室内猫が脱走した。「首輪してるから大丈夫」という甘さが、帰ってこない恐怖に変わった日 ~くろんぼ捜索体験談1~
これは、室内飼いをしていた猫(くろんぼ)が来客の一瞬の隙に脱走し、帰ってこなくなった飼い主である私の記録。「首輪をしているから大丈夫」「うちの子はそんなに遠くに行かない」そう思っていた私が、どれほど後悔することになったか。
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日常が一瞬で消えた。
今、私は静かすぎる部屋で
この記事を書いています。
いつもなら、
朝の5時になると
寝室のドアの向こうから
「にゃーん、ご飯ちょうだい」
と私を起こしに来る声が聞こえます。
それがこの人・・・
人じゃないね、猫。

その声の主は「くろんぼ」
毎日、本当に毎日、
それが私の朝の始まりでした。
でも、今はその声がありません。
昼間、いつも彼が丸くなって寝ている
お気に入りの場所も
空っぽのままです。
「当たり前」だった日常が、
こんなにもあっけなく
消えてしまうなんて、
数日前の私は想像も
していませんでした。
私の愛猫、「くろんぼ」が
いなくなってしまいました。

お弁当屋さんの裏口で出会った黒い影
くろんぼは、もともと野良猫でした。
知り合いのお弁当チェーン店のオーナーが、
お店のゴミ置き場に
ゴミを持っていった時のこと。
親猫と、くろんぼを含む
4匹の子猫兄弟が、
食べ物欲しさに
じっとこちらを見つめ
ちょこんと座って
待っていたそうです。
いつもゴミ捨ての時間になると、
親子そろってそこにたたずんでいました。
それを見たオーナーが
「かわいそうだから保護しよう」
と、余った食材をあげて
少しずつ慣れさせていきました。

結局、野良猫家族全員を
捕まえることはできず、
くろんぼだけが先に
保護されることになりました。
でも、オーナーの家には
すでに先住猫がいました。
くろんぼが来たことで、
先住猫が家のどこかに隠れて
出てこなくなってしまったそうです。
相性が悪いと判断したオーナーから、
「引き取ってくれないか」
と私に連絡が来ました。
実は、私は少し迷っていました。
以前飼っていた猫が、
子供の頃からとても気性が荒かったからです。
甘噛みではなく、遊びのつもりでも
本気で噛んできたり、
急に飛びかかってきたりと、
毎日が結構大変で落ち着かない日々でした。
だから、
「穏やかな性格の猫じゃないと、
今は飼えないよ」
と伝えたんです。
するとオーナーは、
「くろんぼは人懐こくて、
すごく穏やかで甘えん坊だよ」
と言ってくれました。
その言葉通り、
我が家にやってきたくろんぼは、
本当に優しくて、
甘えん坊な黒猫でした。

トラウマ気味だった私の心を、
彼はあっという間に溶かしてくれました。
それから1年3ヶ月。
彼はすっかり我が家の中心になり、
彼がいない生活なんて
考えられなくなっていました。

ある日のこと。
来客があり、私が玄関の扉を開けた、
ほんの一瞬の出来事でした。
ササッと、私の足元をすり抜けるようにして、
黒い影が外へ飛び出していきました。
あっ、と思った時には、
くろんぼはもう外の世界にいました。
その時の私は、心のどこかで
高を括っていたのだと思います。
「首輪もちゃんとしているし、
飼い猫だって分かるはず。
家の周りを少し探検したら、
すぐ戻ってくるだろう」
今思えば、
自分を呪いたくなるほど
甘い考えでした。
室内飼いの猫にとって、
外の世界が
どれほどパニックを引き起こすものか、
私は本当の意味で
理解していませんでした。

脱走した夜、懐中電灯で探し回って気づいた「最悪の想像」
その日の夕方6時。
外はもう暗く、風が強くて
やけに寒さが肌に響く日でした。
帰ってくる気配のない
くろんぼを探すため、
私は懐中電灯を手に外へ出ました。
「くろんぼー、くろんぼー」
風の音にかき消されそうになる声を張り上げながら、
近所を1時間ほど歩き回りました。
車の下、ブロック塀の影、草むらの中。
懐中電灯で照らしても、
光る二つの目はどこにも見当たりません。

時間が経つにつれて、
頭の中を悪い想像ばかりが
駆け巡り始めました。
どこかの家に迷い込んで
出られなくなっているのだろうか。
優しい誰かに拾われて、
そのまま保護されているならまだいい。
まさか、パニックになって
道路に飛び出し、車に……。
考えたくもない最悪の結末が、
何度も何度も脳裏をよぎります。
寒さのせいなのか、
恐怖のせいなのか、
震えが止まらなくなりました。

いつもなら、
「ご飯ちょうだい」と
甘えてくるはずの彼がいない。
いて当たり前だった存在が、
突然いなくなる。
明日の朝には、
ケロッとした顔で
勝手口の前に座っているかもしれない。
そう祈るようにして、
その日はどうにか
眠りにつこうとしました。
でも、本当の出口のない暗闇に
足を踏み入れたのは、ここからでした。
(~体験談2~へ続く)
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