しながら決めるのがよいと思います。
今日からできること
自分が会社員か自営業かで、「収入が止まったときの支え(傷病手当金の有無)」を確認する
いまの貯蓄で、差額ベッドや収入減をどのくらいまかなえるかを考える
加入中の保険に、公的保障と重複している保障がないか見直す
参考にした情報源
この記事は、次の公的情報・調査をもとに作成しています(2026年6月時点)。制度や金額は改正で変わるため、最新の取り扱いはご加入先・公式情報でご確認ください。
厚生労働省 高額療養費制度
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html生命保険文化センター 入院時の自己負担費用の調査
https://www.jili.or.jp/
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